第13話 先輩
どうせ今日はもうやることもないし外でもぶらつこう。
そう決めてぶらぶらしていると声をかけられる。
「おや、君が噂のルイシャ君かな?」
「え? あ、はい」
声をかけてきたのは茶色の長髪が特徴的な美青年だった。
「急に声をかけてごめんね。僕は2年A組のシオンっていうんだ。よろしくね」
ルイシャは挨拶してきた青年と握手する。
不思議な人だ。
それがルイシャのシオンに対する第一印象だった。
美青年なのに嫌味なところが一切なく、とても澄んでいる空気をまとった今までにないタイプだ。
「あの、シオンさんは何か僕に用ですか?」
「いや別にそんなんじゃないよ。ただ噂の子がどんな子なのか興味があってね。ついつい話しかけちゃったのさ」
「う、噂っていうと……」
「うん。もちろん昨日のアレだよ」
「はは、もう二年生にまで広がってるんですね……」
『1ーA襲撃事件』生徒の間ではルイシャ達の事件はそう広まっている。
元々Zクラスは他の生徒にヤバいクラスだと認識されていたのだが、今回の一件はその認識をより強くさせてしまった。
「いやあ笑わせてもらったよ。今年の一年はイキがいいと二年生は面白がってるよ」
「はは、楽しんでもらえてるなら良かったです……」
恥ずかしくなり顔を赤くするルイシャ。
「元気がいいのはいいことだよルイシャ君、でも……」
ここまでは柔和な態度で話をしていたシオンだが、急に真面目な表情になる。
「全てが思い通りになるなど考えないことだ。確かに君は強い。だがこの世にはもっと強くて恐ろしいモノがごまんといる」
チリ、と圧のようなモノをルイシャはシオンから感じる。
この人の底が見えない。学園にはこんな人もいるんだ……!
ルイシャは緊張するとともに少しワクワクする。
「ご忠告ありがとうございます。でも大丈夫ですよ、僕は僕よりずっと強い人を二人知ってますから」
「ふふ、そうかい。それじゃ余計なお世話だったかな?」
シオンはそう言って笑うと、踵を返して去っていく。
ルイシャの学園生活はまだ、始まったばかりだ。





