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妹のためならこれぐらい!  作者: ツンヤン
短編:お姉さまの恥じらい
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誓いとエロと女の子

 21時40分頃、就寝時間にともなって、雛を部屋まで送り届ける使命がある。

 ここまで過保護な扱いは俺だけだったりする。だって、寮内とはいえ、夜遅くに女の子1人で外に出るのは不用心。

 変態という名の紳士は、隙あらば、宇宙の裏側からでも襲い掛かってくる連中だ。

 俺の可愛い義妹いもうとがもし、もしも! サイドテール萌えの餌食にでもなったら、俺は……萌え死するしかないじゃないか!

 大いに間違っているけど、大いに萌えるから成敗出来ないかもしれない。

 俺の妄想の世界の話はどうでもいいんだ。


「幸菜お姉さまは、まだお勉強をなさるのですか?」


 身長差があるために少し上目遣いになるのがいいよね。しかも、狙ってやっているわけではないから余計に可愛い。


「うん。小さなミスが多いから、もう少しだけがんばってみようと思うの」


 テストで1番やってはいけないのが、小さなミスで×をもらうこと。

 例えば、0とOを間違えること。

 どっちが零なんだって思うよね。

 そして、1とIとかも。

 数学と英語の問題が入り混じっているはずもないから、間違えることはないんだけどさ。


「雛、応援しているのです」


 隣を歩く雛が手を握ってくる。


「ありがとう」


 寮の部屋に戻る義妹いもうと達がこちらを見てくる。

 お姉さまにお見送りされているだけで、羨ましそうな視線がいくつも突き刺さってくる。

 そんなにお見送りして欲しいなら言えばいいのに。

 あ、そうだ。

 繋いだ手を大きく振って見せびらかしてやる。

 いきなりの行動に、驚きに恥ずかしさが混じり合って、頬を赤らめ繋いだ手に力が入ったのがわかる。


「これで、頑張らないといけなくなっちゃったわ」


 幼稚園児ぐらいの子が好きな子と手を繋いで歩くと、自然と手の振り幅が大きくなる。それは、嬉しいからでもあり、みんなに見て欲しいという、ちょっとした自慢なのだ。

 俺はそれに誓いを加えただけ。


「ここまで、仲の良さを見せびらかしておいて、テストの点数が悪くて逃げ帰った。なんて、笑い話でしょ? だから、頑張らないとね」


 ギクシャクしていた雛の手が、俺の手の振りに合わせたため、より振り幅が大きくなる。


「でしたら、もっと見せびらかしておくのです」


さっきまで恥ずかしがっていたのに、なぜか上機嫌に……。


「ふふ~ん♪」


 と、鼻歌まで飛び出してきた。

 ま、まぁいいか。

 機嫌が悪くなったわけじゃないし。

 


 雛を部屋に送り届けて、おやすみのナデナデをしてから自分の部屋に戻ると、寝間着の楓お姉さまがベッドに座っている。

 なにやら、片付けるのを忘れていたライトノベルを読んでいるようだ。

 THEお嬢様の称号を持つお方が、可愛く彩られたキャラクターを表紙にした本を手にしている。という、違和感。

 しかも、俺が部屋に戻ってきたことに気がついていない。

 ここで、悪魔ちゃんと天使ちゃんが登場するわけですよ。脳内で。

 悪魔ちゃんは、イタズラしちゃえよ! と囁きかけて来るんだけど、天使ちゃんはダメよっ! と○ぎゅぅうううボイスで叫んでくるわけで。

 なんだったら、うるさい×3のほうが俺的には好みだった。

 悪魔ちゃんはここでアイテムを取り出して、脳を刺激してくる。

 ブォオン!?

 肘から指の先ほどの長さがあり、先端は四角く分厚い革が装備されている。それって……お馬さんのお尻をペンペンするアレじゃないか。

 布団たたきならまだしも、お馬さん専用の鞭って相当な痛みがあるって、某出川さんが叫んでなかったっけ。

 ブォオン!!

 鞭がしなり、風を引き裂く音が恐怖を誘ってくる。

 そりゃぁね、こんな恐怖に満ちた音がして物凄い痛みがあったら、嫌でもお馬さんはゴールに向かいたくもなるよ。

 というわけで、イタズラを敢行かんこうすることにした。

 そう決めた瞬間に天使ちゃんは堕天使ちゃんに進化し、どのようなイタズラをしようか。なんてく○ゅぅうううボイスで言うもんだから、ファンの俺としてはご褒美です!

 ルイ○・ナ○・シャ○。

 あぁ、俺の性癖を露呈したラインナップ。

 俺の性癖は明後日に捨てることにして、イタズラを実行に移すことにした。

 内容は至って簡単で、ベッドに座っていることから背後がガラ空きであるため、まずは後ろを制圧する。

 そこからが重要だ。

 2つの大きく実った果実を鷲掴みにして……。

 

 ここからは妄想で補完してください




 イタズラを敢行してから、30分もの時間が過ぎ去っていった。

 ベッドにうつ伏せになって、痛みが引いていくのをジっと待っている図である。

 俺の妄想に出てきそうな展開には発展せず、実際は耳元で「愛してるよ」って、囁いただけ。

 それだけでも効果は絶大だったようで、華麗になんでもこなしてしまう楓お姉さまならではの、反応の良さに男の俺ですら一瞬にして投げ飛ばされた。

 受け身はキチンと取ったのだが、さすがに黒檀製のテーブル。畳と違って強度が違うから痛みの比率も格別に違ったわけだ。


「あなたが要らぬことをするからこうなったんでしょ」


 上の服を脱いで優しく背中をさすってくれているから楓お姉さまの手がひんやりしていて気持ちいい。不意に爪が肌をこするときがあって、ゾクゾクと体を反応を示す。


「背筋、すごいわよね」


 男と女の違いをこうも感じるのは筋肉の質だったりする。

 見た目では隠せても、触れられてしまえば隠せない。だから中村さんもタッチして確認していたのだ。

 腰を痛めたので、濡れタオルを置いて冷やしていたのだが、なぜかこんな展開になってしまったのは不慮の事故というやつだな。

 濡れタオルがあさっての方向に飛んでいっているし、そう思うことにしておこう。そうでないと第一級犯罪で終身刑の判決をもらいそうで怖い。


「お、お姉さま。もう大丈夫ですので」


「そう?」


 なぜか疑問形で返されてしまった。


「楓お姉さま?」


「なにかしら」


 完全に返事をしただけだ。

 首を動かして、背中を撫でる楓お姉さまを視認。

 本来なら「そんなに私が気になるのかしら」なんて、からかいの1つや2つが降り注いでくるのに。

 さすがに見られ続けるのはむず痒く、触られ続けるのも健全な少年には刺激が強すぎる。

 ここは……グルっと仰向けになって、ピョンと立ち上がって、ガツンと座る。

 擬音ばっかりな状況説明だが、グルっと、ピョンと、ガツンなのだ。

 上の服を着ていないことに気づいて、そこらへんに吹っ飛んでいたTシャツを拾い上げ、スッとパ! 


「もう説明する気ないわよね」


「瞬時に冷静な突っ込みありがとうございます」


 さっきまでの楓お姉さまはどこへやら。

 なにもなかったかのように、俺の隣に座り「続きをやりましょうか」って、言うもんだから俺もなにもなかったように「そうしましょうか」って、言うしかないよね。


「って、そもそもどうして楓お姉さまが俺の部屋にいるんですか!」


 雛を送り届けたのだから、すでに就寝時間は過ぎている。

 もうすぐ寮長の巡回する時間になろうとしていた。


「どうして? 幸菜の進み具合が良くないからよ」


「確かに……でもっ! ここに居たら寮長に怒られますよ」


 そうでなくても、リーサを部屋に泊めてあげたときに、ブツクサと文句を言われた経緯がある。

 あまり良い印象を与えていないだろうから、ここ最近は大人しくしていたのに……。


「申請はもう済ませてあるから始めるわよ」


 寝間着姿の楓お姉さまは、四の五の言わせぬ勢いで、勉強を開始させた。


 無事に寮長の巡回を通過してから、勉強はとどこおりなく進んでいくのだが、いかんせん隣に座るお姉さまをチラ見してしまう。

 夏に差し掛かろうとしているジメジメした梅雨の季節は、女性陣の露出を高める一因になる。

 服が肌に張り付くのを嫌う女性が多いからだ。

 真夏のカラっとした暑さだったら、Tシャツやノースリーブなどが多いのに対して、今の時期はキャミソールが主流。

 すぐ横に座っているお姉さまも胸元にレースのフリルがデコレーションされた白のキャミソール。日焼けなどを一切していない天然の白い太股がおはようございます。と挨拶しているほど短い、迷彩柄のパンツ。

 どこのサバゲ女子ですか。豊満な胸に玉が当たればショック吸収、そのまま跳ね返して攻撃できるかもしれないほどの武器を魅せつけられているんだから、集中出来るはずがない。このお方は無意識にエロを出してくるから質が悪い。


「ここがこうなるからこうなって……」


 張りのある唇に見惚れてしまうし、甘い香りが鼻孔をくすぐるし……。


「ちょっとストップっ!」


 なにか言ってくるけど、そんなのは後回しだ。

 急いでキッチンに向かい、急いで水を顔面にぶっかけて、タオルで顔を拭う。

 真面目に教えてくれているのに、俺はなにを考えてるんだよ。

 横目で楓お姉さまを盗み見る。

 ノートになにやら書き込みをしている最中だった。

 書き込む手が止まっては、なにか考えているかのようにシャーペンが左右に揺れ始め、思いついたら書き込みを再開する。

 落ち着け。いつもどおりに接すればいいだけだ。

 コップを2つ用意して、氷を3分の1ほど入れアイスティーを注ぐ。

 雛が用意してくれていたのをすっかり忘れていた。

 アイスティーの入ったコップを握りしめ、テーブルへと戻った。


「置いておきますね」


「ありがとう」


 ノートには、可愛らしいハムスターのようなキャラクターが「ファイト♪」と応援してくれていた。

 女の子って言い方が似合わない人がイメージ崩壊させた瞬間である。別にけなしているわけではない。女の子よりも女性と表現したほうがしっくり来るだけの話。

 誰とも仲を深めず、誰かと張り合うこともせず、ただ孤高であり続けた。

 それ故に、今の彼女が生まれたのだろう。

 誰が悪いわけではもないし、イメージとは出会った瞬間に決めつけられてしまうものだ。

 だから、こうした新しい一面を見せてくれるのは、親睦が深まっている証拠。


「少しはうまく描けたかしら」


「えぇ」


 俺は再度、隣に座りこう言ってみた。


「楓お姉さま。少し勝負をしませんか?」

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