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不滅の憑依術師は魔王軍を虐殺する  作者: 結城 からく


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3/3

後編

 デバルトが俺を見下ろす。

 その目は嫌悪を隠そうともしていなかった。


「レイルス……まだ生きていたのか」


「使命を成し遂げるまでは戦い続けると決めている」


「死人が世界を荒すな! 守るべき存在がいないというのに、なぜ殺し続けるッ!」


 デバルトが戦斧で斬りかかってきた。

 正面から受ければ、この肉体が持たない。

 そう悟った俺は半身になって刃を躱し、剣の刺突を放つ。

 デバルトは紙一重で防御して吼えた。


「百年前、魔王様によって勇者は死んだ! 以来、この世界は我々のものだ! 人間は家畜となり、反映した魔物が平穏な暮らしを送っている! それでいいだろう!」


「そんな世界は間違っている」


 俺は淡々と斬撃を繰り出していく。

 デバルトは懸命に戦斧で弾くも、次第に捌き切れなくなっていった。

 防ぎ損ねた刃が手足を切り裂いて、その痛みに顔を顰めている。


(やはり昔より弱い……かつて一国を滅ぼした将軍だというのに)


 懐に飛び込み、魔力を込めた二連撃を食らわせる。

 胸部が裂けたデバルトは、大きく怯んで戦斧を振り回す。

 俺は素早く跳んで避けた。


 傷口を押さえるデバルトは荒い呼吸を繰り返す。

 既に全力を出しているのは明らかで、これ以上の切り札はないようだった。

 さらなる失望に蝕まれつつ、俺は静かに告げる。


「俺は勇者様の遺志を継いだ。故に魔物を滅ぼす。そのための憑依魔術だ」


「現代の魔物は戦争を知らぬ! 罪のない命まで奪うつもりかァッ!」


「魔物は生きているだけで罪だ。だから殺す」


 俺は瞬時に突進し、デバルトの喉を剣で貫いた。

 致命傷を受けたデバルトは、目を見開いて吐血する。


「グッ、ガハッ……!」


「諦めろ。百年間、俺はずっと戦い続けてきた。戦場を離れたお前とは違う」


「か、家族がいる……やめてくれ……」


「そう言って命乞いした人間を、かつてのお前は見逃したのか?」


「……ッ!」


 デバルトの顔に罪悪感が差す。

 刹那、俺は剣を横薙ぎに振るった。

 デバルトの生首が宙を舞って地面を転がる。

 それを粉々に切り刻んだ後、俺は呟く。


「まだだ……まだ足りない……」


 この百年間で魔物は繁栄した。

 だから俺が殺し尽くさねばならない。

 それが勇者様の遺志なのだ。


「見ててください。必ず、やり遂げますので」


 勇者様の遺剣を握り込む。

 街の住民を殲滅するため、俺は悲鳴の聞こえる方角へ歩き出した。

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