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80話 他国のトップ

 ヘルブレインを倒し、次の階層への切符を手に入れた俺と白崎は一日船の上で野宿をした後、無事に拠点へとたどり着く。

 女子と二人で野宿って何かあったんじゃないの? ってか?

 オルウィスクの爺さんの話をしながら飯食ったら普通に気絶してたから全然そんな事なかったぞ。何ならアイツ早起きだからそもそも寝顔すら一切見てないからな。


「ん? 何か騒がしいな」


 拠点へとたどり着くとどこか忙しく動いている天院さん達、殲滅部隊の皆の姿が見えた。何やら食事なんかを持っていつもの食卓へと歩いていく。

 そうか。船から拠点まで結構距離あるし、一応朝に向こうを出たつもりだったけどもう昼になってんのか。じゃあ昼ご飯の時間だな。


「ジョーカーと白崎、ただいま戻りました」

「あ、ジョーカー殿、白崎殿。お疲れ様です。ご無事で何よりです!」


 そして俺達の存在に気が付いたのか天院さんがそう声をかけてくる。若干興奮気味なのが気になるけど。そんで何故か俺の腹をペタペタ触ってくる。


「どうかされましたか?」

「傷が無い……不死身なのですかあなたは?」

「そんな訳ありませんよ。ちゃんと死にます」


 何なら今まで何回も死にかけたしな。クエストを攻略するために。

 そういえば俺と白崎の配信じゃあ、ヘルブレインの剣が俺の腹を突き刺した時点で閉じられたって言ってたっけ。そりゃあこんな反応にもなるか。

 そう言えば俺のクエストって10階層を攻略することだったよな。後で報酬を確認しておこう。つっても前回から大分時間は空いてるしあんまり期待は出来ないけど。


「それでどうしてこんなに焦っているの?」

「そ、そうでした! こんな事をしている場合じゃないんです! 今お客人が来ておりまして!」


 おい、この人。今死地から帰還した俺達を出迎える事を「こんな事」って言ったぞ。


「客ですか。まさかイグナイトとか?」

「そのまさかです! イグナイト・ライオンハートがまさに今ここに来てるんですよ!」


 まあこの状況で客が来るってなるとそりゃそうだよな。白崎もあんまり驚いていないみたいだ。

 ていうか寧ろいつもクールビューティ、冷静沈着な天院さんがキャラ崩壊している方が驚く。

 この人ってこんなに慌てることあるんだ。

 向こうでは力のある探索者って言うのはそれだけで権力を有しているって聞くし、トップのイグナイトは国家権力級にビッグゲストなんだろうな。

 そんでこっちの国の代表者は探索者協会副会長である天院さんだけとなる。あ、こりゃ誰だって慌てるかも。


「お二方もこちらへいらっしゃってください。お昼ご飯にしますので~」


 それだけ言うと天院さんが皿を持って食卓の方へと向かっていってしまう。

 今は給仕担当の人とかいないから殲滅部隊の皆にやってもらってるだけだし、ビッグゲストが来て大分忙しいんだろうな。

 

「俺達も行くか」

「あなたは行かない方が良いんじゃないの?」

「馬鹿言うな。こっちは腹が減ってんだ」


 第一、競い合ってるだけでいがみ合ってる訳じゃないし。ま、初対面は配信内でやった方がジョーカーとしては正しいのかもしれないが、逆に一生同じ画角に収めないというのもまた正しいのかもしれない。

 だがそんな事を考える余裕なんてないほど俺は今腹が減ってる。あんだけ動いた上にここまで帰ってくるのに魔物ともちょくちょく戦ってたってのにサンドイッチ以来何も食ってないからな。

 そう言って俺は白崎と共に食卓へと足を運ぶ。

 ガチャリと大きな扉を開けると、そこに広がっていたのは探索者達が豪勢な食事をほおばっている姿。

 

「おっ、ジョーカー。白崎。帰ってきたんだな」


 真っ先に俺達に気が付いた西園寺さんが食事を口に運びながらそう声をかけてくる。それに続いて他の面々もこちらへ顔を向けて声をかけてくる。


「すみません、皆様。お待たせいたしました。ただいま戻りました」


 俺がそう返事をし、座るところはないかと視線を走らせようとすると、食卓の奥の方から突然重苦しい圧力が襲い掛かってくる。


「ジョーカー?」


 低くくぐもった声でそう発音した大男がゆっくりと立ち上がり、こちらへと歩いてくる。

 いかにも王者然とした態度に若干怯みながらも毅然とした態度を崩さないように気を付けながらそちらに目を向ける。


「如何にも私がジョーカーです」

(向こうは多分日本語分からないと思うわよ)


 隣でそう白崎が耳打ちをすることでそうかと気が付く。この人、俺の言葉分からないんだよな? そんで俺も分からないよな。

 何かなかったっけ? ダンジョンのアイテムみたいな報酬で。

 ぐるぐると頭の中で思考を巡らせている間にもその大男はゆっくりとこちらへと歩いてくる。

 あ、そうだ! 確か魔物と意思疎通がとれるようになるマイク付きのイヤホンみたいなのがあったはず。結局知性のある魔物とかこっちに友好的な魔物なんていなかったから使い道がなかった奴だけど。

 アイテムボックスの中から取り出し、片耳にそれを装着するとトンと押して起動する。

 これ魔物用だけどいけるかな?


「お前がジョーカーだな?」


 おっ、ビンゴ。ちゃんと聞き取れるようになった。てかこれ凄いな。翻訳の遅延とかもほとんどないし、声も機械音みたいになっていないから普通に同じ言語の人と話しているみたいにできる。

 と、挨拶しないと。一応、他の国の要人だし。


「お初にお目にかかります、ミスター・イグナイト。そうです。私こそがジョーカーでございます」


 そんな事より早く飯食いたいんだけどなー、なんて生体には必要な欲求を抱えながら目の前の大男に挨拶をする。

 早く終わらないかな。そんな気持ちを抱いていた時であった。


「お前の力が知りたい。ウチの二人と戦ってお前の力を俺に見せてみろ」


 なんか厄介ごとに巻き込まれたんですけど。

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― 新着の感想 ―
むしろ通常の流れだと思うんだが 自分と同等の実力が気になるひとが1人 厄介ごとをなるべく避けたいひとが1人 ついでに 明らかな「噛ませ犬」の「常識人」が2人
2人をめっちゃ煽ってしまえばいい
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