70話 攻略難易度
5階層の予想外のボス猿を倒してから何週間経過しただろうか。それからの階層でもイグナイトの配信に現れなかったようなイレギュラーなボスが現れはしたものの、難なく切り抜けて攻略できた。
やはり俺が最初に潜っていたダンジョンである『挑戦者の洞窟』に比べればかなり難易度が高い。そしてここに来てから皆の成長速度が半端じゃない。
俺だけほとんど成長してないのに対して他のメンツは凄まじい速度で成長している。それこそ各々に適合する武器の強力さも相まって9階層のボスは俺と一緒に戦うことを許可するくらいだ。
そして特に凄いのが西園寺さんの成長率だ。まあ、あのおっさんはダンジョンに一切潜らずただただ鍛錬してるだけでランキング3位を保っていたようなバケモンだ。
最初から分かっていたことではあったが、流石にステータス数値が元の2倍程度になっているのは驚きだ。
「それにしても登録者数の伸びが凄いな」
俺のジョーカーとしてのチャンネル登録者数は1000万人を軽く超え、現在は1248万人だ。
どうやらこの大規模攻略は連日テレビで報道されているらしく、普段ダンジョン配信を見ない層ですら見ているようだ。
シロリンのチャンネルも500万人を突破してたし、かなり社会現象になってるっぽいな。
攻略を始めてから一切ダンジョンの外に出てないからあんまり実感湧かないけど。
ていうかそもそもジョーカーとして人前に出ることほとんどないから多分俺自身は味わうことない。なんでやねん。
「あやっべー。そういやあの日ってそうじゃねえか」
「どうかしたんですか? 斬月さん」
「いやー、そろそろ結婚記念日なんだよな。たくっ、ここの階層どんだけ広いんだよ。ぜってえそれまでには帰れねえな」
また嫁にどやされる、と斬月さんが龍牙さんに愚痴る。この大規模攻略は何回かに分けて行う計画をしている。
天院さんと協議した結果、今回は10階層の拠点が設立できたら先行部隊と殲滅部隊は撤退し、代わりに上級探索者達から志願を募って拠点の守りを行ってもらう手筈となっている。
そして10階層に到着した時点ですでに上級探索者の志願者を集め終えているみたいだから、俺達は10階層の拠点設立かつ殲滅さえ終えればすぐにでも撤退できる。
だが問題はこの10階層にあった。
「先に攻略し始めたイグナイト達が未だに10階層の終わりを見つけられてないとか広すぎんだろ」
「広くなったというよりかは魔物が極端に強くなったからじゃないですか?」
「そうとも言う」
5階層攻略時に既に9階層へと到達していたイグナイト達が未だにここ十階層で燻っているというのだ。
このダンジョン、全世界で繋がってるっぽいしもしかしたら出会うかもな。
やっぱ俺の異能『攻略者』でクエストになるくらいだし難易度は伊達じゃねえか。
……てか待てよ? 何で俺の異能は難易度が跳ね上がる階層をピタリと当ててんだ?
まあ、キリが良い数字だしたまたまか。
「ねえ、ジョーカー」
「どうされました? 白崎さん」
「これイグナイトの配信なんだけど」
そう言って何か小さな台座みたいな物を目の前に置いてくる。
配信を見せるんじゃないか? と疑問に思った瞬間、その台座みたいな物から映像が空中に映し出される。
このちっちゃいの映写機みたいな奴なの!? めちゃくちゃコンパクトな割に画質も良いし。
「この敵、前の光の戦士みたいじゃない?」
この映写機ってどこに売ってるんだろ? 俺も欲しいな。せっかく収益もいっぱい入ってる訳だし。
「ねえ、聞いてる?」
「はい、聞いておりますとも。凄いですね、この映写機。コンパクトで使いやすいのに画質も良いですし」
「うん、まったく聞いてない事が分かったよ」
「すみません」
「もう一度言うからよく聞いててね」
白崎の話によるとイグナイトの配信に現れた魔物が光の戦士に似ているというのだ。
あの時は神の声によって予告された後に来たはずの神の兵みたいな奴が。
「コイツらって異能の力効かないよね。じゃあ、あの武器だったら効くのかな? って思って」
「それは分かりませんが少なくとも武器の最大限は発揮できないとは思います」
武器自体の攻撃は通るだろう。しかし、異能の力を存分に利用する武器だからこそ普段の力は発揮できないとは思う。
以前、炎の巨人の剣の攻撃が通ったのは白崎に全くの適性がなかったからこそ、武器の力のみ発揮されてあいつらに効いたのだろう。
てか適性なくてあんだけ強いんだったら適性ある奴に持たせたらどうなんだろ?
「イグナイト達もこれで大分苦戦しているんだと思うの」
「異能の力が効きませんからね」
イグナイトだけは異能が自身の能力を強化する奴だから配信を見ててもあんまり関係なさそうだけど他の2人がね。
「10階層の攻略では西園寺さんの力が必要かも」
「そうかもしれませんね。少し天院さんと西園寺さんに聞いてみます」
西園寺さんなら異能がなくとも剣の腕が飛び抜けてる上に居合の達人だから転移する光の戦士に関係なく力を発揮するだろう。
白崎の言葉を聞いてそう結論づけた俺は部屋の外へ出ようと扉の方へと向かう。
そして俺が扉に手をかけるより先に扉が勢いよく開き、俺の顔面にぶち当たる。
「カッカッカ! 貴様ら、俺の力が必要だろう! 来てやったぞ!」
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