68話 殲滅部隊
「まさかお前と二人で行動することになるとはな、ジョーカー」
「私も思いませんでしたよ」
だって本来なら今日は先行部隊休みだし。西園寺さんはまあペナルティみたいな感じだから昨日先行部隊の任務をして、今日殲滅部隊の任務をするのはわかるけど、まさか俺までとは。
トホホ……あの時ちょっと調子に乗って殲滅部隊の二人を気絶させなければこんな事にはならなかったのに。
「カッカッカ! そう気を落とすな。そもそもあいつらが軟弱すぎるのが悪い。現に俺達はピンピンしてただろう?」
「それはそれであのお二方に悪いですし」
どうしよっかな。せっかくだしカメラでもつけようかな。
「西園寺さん、カメラを回しても良いですか?」
「うん? あー、ダンジョン配信とやらか。あれはあんまり風情が無くて好みではないのだが、まあこの際良いだろう。俺も先日の失態は払拭せねばならんしな」
案外そのことを気にしてたんだ。てっきり外聞とか気にしねえぜみたいな感じでネットの意見とかフルシカトするタイプだと思ってたけど。
実際昨日のシロリンの配信ではかなり荒れてたみたいだしな。一人の判断で全員を死に追いやるところだったんだから仕方ないけど。
でも最後は自分一人だけ残って責任は取ろうとしてたんだから大目に見てあげてよとは思ったよな。まあ俺は全く大目に見ることはなく殲滅部隊に送ったけどさ。
「殲滅部隊の仕事ってどんなことをするのでしょうか? あ、皆さんようこそおいでくださいました。突発ですが配信を始めさせていただきます」
『キタキタキタキタ』
『マジ突発過ぎるww』
『まさかの告知ゼロじゃないですかww』
配信のセッティングを終え、ドローンカメラを追従させはじめたところで西園寺さんに聞く。
すると西園寺さんが懐を何やらゴソゴソとした後に丸い球体を取り出す。
「これは?」
「こいつは一定距離内にこちらへ敵意を向けてくる魔物が居た時に赤く光って反応してくれるダンジョン産の道具だ。確か半径100メートル以内だったかな?」
「敵意をですか。それはどういった仕組みで反応するのでしょうか?」
「さあな。大方一定のステータス数値を超えたら反応するだけだろ。本当に敵意を感知できるモンなんてねえさ」
なるほどな。でも誤作動とか起きないのだろうか? たまたま近くを通っただけの探索者とか……あーでも別にその誤作動が起きたところで何の危険性もないか。
むしろ警戒心を引き上げられて好都合じゃないか。
それと後は起動時にその半径内に入っている探索者とかのステータス数値は記録できるようになってるとか?
何か考えたらキリが無いからこの辺でよしとこう。
「それでだな、こいつを使って魔物を探索、んで殲滅だ。簡単だろ?」
「殲滅ですか……ダンジョン内部の魔物というのは完全に殲滅することは可能なのでしょうか? 次から次へと湧いてくる印象しかありませんが」
「そりゃあ完全にはムリだ。だが、周囲だけでも駆除しておけば拠点に被害は出ねえだろ? そういう意図があんだよ」
何だろう。先行部隊に居た時よりも西園寺さんがやけに頼もしく見える。いや本来はこんな感じで先達者としての役割を果たしてくれるのだろう。
あの時はちょっとおかしかっただけで。
『殲滅部隊? 昨日のダンジョン探索とはまた違うのか?』
『昨日は単独行動だったのに今日は王と一緒だしな』
『ホントだ』
『因縁の相手が共闘。こりゃ胸躍るな』
そう言えば視聴者さんに一切説明しないまま始めちゃったからな。若干困惑してそうだし、ここらで話しとくか。
「皆様、本日は私の配信にお越しいただき誠にありがとうございます」
視聴者数は20万人を超えている。ちょっと麻痺ってるけど、この人数の前で喋るの一々カロリー使うよな。
まあ俺はジョーカーっていう仮面を着けてるから若干マシなんだろうけど。
「今回は前回のダンジョン探索とは異なり、ダンジョン内部に探索者の拠点を建造するため、周辺の魔物を倒しつくす配信となっております。強敵は出ませんが皆さまどうぞ今回のショーを存分にお楽しみください」
『いやジョーカーが異常なだけでここの野良の魔物、一体だけで他のダンジョンのボス張れるような奴ばっかだからww』
『ジョーカーには関係ないだろうけどww』
『てかマジでジョーカーって何者なんだ? やっぱランキング1位なのか?』
『まあイグナイトと互角以上の探索者なんてジョーカーしかいないし』
『いやでもあのイグナイトよりジョーカーの方が強いとは思えない』
何か若干コメント欄が変な方向に走り出したんだけど。いつものイグナイトとジョーカーどっちが強いかみたいな議論。
流石に何回も見たこのやり取りを止めるのは面倒だし、放っとくか。
コメントの流れなんて配信のインパクトですぐに変えられる。
「さあ西園寺さん勝負をしましょうか」
「勝負? 良いぜ、どんな勝負だ?」
「どちらがより多く狩れるか。もちろん西園寺さんはハンデとしてその道具を使っても良いですよ」
「ほう、嘗められたもんだぜ」
『結局共闘じゃないんかい!』
『いやいやこうじゃなくっちゃな!』
『いいぞもっとやれ!』
「制限時間は3時間。3時間後に拠点に戻ってこい。良いか? ずるすんなよ?」
「大丈夫です。私の場合は配信が証明してくれますので。西園寺さんにもドローンカメラを渡しておきましょう。私のチャンネルで同時配信といこうじゃありませんか!」
良いね。やっぱり配信ってのはこうじゃなくっちゃな!
「Ready for it? イッツ、ショータイム!」
そうしてその言葉と共に俺と西園寺さんは二手に分かれるのであった。
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