65話 適合する武器
「これから皆さんに合いそうな武器を渡していきますので整列してください」
「いやジョーカー殿。学校じゃあるめえし。てか3人だけだぜ? そもそも整列する必要なんてねえだろ」
「おっと失礼。つい」
掴みのトークはここら辺にしてっと。てか思いの外、斬月さんがツッコミを入れてくれるから楽しくなっちゃうなコレ。
「そうですね。皆さんの異能についてはシロリンさんの配信アーカイブで見せていただいたのと事前に教えて頂いた情報で何となく把握しただけですので自信は無いですが」
厳密に言うと斬月さんだけ全く知らなかったから自信がないだけだけど。
「まずはシロリンさん」
「はい」
シロリンに関しては滅茶苦茶合いそうな武器をアイテムボックスの中から見つけたから一番自信がある。
「この剣なのですが」
そうして俺が取り出したのは剣身がすべて水色の半透明な物質で作り上げられた剣だ。
「氷の女神の力が封印されてる剣らしいです。私は氷の異能を操れませんのでそれ以上はわからないのですが、氷の異能を操れるシロリンさんなら良きように使えるのではないかと」
「氷の女神の力……確かにそれだけ聞くと私にピッタリな気がする」
「明日の模擬戦で使ってみないと何とも言えませんが少なくとも私の持ち物の中ではそれが最も適しているのではないかと思います。次は龍牙さんですね」
そう言って俺は龍牙さんの方を振り向く。そういえば俺ってジョーカーの姿で龍牙さんの事なんて呼んでたっけ? とか考えながらアイテムボックスの中からとある武器を取り出す。
「槍ですか? いやそれにしては形状が特殊ですね」
俺が手に取ったそれはやたらと腕部分を隠すかのように大きなプレートが付属した槍だ。俺が持っている主神の槍のような形状ではなく、刃部分がかなり大きいどっちかって言うと馬に乗ってる人が持ってるあのランスみたいな形状だ。
そして紫が主体の独特な色合いも相まって若干気味が悪い武器だ。
「ドレイン・ランスという武器らしいです。文字通り、この武器で攻撃した相手から力を吸収するという能力があるらしいです」
吸収する力っていうのが存分に果たせるように刃が大きくなっているのだろう。ただ、シールドと一体型みたいになっているため重量的には余りにも振るいにくい気はする。
この吸収する『力』というのが果たしてステータス数値の事なのか、単に攻撃力なのかは分からないため龍牙さんに完全に適しているのかどうかはわからないため少し自信はないけど。
「ドレイン・ランスか……へえ、これ凄い業物だね。見るだけで分かるよ」
こういう業物は大体使用者の成長も必要だから僕が扱えるか不安だな、なんて柄にもない事を言いながら龍牙さんはランスを構える。
そして少しするとシールドの様に大きく腕を覆っていた部分が無くなり、普通のランスの様な見た目になった!?
「りゅ、龍牙さん。何をしたんですか?」
「僕もよく分からないけど、ここ邪魔だなって思ったら無くなったんだ。もしかしたら自由に形を変えられるのかも?」
そ、そうなのか? 俺も試しに触ってみたけど全然変形しなかったんですけど!? 何か能力的に適合してないと作動しないとかあんのかな?
ていうかそんな瞬時に変形させられるって事は攻撃された時に今みたいなシールドを作って防げるかもしれないって事か?
「龍牙さんの場合は模擬戦をするまでもなくその武器に適合してそうですね」
「いやいやまだまだだよ。ちょっと気を抜いたら逆に力を吸収されそうになるし」
何その物語で言うところの魔剣みたいな奴。あんなのがアイテムボックスの中に埋もれてただなんて俺は何てもったいない事をしてたんだ!
でもまあ使えないからって売らずに置いといてよかった……。一応見た目も良いし売却候補だったんだけど、あのシールドみたいなのが特異すぎて売れないかなって思って売るのやめたんだよな。
「それで最後に斬月さんになるのですが……」
正直何を渡せばよいのか滅茶苦茶迷った。斬月さんの異能は『波纏』っていう特殊なものだ。
以前、体から衝撃波を放つキングルーさんって人が居たけど、斬月さんのは衝撃波を放つのではなく体に纏って強化するというもの。
それゆえに武器を必要とせず結構厳つい鎧を着て素手で戦う。
……ってことは武器要らなくね!? となったわけだ。
「一応こちらのグローブをお渡ししようかと思っているのですが」
取り出しましたるは斬月さんの黒い鎧とマッチした黒い鎧手みたいなグローブ、『黒龍装具』って奴だ。
名前からして黒い龍の鱗とかを素材にしてそうな武器だ。能力は『増幅させる』としか書いてないから何が何だか分からない。
ていうかそもそも俺のアイテムボックスの中にこういう武器が殆どなかったから一番汎用性の高そうな奴を選んできただけだ。
「なるほど。俺はあまり武器を使ってこなかったのだがどれどれ着けてみるか」
そうして若干大きめかなと思っていたグローブは斬月さんが手にはめた瞬間に小さくなり、斬月さんの手にピッタリの大きさへと変化する。
これもまた特殊な武器ってことだ。
「一応能力には『増幅させる』とだけありましたので攻撃力などを上げるものかと」
「ふむ……着け心地は結構いいな。見た目は籠手っぽいが普通の手袋みたいに自由に手を動かせる。何とも不気味な武器だな」
その場でシャドーボクシングをしたり、手をグーパーさせたりして機能性を確認する斬月さん。
やがてこちらを見るとニヤリと笑みを浮かべる。
「ありがとな、ジョーカー殿。お前には道玄のことと言い、世話になりっぱなしだぜ!」
「いえいえ。もとより私が使えない武器ですので気になさらないでください」
よし、取り敢えず一番不安だった斬月さんも多分気に入ってくれたし後は模擬戦で確認するだけだな!
「ではまた明日。今回お渡しした武器を用いて昼時に模擬戦を行いますのでどうぞよろしくお願いいたします」
そうして俺は恭しく礼をするのであった。
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