63話 先行部隊のその後
会議が終わり、先行部隊の部屋へと戻ると俺はベッドの上にそのままドブンとダイブする。
あ~、フッカフカだべ~。こりゃあ最上級の品じゃあねえかい。
……って草壁さん、内装を豪華にし過ぎたから拠点全部造れなかったって言ってたけどもしかしてこのベッドもそうなんじゃ……。
ま、ええか~、こんなにフカフカなら何でもええがや~。
「ジョーカー殿。先行部隊の皆で少し相談事があるのだが」
「ん~? あ、確かにお風呂の順番とか決めないと駄目ですよね~」
「馬鹿。そんな話じゃないわ。殺すわよ」
えなに怖い。急に首筋にヒンヤリとした何かが当たったんですけど!
「はいはいはいはい! 何でしょうか何でしょうか!?」
シロリンの鋭い殺気で飛び起き、斬月さんたちの方を向く。てか皆暗くない? どうしたんだ?
「俺達の部隊から道玄が居なくなっただろう? すると俺達は三人であのダンジョン内を散策しないといけない訳だ」
「まあそうですね」
「正直に言うと戦力に不安がある。今日の戦闘を見てつくづく痛感したよ。あいつが居ねえとここの魔物にはまるで歯が立たねえ」
ふむ。そういう事か。よっぽど今日の戦闘では西園寺さんの力頼りだったんだな。あんまり見てないから詳しくはわからんけど。
そりゃそうなるか。だってイグナイトと一緒にダンジョン攻略をして飛躍的にステータス数値を上げてるっていう人たちですらまだ西園寺さんより下だもんな。
あの人は性格に難さえなければ最強なんだけどな~って嘆いていても仕方ない。
「戦力に不安ですか。ふむ……私が思い描く中では特にそうは思わないのですがね~」
斬月さんは言わずもがな強いだろ? 龍牙さんも白崎もかなり力を付けてきてるし、あの時の番人くらいだったら三人で余裕をもって倒せそうだけどな~。
でも確かに俺が三人の実力を正確に判断できているかという点に関しては疑念は残るな。ちゃんとした実力を知ってるのは案外白崎だけなのかもしれない。
困ったな~。
「あ、そうだ! なら明日は攻略をお休みにして模擬戦でもしますか? もちろん、私vs他の皆様で」
「「「え?」」」
流石に俺の提案が安直過ぎたのか皆が一斉に疑問の声を出す。ですよね、そういう反応になりますよね。
うんうん、俺もそう思ってました。撤回しま……。
「ふむ、模擬戦ですか。それは良いですね」
俺が慌てて提案を撤回しようとすると意外にも龍牙さんの方から賛同の声が上がる。
うそん、良いの?
「言われてみて気が付きました。私も一度皆さんの戦闘能力を把握するためには必要な事ではないかと思います」
シロリンまで!? あ、今は白崎か。ややこしいな。
「ガッハッハ! そうだな! そうしよう! 羨ましがる道玄を前にして思う存分にやってやろうではないか!」
え、全員OKなの? 何かパッと思い付きで言ってみただけなんだけど。そんなに期待のこもった眼でこちらを見ないで。
「あ、えーとまさか皆さんがここまで乗り気になるとは予想外でしたね。せっかくですから皆さんのステータス数値を計測してから行いますか。もしかすると私の異能で手に入れたアイテムの中に皆さんに合う武器があるかもしれませんのでそれも試してみたいですし」
「あ、でも私はこの剣を持ってるから大丈夫」
そう言うと白崎はいつぞやの炎の剣を取り出してくる。あの巨人を倒した時にもらった剣か。
「性能で言えば確かにすごく強力ではあるのですが、せっかくですし白崎さんの能力に合うような武器がありましたらそちらの方がよろしいかと思いますので」
「そう? じゃあこれは返しておくね」
そうして俺は白崎から炎の巨人の剣を返してもらう。元々能力の相性も考えずに光の戦士に対して異能が効かなかったから渡してたってだけだし、これを機に何か合いそうな武器が無いか探すか。
「取り敢えず明日までに何か使える武器が無いか探しておきます。あ、それと白崎さん。転移石は持ってますか?」
「それならさっき天院さんに渡したよ。拠点に物資を運ぶのに使うんだってさ」
おーう! そりゃそうか! じゃなきゃ何のための拠点だって話だもんな!
「天院さんからあなたに伝えておいてって言われてたけどすっかり忘れてたね。ごめん」
「だ、大丈夫ですとも。仕方がありませんから」
不味いな。早急にもう一つの転移石の力の開放の仕方を編み出さないと俺の正体がバレちまう。いやまあ先行部隊だけ何気に広い個室があるにはあるんだけどさ。
さっき草壁さんに聞いたらここ大浴場なんだよね、うん。風呂に入るのに仮面付けたまま入れってか? 多分水蒸気とかなんかで窒息するよね?
「あれ? 何か僕達がボスに殺されそうになってる時よりも焦ってない?」
「そりゃあそうだろう? こっから共同生活が始まったら正体がバレるリスクが高まるしな。気になさんな、ジョーカー殿。俺達は素顔を見たとしても決して他言しねえからよ」
他言しねえじゃなくて素顔を見んじゃねえよ。何かニヤニヤしてるしあのおっさん。
西園寺さんとは別の意味で面倒くさいかもしれん。てかそうだろ絶対。あんな頑固おやじとずっと仲良くやってんだからこの人もどっかおかしいんだよ。
そんな感じで若干いじられムードが部屋を充満した時であった。部屋の扉を豪快に開ける音と共に噂をすれば何とやらのあの方がご入場なさって来たのである。
「おいおめえら! 飯だ飯! 飯が出来たぞ! 早く食卓に集まらねえか!」
そこに立っていたのはなぜか嬉々とした笑みでエプロンを付けている西園寺さんの姿であった。
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