表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンビニ・ガダルカナル  作者: ほうこうおんち
第4章:辻政信という因子
25/81

近づきつつある因子

奇妙な話だが、俺の勤めるコンビニの前にある洞窟は、

1942年のガダルカナル島に通じる「門」となっている。

その為、そこを管理する自衛隊や、道路の方を管理する警察の他に、

作業着、白衣、スーツと様々な人たちが訪れていた。


今日来ているその人は、ちょっと変わっていた。


勤務交代の時に、俺はその人を見た。

恐竜を現代に復活させた映画で、コンピューターをクラッキングして

余所の企業にデータ横流ししようとして自滅したデブがいたが、

見た目はあんな感じだ。

そして見た目を裏切る事なく、コンビニで買った2リットルコーラをがぶ飲みしている。

ノートパソコンをいじりながら、たまに自衛官や学者っぽい人に指示を出しているから、

「門」の関係者である事は分かった。


…以前、走り屋が峠を攻めるのが流行った時があり、

その時にうちの店の前には地べたに座って飯食ってる連中がいた。

久々に同じ姿を見た…。

地べたに座って、パソコンいじって、ポテチ摘みながらコーラ飲んでる。


勤務交代してしばらくして、その人が店に入って来た。

「充電できる?」

一発目の発言がそれかい!


うちのコンビニは、元はドライブインで、土産物とか売ってた方を改築して

コンビニしていて、休憩所・飲食場所に使っていた方はそのまま残している。

だからコンビニ側にイートインは無い。

イートイン可能なのは元ドライブインの方で、長距離トラックの運転手の他、

旧日本兵もそこを使ったことがある。

店内での充電は出来ないが、あっちなら可能だ。

そう伝えると、

「分かった。んじゃ、コーラ買うわ」

その他、炭水化物系ジャンクフードを買って、元ドライブインに去って行った。


「あの人も自衛隊?」

浜さんに聞いたが、

「多分違います。あの人最低限の訓練もしてない体ですから」

そう言った。

「防衛省の官僚なら自分の知らない人なのかもしれませんが、

 何となく違う感じがします」




深夜、「門」の方では歓声が上がった。

浜さんに事情を聞いて来て貰ったら

「ガダルカナル島と通信出来るようになったそうです」

という答えが返って来た。


交信方法の理屈そのものは簡単だった。

ガダルカナル島の方から「門」に、科学の実験でやるような空気砲を使って、

空気の塊というか圧をぶつける。

すると転送の可否か何かが働き、反対側から微弱な電磁波を出すようだ。

「門」を通れようが通れまいが、一瞬チェックが効いて、その時に電波が出る。

それを電気的に増幅し、ノイズを除去すると通信が出来るようだ。

音声は波形解析が必要とかで上手くいかないようだが、

ぶつけた時の音で「トン・ツー・トン・ツー」のモールス信号にはなるようだ。

問題は現代からガダルカナル島への通信であった。

最初、全く出来なかった。

ガダルカナル島から現代の方はちょっと前に分かったようだが、

現代からガダルカナルの方が通じなかった。


そこにやって来たのがさっきの人だった。

「『門』を通れるのが1942年のモノに付随するのに限られるんなら、

 1942年の空気を風船か何かに詰めて持って来てさぁ、

 それでトンツーやってみたらどうだ?」

と言ったそうだ。

そして、現代に持ち込まれた1942年の空気が放たれ、『門』の境界にぶつかった時に、

向こう側でも微弱な電磁波をキャッチする事に成功したそうだ。

そして

「電磁波受けたら増幅するだけの簡単な装置だけどさ、

 ありもの送るんじゃなくて、秋葉原電気街かどこかでパーツで買って来て、

 2000円未満に抑えた自作品を『仏舎利』で持っていったら?

 特殊な機械だし、ありもの改修するより一から作った方が早い。

 あと、あっちの人が使うんだから、閉門前に来て貰ってこっちに泊めて、

 一緒に行って使いやすいパーツ買ったり、知ってる部品使ったり、

 一緒に電子工作してみたら? 昔の人って自作能力高いから、

 機能と接続のプラスマイナス教えたら、作れるし修理も出来るようになると思うよ」

とアドバイスされ、ついに双方向通信が出来るようになった。


皆がそれで喜んでいたそうだが…

肝心のその立役者はあっちの建物でノートパソコンいじってる…。






---------------


1942年12月 ガダルカナル島:


「中佐、すっかり良くなられたのですね!」

辻政信が前線の兵士から歓待されていた。

真田大佐のように、最前線視察を命じれても、現地司令部までの他の参謀と違い、

辻政信は本当に最前線までやって来る。

兵士たちにはそれで人気があったりした。

「それもこれも、諸君たちのおかげだ!

 諸君たちが自分になけなしの薬を分けてくれた。

 その恩はこの辻政信、終生忘れんぞ!」

「いえ、こちらこそ。よくぞ戻って来て下さいました。

 そして大本営を動かし、この孤島に大戦車隊を派遣してくれました。

 中佐殿には感謝に堪えません!」

「いやいや、諸君たちのこの辛苦を思えば、

 独逸伊太利と折衝する事など、何の苦あらんや」

完全に日独伊戦車連隊の功績を自分の物にしていた。


そして彼は最前線中の最前線、哨戒任務中の現場に赴く。

『どうだ?』

『はっ、今日のところは目立った動きはありません』

『それは何だ?』

『これは無人小型偵察機が送ってくる絵です』

『なんと?』

『今戻って来ました』

ドローンが着陸する。

『これは大変便利なのですが、半日電気を蓄え、それでも5分も飛ばせません。

 発電機の出力が不足しているので、本当はもう少し飛ばせるようなのですが。

 あと時々画が荒いので、やはり細かい動向はカメラで撮ります』

そういって、自動ズームするデジカメを見せた。

『随分と立派なものではないか』

『このような素晴らしいものを送っていただき、ありがたく思っています』

(くだん)の秘密の補給基地で受領したものだな?』

『左様であります』


その後、辻は野戦病院に寄った。

「皆よくぞ生きていた。感謝する!」

「いえ、参謀こそよくお戻り下さいました」

辻はここでも歓迎を受ける。

「それにしても、蚊帳とはまさにコロンブスの卵だな。

 蚊帳とは我が国に古来よりあるが、戦場に蚊帳とは贅沢と思っていた。

 だが、これがあるだけでマラリア感染を防げるとはな」

「この蚊帳ですが、殺虫剤が練り込まれているものだそうです」

「なんと」

「蚊帳に殺虫剤、2つのものを1つにし、より効果を高めるというのも

 素晴らしい発想です。大日本帝国万歳! 帝国陸軍万歳です」

辻は他に、新しい注射器、綺麗な水、軟膏等他の戦場では消耗している物資が

ここには随分とあるのを確認した。

「諸君たちは随分と恵まれておるなあ」

「承知しております。この御恩に報いる為にも、一刻も早く体を治し、

 御国の為にご奉公したいと思います」

「その言や良し! 期待しておるぞ!」


色々視察しながら威勢の良い言葉を飛ばし、辻は第17軍司令部に戻った。

「今戻ったぞ」

「………」

「司令官殿、どうかしましたかね?」

「…いや、ちょっと頭痛がしただけだ。

 それで、どうだった?」

「うむ、今すぐにでも米軍と一戦出来そうではないか」

「まだこの戦場にこだわるのか?」

「いや、こだわりはしない。

 だが、一度は勝利を収めてからの撤退でないと、

 お上にも!

 海軍にも申し訳が立たないではないか」

「ですが、まだ不足しているものがあります」

第17軍の参謀が発言する。

「それは何かね?」

「武器、弾薬が不足しているのです。

 兵は徐々に戦えるようになって来ていますし、

 燃料も少しずつですが補給されております。

 しかし武器、弾薬が足りず…」

「他の戦場はもっと厳しいのだぞ!

 ニューギニア戦線はもっと過酷な戦いをしておるのだ。

 甘えた事を言ってはならん」

「その武器をどうにか輸送しようとしている最中なのです」

「例の補給基地からか?」

「そうです」

「では、早くせんかと発破をかけてやらんとな。

 で、吾輩はいつそこに行ける?」

「かの場所はここよりもっと山奥にあります。

 歩いて半日といったとこです。

 たまに米軍機が上空を通過しますので、やり過ごすともう少々かかります。

 現地の野営地には参謀殿が視察に行くと既に連絡しましたので、

 明日早朝には出発、同夕刻に到着の見通しであります」

「楽しみだな。どのようなとこであろうか!」

「…ただの洞窟だそうですよ」

その後ろでは、百武中将が後頭部を揉み、側頭部を指圧していた。

脂汗も浮いているが、暑いこの戦場では汗は普通なので目立たない。


---------------




現代では、例の太った男が呟いていた。

「過去のモノは通そうとするが、現代のモノだけだと最初から弾かれる。

 現代のモノは過去のモノと一緒でなければ通れない。

 過去のモノは『門』を通る時にチェックがかかる。

 ではそのチェック時にどこを見ているのか?

 『足作戦』ね、中々面白いなあ」

(続く)

感想、レビュー、激励ありがとうございます。

年度末の仕事、なんとかクリアしました。

更新再開します!

今日は日が開いたので、二話更新します。

次は2時間後になります!


今村将軍ですが、ガ島戦撤退当時はまだ中将だったようで、訂正しておきました。


あとドローンですが、

・太陽光発電で日が上ってる半日しか充電できない(化学反応式やエンジン式は持ち込めなかった)

・その他のダイナモとかの充電器もあるが、カメラやら何やらにタコ足配線でパワー不足

な為にこっちの時代で60分で充電完了でも、あっちでは時間がかかります。

省きましたが、たまに樹に引っ掛けて、上って取りに行ったりしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 技術に強いデブというのはどんな作品でも妙に格好良く感じるw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ