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5-17 久しぶりのトラスブル、私は懐かしい人と再会をする

5-17 久しぶりのトラスブル、私は懐かしい人と再会をする


 全員身体強化して、馬を取りにトゥルムへと向かう。トラスブルからは川沿いを下りメインツに戻る予定なので、ここには立ち寄らないからだ。


「馬の割り振りはどうする?」

「ビルに剣化してもらって、私と先生が騎乗、師匠は従者っぽく馬前を走って下さい」

「……なにそれ、酷くない?」


 先生も「年寄りは労わりなさい」と、先ほどの年齢話の仕返しをここぞとばかりにする。師匠は「晩飯おごれよ」というので、「アンヌさんの家に泊まらないならいいですよ」と伝えると丁寧に申し出をお断りされる。


「オリヴィも気が付いていたのね」

「最初は仲いいなって思ってましたけれど。一年もいれば、雰囲気で気が付きました」

「そうか、俺達もまだまだ捨てたもんじゃないな」

「あー 多分、腐れ縁っぽい男女の仲ってことよねオリヴィ」


 先生、パーティー組んでいる時なんかありましたか? 内緒とばかりに微笑まれ、今晩の酒の肴にするつもりだからお楽しみにと言われる。


 最初の逃避行は山中を魔物を討伐しつつ進んだので時間がかかりましたけれど、馬だと半日ほどで到着することが出来ました。とはいえ、夕方の門が閉まる直前であったけれどね。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 最初に冒険者ギルドに向かう。理由は、大司教猊下の指名依頼の報酬……というか評価の確認と、ギルド経由で連絡がないかどうかの確認です。一応、メインツとトリエルのギルドにはトラスブルに向かう事を伝えてあるので、何か連絡があれば転送されているはずなんだよね。


 一年ちょっと前には毎日足を運んでいた馴染みのギルド。私にとっての冒険者ギルドはこの場所なんだと強く思う。


 顔を見知っている職員や冒険者から「戻ったのか」とか「久しぶり」という声を掛けられるのは正直嬉しいです。


「ヴィーは人気者だな」

「当然でしょう。誰の生徒だと思っているの」


 先生にとっては生徒、師匠にとっては弟子、そして……


「ヴィーちゃん、お帰りなさい」

「アンヌさん。ご無沙汰しています。無事、戻ることが出来ました」

「随分とご活躍みたいじゃない? とりあえず……応接室へ行くわよ。後ろのお供たちも一緒で良いわよ」


 へいへいと師匠が鷹揚に返事をし、先生とビルもその後に続く。応接室に入るのは初めてだったような気もする。


――― だって、凄く立派だよこの部屋


 師匠はニヤニヤし、先生は「あー」と呟き押し黙る。なに、何か不幸なことでも起こるんですか!


 アンヌさんはお茶の手配をして、その間に簡単に応接室に連れてきた理由を説明する。


「まあ、ギルドとしてはヴィーちゃんに星四の冒険者になってもらいたい……というお願いなのよ」


 ああ、とうとうアンヌ姐さんからの勅命が来てしまいました。そうだよね……実質、公爵家、公爵閣下、大司教猊下と直接やり取りできる冒険者って星三扱いだとギルドが困るってことだよね。


「正直、冒険者としての経験が足りていないので、あと数年はお断りしたいというのがあります」

「そうよね。今は、そのイケメンさんと組んでるから問題ないでしょうけれど、まだまだ一見駆け出し冒険者だものね」


 そうです、なんなら、ビルをもっとオッサンにする事もたぶんできると思うよ。今度聞いてみよう。


「では、『星四見習』ということでどうかしら」

「……なにそれ、聞いたことないわよ」

「普通はこんな事ないから、緊急でギルド本部が動いたのよ」


 冒険者登録から十年以内の星三冒険者が星四等級へ昇格する場合、十年経過までを暫定的な星四とすることで、難易度の高い指名依頼などを免除するという優遇措置だそうです。


「星四が『英雄』扱いなので、通称は『英雄候補』になるのかしらね。あと七年位はその『候補』扱いで、強制的な討伐依頼などは免除されるのよ。その間に、パーティーを強化するなり、自身の腕前を上げるという事に専念してもらう猶予期間と思って貰えればいいわ」


 冒険者ギルドを一回辞めて星無からやり直そうかと一瞬思うけれど、せっかく繋がった縁も切れてしまうかもしれないのでそれは勿体ないよね。


「これ、強制されるの?」

「冒険者ランクは上げざるを得ないわ。上からの命令だから、ギルドとしてはヴィーちゃんは登録継続なら星四見習にしなければならないわね」

「まあ、ヴィーは優秀な俺の弟子だからな」

「ええ、それはそうよ。私の優秀な生徒なのだから当然ね」


 はいはい、と姐さんが受け流していると、ギルマスのおじさんが入ってくる。


「おお、オリヴィか。トラスブルの冒険者ギルドの誇りだお前は!!」


 何々、いきなり褒め殺しですか。まあ、ほら、色々尾ひれがついて話が大きくなっているんだろうね。名前だけ独り歩きしているパターンだと思う。あんまり目立ってないよね、依頼も普通にこなしているだけだし。


「ブレンダン公家から、領内の賊の討伐で多大な貢献を受けているという話も頂いているし、公の子息をお助けしたのだそうだな」


 うん、バルド君はちゃんと聖騎士に戻っているのだろうか。恩にきてくれる分にはこちらに損はないから別にいいけどね。


「それと、ジギン団の包囲を崩す為の策略も星三の領域を越えた活躍であったとトリエル大司教座から伝え聞いている。緊急指名依頼を受けたことも、高く評価されているんだ」


 うん、でも、放っておいても多分撤退したと思うけどね。でも、捕えられている人達を助けたかったというのが動機の大半だしね。あと、通り道の邪魔だから討伐してみました。


「なので、アンヌ、冒険者証の更新を頼むぞ」

「オリヴィ様、冒険者証をお渡しください」


 なぜか銀の御盆を差し出す姐さん。胡散臭いですよ。仕方がないので、私の冒険者証と……ビルも冒険者証を差し出す。ビルも星三に昇格し、私の正規の星四昇格の頃には、当然「炎の魔剣士」として星四になるんだろうね。


 暫くして、戻って来たアンヌさんは、新しい冒険者証を私たちに手渡してくれた。


「……今までと違いますね」

「星四は魔銀の冒険者証になるわ。名乗りも、『オリヴィ=ラウス』になっているのは、姓のある身分であることを示しているの」


 冒険者の時はオリヴィ、商人の時はオリヴィ=ラウスだったんですけど。


「窓口では今まで通りの『オリヴィ』よ。指名依頼や貴族と会う場合の名乗りね」

「私はまだ『ビル』で構わないわけですね」


 二人で出来る依頼は限られているけれど、今までよりは格下と思われてベテランにわがまま言われる確率は下がったでしょうか。冒険商人としての依頼優先なのは変わらないけどね。経験を積むことが大事です。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 その昔、初めてトラスブルに来た時に訪れた隠れ家的レストランは、今も健在でした。最近、黄金の蛙亭を筆頭にわりといい宿に泊まる事が多いので、その当時ほどの感動はなくなったかもだけれど、雰囲気のいいお店であることは変わらない。


 昇格祝いと、再会を祝した食事会が開かれる。ビルは剣化してしまい、私と先生・師匠・姐さんの四人で食事をする。


「この四人では初めてよね」

「トラスブルで活動している時には、たまに師匠が来た時に三人で食事をしていましたけど、先生は初めてです」

「ほら、大人だから気を使ったのよ」


 なるほど。先生は師匠がトラスブルに向かった時には、予定をずらして訪問することにしていたらしい。





 私の旅の話をする中で、中心は行商の話とメインツにいるプルとビータの話になる。ある程度話をした中で、私は思い切って先生にプルの話をすることにした。将来的に、東に向かいプルの故郷を探し彼女を帰したいということだ。


「なるほどね。幼児を連れて旅をするわけには行かないでしょうけれど、あまり時間がたってしまうと、プルちゃんの事を知る人がどこかへ行ってしまう可能性もあるわね」

「だけど、あのあたりはサラセンの影響下だろ? ヴィーが冒険者しながら探すってのも難しい」

「依頼を受ければいいのよ。例えば……公爵閣下からサラセンの軍の動向を探る調査で『沼国』周辺の情報収集なんかをね」


 確かに、ブレンダン領はベーメンと境を接する帝国東方であり、大原国にも接している。サラセンが沼国を影響下に置き、沼国王を兼ねるベーメン王がサラセンの軍との決戦に備えているようなのだという。



「それと、ヴィーちゃんの関係しているベーメン王は十五年ほど前に亡くなって、当時十歳だった嫡子がベーメン王位についているわ。あなたの異母兄に当たる人になるわ」


 へー へー 兄が王様か。でも、サラセンに迫られているんだよね。風前の灯火じゃない、我が兄上は。



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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

ヴィーの友人ビータとプルのお話です。後編!年末年始集中投稿中☆

『就活乙女の冒険譚』 私は仕事探しに街へ出る


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