5-06 コボルドと結束を固め、私は『灰色乙女団』設立を宣言する
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5-06 コボルドと結束を固め、私は『灰色乙女団』設立を宣言する
少し駆け足だったが、生き残りのコボルドとリーダーのヴォルフには継続して採掘と鍛冶を行うように命じた。
『あなたたちは、我が「灰色乙女団」の大事な戦力です』
『オオ、我ラハMY LORDノ戦士トシテ受ケ入レラレタワケデスネ!!』
『『『Wooooo!!』』』
現在、団員の私以外全員人外……なお、私も人間かどうか自信がありません。
ということで、ここは大切な拠点なので、出来る限り採掘と鍛冶を行い、ベーメンソードが自作できるように頑張って欲しい。え、だって、私が使うとポッキリ折れちゃうからね。消耗品が自給できると有難いじゃないですか。
ベーメンソードは、コボルド達にも大変好評で、『トテモ戦士ラシイ』という評価である。出来れば、ガントレットや腹巻、簡単な兜も自作して欲しいが……難しいな。だって、手がワンコだからね。
とは言え、何匹かはゴブリン狩りで手が進化しているらしく、人間っぽい形になったと喜んでいる。周りは『俺モモットごぶりん殺ス!!』と息巻いているのは微笑ましい。あんま頑張ると、冒険者とかち合うので、鉱山周辺だけにしておいてもらいたい。
『くれぐれも人間相手に攻撃しないでおいてね。鉱山の周りで人を見かけたら、まずは様子を見て、近づいてきそうなら鉱山内に逃げ込んで枝路に隠れるように。襲えば、討伐の冒険者が来るからね』
『『『YES MY LORD!!』』』
百から三十まで数が減ったのは痛かったが、その分精鋭になればいいかと自分を納得させる。そんなに、沢山魔銀もいらないしね。三十は傭兵団としたらそこそこの規模だと思う。
因みに、戦棍棒はヴォルフに指導者の証として授与することにした。『棍棒』は権威の象徴とされることが多いので、丁度いいと思ったんだよね。ちょっと、棘多めだけど☆
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ゴブリンの討伐の宴を催した後、何日かかけて、これから暫くコボルドたちが行うべき事と、鉱山を守る術を整理することにした。だって、このまま数が減っていったら鉱山から採掘とかできなくなっちゃうじゃない?
一つは、坑道内を徹底して要塞化することだ。立体的な迷路に作り替え、集団で坑道内に侵入してきたとしても少数で分散された状態で各個撃破できるように改造していく。
「この階段状の上り口の所で待ち構えて、長柄で突き落とす……とかかな」
「その上がり口の先に、少し堀のようなものを入れておくと、駆け上がってもそのまま前に進めないので、良い足止めになるのではありませんか?」
「採用!!」
といった形で、坑道を土魔術で補強しながら要所要所に迂回通路や隠れる凹みなどを設けて、意図的に通路の狭い場所やL字型の場所を設けて側面を衝けるように通路を改造した。
ビルの剣が仕舞われていた宝物庫は改造して武器庫に変更、それから、坑道とは別の脱出通路も設けることにし、かなり先に出口を設けることにした。これなら、そう簡単には場所が特定できないだろう。勿論、非常時に簡単に壁抜きできるように、現状ではふさがっている状態です。
ベーメンソードを作れる炉も存在するので、鉄の棒から剣を作る課題を与えて、後は試行錯誤してもらおうかと思う。ゴブリンとの戦いで与えた剣はそのままコボルドたちの物とし、鉄の延べ板を先ずは作るところから始まるだろう。これは、比較的容易にできると思える。
それを鍛造し、一本の鉄の板として剣の形に加工していくのは……それなりの手間と時間がかかる。とは言え、鍛造するには手間暇もかかり、その鍛造する工程がコボルドたちの良いトレーニングになるかもしれない。
などと、私は前向きに考える事にした。
この場所では水車が使えないので、動力式の鍛造機械も据え付けることが出来ない。製鉄も、高炉を設置すれば明らかに周りからわかってしまうだろうし、そもそも、コボルドに高炉の管理ができるとも思えない。
やはりこれは、魂込めて手作りしてもらうしかないかもしれない。そうしよう。
ん……もしかして……このコボルド達の作った質の悪い銑鉄を土魔術で改善できるかもしれない。ええ、できますとも。
「土の精霊ノームよ我が働きかけに応え、我の欲する鉄の姿に整えよ……『精錬』」
手元にあるベーメンソードの素材と同質の金属の板が……できました。これ、只の鉄鉱石からだとかなり魔力と術の精度が必要だけれど、粗鉄であれば、目標の素材の質が分かるものが手元にあれば……比較的容易に寄せることが出来るみたい。
ヴォルグたちを呼び寄せ、この鉄の延べ板を剣に加工できるかどうかを確認する。
『難シイデショウガ、必ズヤアノ剣ニシテミセマス!!』
やる気はあるみたいなので、後は技術がついて来るかどうかの問題も
あるよね。多分。
鉱山の要塞化、そしてコボルドのコボルドによるコボルドの為の剣作りがいよいよスタートすることになります。
「それと、コボルドがやってきたら、もれなく仲間に入れておきなさい。減った仲間を補充する事も命じておきます」
『『『YES MY LORD!!』』』
半分は妖精なんだから、その辺から湧いてきて欲しいものです。
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「灰色乙女団」としばしの別れを告げ、私とビルは、メインツに向かいます。一先ず、ビータとプルに会い、この先の事について話をするつもり。
それに、お宝発見武器屋も様子見たいしね。ベーメンソード、追加で在庫が増えていませんでしょうか。あと、ヴォージェとバゼラードも欲しいところです。 馬で移動する事数日……護衛ではないので、かなり早いペースでメインツに到着することが出来ました。宿は『黄金の蛙亭』だね。
魔女のトーテムは『カエル』と言われる事もあるんだけれど、多産の象徴であり、カナンの南の地では、女神ヘカトの神聖な「カエルの護符」に「私は再生である」という言葉が刻み込まれているのだという。
御神子教が広まる前の時代の、カエルに対する一つのイメージなのだろうね。カエルは、オタマジャクシから変態するために、復活のシンボルと考えられたので、御神子教も最初の頃は再生の象徴として認めていた時代もあるのだそうです。
え、今? 火炙りになりたい方はそういうと良いです。
「これはオリヴィー様御無沙汰しております。お泊りでよろしいでしょうか」
「はい、二人部屋でお願いします」
「畏まりました。メイヤー商会には先触れをなさいますか」
「いいえ、今日の今日では失礼ですので、到着したことだけお伝えして頂ければと思います」
「承知いたしました」
たまには塩漬けの魚以外にも食べたいんだよ私も。
久しぶりのメインツ、そして久しぶりのお風呂に入り、私の機嫌は急速に回復しました。やっぱり、行商人とか遍歴商人って大変な仕事なんだろうね。都市を築いて店を構えるのも道理だね。
消耗品を買いなおし、部屋では採取しておいた薬草をつかってポーションを作り溜めたり、少しゆっくりして何日か過ごしてアポを入れてメイヤー商会を訪れる事にした。
メイヤー家も準備するからということで、四日ほど後に伺う事になったのです。魚の塩漬け貰ってくれるかな?
顔なじみの武具屋では「こんなの欲しいでしょう?」という事で、樽に山盛りの中古の武器を集めてくれていたようで、私は感激です。
「はは、この街でそう言ったものを処分して多少の資金の足しにしようとする者が少なくありません。今までは買い取っても売る相手がいませんでしたのでお断りしていましたが、オリヴィさんが買われるのでしたら……ということでお引き取りしています」
顔なじみの店主がそう答える。コロニアや他の都市では当然、程度の悪い中古の武器を持ち込んでもお金にはならないでしょうし、ここはそういう意味では、旅の資金に困って手放す人や、ここに来るついでに処分するような人が多いのだろうね。大司教座には色々な街から人が訪れるものだから、
そうした街では武具屋がなかったりするので、処分するのに鍛冶屋などでは買取も鉄の値段にしかならないからね。
「これ全部で……おいくらでしょうか」
「……大銀貨一枚でいかがでしょうか?」
大銀貨一枚と言えば銀貨十枚の事で、銅貨千枚になるわけです。まあ、でもこの樽一杯のボロい剣や槍先が私の魔術でリフレッシュされて、十倍位の価値になります。金属以外の部分は直さなければならないけどね。
「ではそれで」
「これからも買取を続けた方が宜しいでしょうか」
「ええ。下取りがあるという事で、このお店を利用する方も増えるでしょうから、お互いに良い結果になると思いますので」
「左様でございますね。では、これからも御贔屓に願います」
他の武具屋で武器の無料回収はしているところがあったけれど、下取りを謳っているのはこのお店くらいだろうと思う。私がボロい武器を買いあさっているからその辺り、大々的に始めたようだね。
そういえば、この中に……弓銃とか入っていたけど、どうしようかな。修理出来たらビータに譲るのもいいかもしれないね。冒険商人するのに丸腰ってわけには行かないじゃない?




