4-19 城塞を蹂躙し、私はけばい『姐さん』と対面する
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4-19 城塞を蹂躙し、私はけばい『姐さん』と対面する
尾根沿いの城塞は、守りやすいのだろうが、一度門が突破されると、次々と抜かれる傾向がある。それに、逆襲もしにくい。反対の門から出て外を迂回するにも限度があるから。
「風の精霊シルフよ我が働きかけの応え、我の欲する防壁を与え給え……『風壁』」
飛び道具対策です。狭いし死角が多いから回避するのも面倒だし。押し通る!!と変な鹿の野獣に騎乗して突撃したくなるよ。
次々に首を刎ね飛ばされる仲間の姿を見たオーガ兵たちが、長柄や弓銃を持ち出して私たちを拘束し、狙撃しようとしている。そうはいかない。
「動きを止めろ!!」
「簡単に殺すなよ!! 姐さんにどやされっぞ!!」
『姐さん』がどのくらいの存在なのかがよくわかる。最優先はそいつの意思だ。有象無象に私とビルを止めることが出来るはずもない。当社比150%でも、元は破落戸に過ぎない。1500%でも微妙だ。
「あとで二度手間だから、最初から首を落してちょうだい」
「「「「なっ!!」」」」
ビルは私の意図を明確に理解したようで、無言で頷きながら、ヴォージェの先端で一匹のオーガの首を刎ね飛ばす。ドサリと首から下は反動で仰向けに倒れ、首をもいだ後の蟻のように暫く手足をばたつかせている。え、私はしてないからね!! 男の子が良くやるじゃない? 足全部抜いてみたり、そういうの、見たことない?
あ、良いこと考えた☆
「それそれそれそれ!!!」
オーガの耐久性チェーック!! 人間なら、手足が全部ない状態で放置すると、ものの一分も持ちません。オーガなら……何分持つでしょう!!
『Gwaaaa!!!』
「て、てめぇ!!」
「ひ、人の心がねぇのか!!」
いや、あんたら、人殺しの人喰い鬼じゃない。何っちゃってるのかな。
「人喰いのケダモノが何言ってるのかわかりませーん」
「その通りですね。では、私も!!」
ヴォージェで肩から先を斬り飛ばし、返すところを左右の脚を切り飛ばし、どさっと胴体と頭だけのオーガが地面に落ちる。
『Yaaaaaa!!!』
「大袈裟でしょう。どうせ、生きたままの人間……食べたことあるんでしょ?」
「「「……」」」
どうやら図星らしい。なら……手足もがれるのも……仕方ないよね。
もうニ十体くらいは倒したかと思う。オーガは手足が切り離された場合、再生しないようである。切り傷ぐらいは修復できるみたいだが、体から離れた手足を継ぐことは自分自身ではできないようだ。実験終了。
「首刎ねて」
「承知しました」
死にはしないが、蠢いていて気持ち悪いので首を刎ね飛ばしておく。血の臭いがむせる程だけど……出てこい吸血鬼。
「そこまでだ!! 抵抗すると、このガキの命はねぇぞ!!」
ボロボロの貫頭衣を身に着けた十歳になる前くらいの少年が一匹のオーガ兵に引き摺られている。なにそれ、どういうこと?
「ぶ、武器を捨てろ!! このガキ殺すぞ!!」
私はビルに目線を向けると、頷いてくれた。以心伝心だ。
「どーぞー」
人質を取ったオーガも周りの仲間も「へっ」て顔をする。
「わ、わかって『分かってるに決まってるじゃん。僕、僕はどっちみち助からないよ。今死ぬか、後で喰われるかの違い。だから、諦めてね!』……」
だってそうじゃない。私たちが騎士で、騎士対騎士の戦いなら……人質自体ナンセンスだけど、身代金目当てで殺されないかもだけど、この場合、関係ない子供を人質にして武器を捨てる意味がないよね。
「私たちに勝てないって自分たちで認めちゃったね☆」
「とんだ腑抜けた傭兵です。オーガの風上にも置けません」
「止めてよビル。こんな臭いのが風上にいたら臭くってしょうがないじゃない」
オーガが口々に「臭くねぇ」と騒いでいるが、そんなことはどうでもいい。
『砂塵』
一瞬の目潰し、でもそれで十分。人質を抱えたオーガの背後から首を斬り飛ばし、ビルはその背後のオーガ共の首をヴォージェでポンポンと斬り落としていく。
「その辺の隅っこで大人しくしてなさい。明るくなったら連れて行くから」
「……う、うん……」
何だか……股が汚れているようだけど……気付かないでおいてあげる。
三番目の郭は恐らくはメインの建物だろう。ゲートもしっかりしているから、簡単には中に入れない気がする。
「私、飛ぶけど、ビルはどうする」
「ヴィーが中に入って混乱しているすきに、門を斬り落としますので、ご安心ください」
「そう。じゃ先行くね!!」
『疾風』
ある程度の高さまでなら、この魔術で体を浮かせることが出来る。この高さの塀くらいなら余裕だよ。
私とビルを塀の上から狙おうとしていた弓銃兵の首を魔銀剣で跳ね飛ばす。やっぱ、特注は良いわ。スパスパ斬れるもんね。魔銀剣最高!!
壁の上から、仕留めたオーガを中庭に蹴り落とすと、呻き声や叫び声が聞えてくる。まあ、もう半分くらいは仕留めているのかな。
『しっかりおし!! たった二人じゃないか!! 三人一組で同時に囲みな!!』
魔力の籠った声。これは……沈静化の威力を秘めている。普通は、魔力持ちの吟遊詩人が楽器の演奏に合わせて唱えるもんだけど、強引に魔力を込めて叩きつけたみたい。元々、心服しているオーガ兵たちだから、性格的にも相性的にも効果が大きい。私が同じことをしても多分効果がない。
「そんなところで一人じゃ寂しいじゃない? こっちに来て妾と酒でも飲もうじゃないか」
年増と酒飲む趣味は有りませんわ。それも多分……吸血鬼でしょ。因みに、吸血鬼は同性愛ありなので、女の吸血鬼だからと言って女性が安全というわけではありません。両刀使いなので、私とビルの両方を狙う可能性もあるんだよ。
「美少年と美青年、黒目黒髪と金髪碧眼……両方いいね」
「私、女ですよー」
「それもおつだねぇ」
OTZじゃないんですね。
中庭に降りた私は、門を斬り落として中に入ってきたビルと、オーガ兵が十数人と対峙しています。何故なら……
「私の名前は『エリザ・ロンナ』。この傭兵団の幹部をしている」
「……首領さんはどなたですか……」
こそっと、エリザのとこで手を挙げる一際デカい男がいる。こいつは……犬歯が飛び出している。明らかに吸血鬼っぽいんですけど。
「アレン、先ずは私が交渉するから待っておいで」
『Guuuu、テシタ殺サレタ……許スノカ……』
首領のアレン氏はオーガ化進捗率が高いのか、狂戦士なのか分からないが、危険な雰囲気を持っている。ビル並の体格、偉丈夫だろう。
「二人とも、永遠の命って興味ないかい?」
吸血鬼は不老であり不死だが不老不死ではない。老いない故に寿命による死亡はないが、首を斬り落とせば余程の高位の存在でない限り死ぬと先生は言っていた。
それに、高位の吸血鬼の僕でなければかなり吸血鬼としての存在がショボくなる。霧に姿を変えたり、再生したりできない。
「興味はありますが、貴方には私を不老不死にする事は出来ないのではありませんか?」
「……言うね。時間を掛ければ成長するから、何とでもなるよ。沢山、魂が必要ってだけでね」
だがしかし、この御姐さんは間違っていると思う。何故なら……
「私、女ですよ?」
「……へ……美少年じゃないのかい!!」
「生まれた時から女です。匂いとか……分からなくしてるんだった。ほら!」
風の魔術で伝わらないようにしているからね。
『Ureeeee……乙女ノニオイダaaaaaa!!!!!』
こうなるの分かっているから、内緒にしていました。それに、そこのおばさんは見た目は若くて美人だけれど腐臭がする。死体の臭いというのかな。まあ、オーガもするけど、強烈にします。
多分、魅了された男には『芳しい香り』になるんだろう。腋臭って、人によってはフェロモンになっているみたいだからね。風呂に入らないと、ただの臭い人だったりするけど。
「な、なら、そっちの金髪は……」
『貴様!! 我が炎の精霊であることも分からんとは、とんだ下賤な吸血鬼だ!!』
人化を解くと装備が燃えちゃうからやめてねビル……と思っていると、一瞬にして剣の姿になり、鎧がその足元であった場所に落ちる。
さあ、ここからが大立ち回り本番です。




