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3-15 野盗は討伐され、私は黒騎士をブッチめる

3-15 野盗は討伐され、私は黒騎士をブッチめる


 森の中で、三人の弓兵が天に召されつつある間、私は再び、疾風を身に纏い、如何にも傭兵っぽいイカした装いのおっさんたちを思い切りベーメンソードで斬りつける事にした。いや、峰討ちだよ☆ 資源は大切にね。


「なっ、どこから来やがった」

「コロニアからだよー」


 ゲッと呻くおっさんの脹脛にベーメンソードの刃のついていない方を叩きこんだんだが……


「があぁぁぁぁ!!」


 この剣、先っちょ両刃じゃん。斬れちゃったよおっさんの脹脛。ごめんね、ワザとじゃないんだよ。


「なっ、こいつを先に始末しろ!!」


 ハルバードを傭兵剣カッツバルゲルに持ち替える者二人。そのまま向かってくる者が二人、残りの一人がこのチームの指揮官らしいわね。


「この野郎!」


 私は女です。ええ、見た目だって女っぽいよね。男装してるけどね。ハルバードを思い切りベーメンソードで叩き返す。


「があっ!」

「何やってる! こんな餓鬼に……グハッ」


 お、今度は、ちゃんと峰で打てたらしく、剣持傭兵が脇腹を叩かれ跪く。鎧越しでも強烈なんだよ私の打撃はね。メイスの方が良いかもしれない。


 跳ね飛ばされたハルバード持ちは手が痺れているのか、握れないようでハルバードを取り落としたままである。もしかすると、手の甲か指の骨でも砕けたのかもしれないね。残念だなー


 あっという間に三人を無力化した私に、三人は恐怖を感じているのか、目が完全に往っちゃってる感じがする。


「さて、死にたい奴から前に出なさい」

「なっ、テメェ!!」


 カッツバ剣士が必殺の脇構えから斬り込んでくる。剣の間合いは見えている。だって、お揃いなんだもん。この傭兵剣。だから、バックステップしてから、喉元に剣の柄を叩き込み、顎を跳ね上げられた傭兵が受け身も取れず真後ろに頭から叩きつけられる。酷いね、可愛そうだねぇ。


「をぉぉぉおおぉぉ!!」


 少年から青年になりかけの雀斑だらけの気の良さそうな顔の男が、ハルバードを構え突っ込んでくる。気の良さそうな奴でも、略奪凌辱はそこかしこでやってんだよね。顔が善良そうなだけに質が悪い。


「がっ」


 面倒なので、首に切っ先を入れ斬り倒す。まあ、一人ぐらい……いや、既に四人首を斬っているんだが、誤差範囲だよね。どうせ、全員お持ち帰りは無理だもんね。


「さて、降伏するか首を刎ね飛ばされるか今すぐ決めていいよ」

「……こ、降伏する……」

「そ、賢明ね。じゃあぁ……

土の精霊ノームよ我が働きかけに応え、我の欲する鋭さを与え給え……『尖鋭(burnishen)』」


 生き残ったおっさん含め。全員が身動き取れないように、土の槍で雁字搦めにして、一先ず武器を手放すように即す。


「……聞いてねぇぞ、こんな凄腕の魔術師が護衛にいるなんて……」

「当たり前じゃない。ギルドにも教えてないもの。どこに裏切り者がいるかわからないからね」

「はっ、違いねぇ。あんた、若いのに俺たちよりシビアなんだな」


 そうなのよ、好きでシビアなんじゃないやい。私は、ド=レミ村で普通に妻と母をやって孫に囲まれて死ぬ予定だったんだよ!! 許さん王国の王女とやら!!


 さて、嘘つき騎士と、後衛の騎乗の傭兵をどうにかしようかな。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 ドリフト馬車に近寄ると、既にベンとジョンが裏切り者の騎士を縛り上げ武装解除していた。


「お疲れ様、裏切り者の騎士様。前の傭兵は全員殺すか捕らえましたので、この後、後ろの騎乗の傭兵を捕えてきますね。お話は後程」

「……」


 忌々しそうな顔をしているので……ブーツのつま先であごを蹴り上げて差し上げましたわ。


「お、おい」

「大丈夫です。命さえ助ければ、お金になりますから。顎が割れていようが、腕一本欠けようが回収可能であれば金になりますから。もっとも……」

「しらを切られたら意味がないか」


 その通りです。今回の失敗が、このオッサンの独断で主人を盗賊に売った事にされる可能性が高いかもですねー。





 既に異変を察したのか、予想通りの騎士姿の騎乗の賊四人は、引くタイミングを計っているように見える。そうは行くか!


「土の精霊ノームよ我が働きかけに応え、我の欲する土の砦を築き給え……『土壁(barbacane)』」


街道を塞ぐように、土の壁を黒騎士どもの周りに形成する。馬で飛び越えるにはちょっと高さがありすぎるかなー


「ヴィ、助かった!」

「既に、前方の賊は平らげられましたか」

「そうだね。馬車を強引に進めさせていたパルドゥルも拘束しておいた。こちらに犠牲はない」


 賊は……まあ、半分ぐらい死んじゃったかもね。その話を聞き、動揺が隠しきれない四人の黒騎士。フェーデか、フェーデするか?


「じゃあ、頑張ってここで馬に乗っていてちょうだい。捕り方をひとっ走り連れてくるからさ」

「……いや、出来ればこちらの手で済ませたいのだが……」

「それはできない相談ね。馬車の護衛に関する事なら指示を聞くけれど、捕まえた賊の処分は、こっちの権利でしょ? 口出し無用。それに、あんたの相方と主人の元に向かいなさい」

「そ、そうだな」

「あと、尋問は許可するけれど、捕えたのはベンだから勝手に殺すのは越権だから、注意してもらえる」

「承知した。質問だけでもありがたい」


 アルノーは私たちに軽く頭を下げると、馬車にむかって走り去った。さて、こいつらどうするかな。


 私は土壁の上に乗り、声を掛ける。


「さて、他のメンバーは拘束するか殺したけど、あなたたちはどっちがいいか選ばせてあげる。死ぬか、拘束か、どっちがいい?」


 ウイングドスピアのような騎馬槍を持った一人の黒騎士が「お前たちを殺して、ここから抜け出す」と、槍を繰り出してきた。うん、言葉で通じなければ拳で伝えるしかないみたいだね。


土槍(terrahasta)


 馬の周りに、土の槍が張り巡らされ、身動き一つ取れなくなる。そして……


疾風(sturm)


 壁の上を蹴り、スピアを繰り出した騎士の脇腹を思い切り蹴りつける。


「があぁぁ」


 土槍の上に蹴り落とされ、あちらこちらに穂先が突き刺さりながら崩れ落ちる土の槍。致命傷だが、問題ない。多分。


「一人一人蹴り落としてもいいんだけど、どうする? 殺されたいの?」


 三人は兜越しに目を合わせ相談するかのように視線を交わす。


「降伏した場合の条件は如何に」


 さて、どうするかね。奴隷って確か金貨三枚から五枚くらいの価値なんだよね。その辺りで探ってみるか。


「身代金の相場……というところで手を打つつもりだけれど。あ、勿論、即金でね」

「金貨五枚というところか……よかろう」

「!!」

「いや、まて!!」

「仕事をしくじって命を惜しんでも仕方がないとでもいうのか。それはそうかもしれんが、戦場で、また稼げばいいだろう。戦争は早々無くならん」

「「……確かに」」


 恐らく、騎士が三か月も戦えば、その倍は貰えるはずなのだ。何しろ、装備を整えて騎乗で戦闘できるようになるまでには年月がかかる。故に、戦場での傭兵騎士には需要がある。


「この場で解放してもらえるのか」

「そうだね。その代わり、装備の分は買い戻ししたことにしてもらうから、身代金に上乗せしてもらおうか。まあ、一人金貨一枚でいい」

「……わ、わかった。こちらも新しく商売道具を揃えるのは大変だから……それで構わない」


 という事で、金貨十八枚のボーナスゲットです。


 立ち去る前に、誰が今回の襲撃の指揮を執ったのかを確認すると、ハルバード持ちの中にいる男だという事が判明する。


「ハンスという槍持ちだ」

「あの、固太りの目の下に大きな傷がある男?」

「そいつがハンスだ。俺たちは、戦場で知り合って今回の件で誘われただけで、あまり詳しい事は聞いていないんだ。騎乗の騎士を捕えるか、出来れば殺してほしい……そういう依頼だと聞いている」


 つまり、アルノーは殺されることが前提だったわけか。その理由を確認せざるを得ないだろう。




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