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20 受付嬢は次を憂い、私は次の事で頭が一杯になる

誤字脱字訂正していただき、ありがとうございます。

また評価いただき、誠にありがとうございます☆

ブックマークしていただきましたならば、しばらくお付き合いください。


*今日は週別ジャンル別一位となっております。評価・ブクマして頂いたおかけだと感謝しております。


20 受付嬢は次を憂い、私は次の事で頭が一杯になる


 人を遥かに上回る力を持ち、魔術を扱い、傷も瞬く間に回復し、夜目が利く。これって……吸血鬼ヴァンパイアみたいですよね。吸血衝動はありませんが、最近は何だか自分が人間ではないような気がしています。


 普通に結婚して、どこにでもいるちょっと美人の妻であり母になりたかっただけなんですけれど。そこ、美人を否定しない!


 あ、でも、太陽の光を浴びても灰にならないし、ニンニクを使った料理も好きです。あと、行者ニンニクだって採取しますし、問題ありません。吸血鬼じゃないけど吸血鬼並みの身体能力って何なんでしょうか。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 ポーション頼みで都会生活を満喫することができるようになった私は、教会に奉仕活動へ行き、念願の代書屋さんでも週に何日かお手伝いをさせてもらえるようになりました。


――― ほら、教会だって怖くないよ! 十字架だって大好き! ロングソード最高☆


 やっぱり、貴族の領主様からの礼状とか、冒険者等級や奉仕依頼の達成とか、信用になったみたいで、割といい条件で仕事をさせていただいています。包帯洗いだってへっちゃらだよ!


 なんだか、ただ働きを強要するような土木系の依頼がちらほらギルドの依頼票に貼られていたりするのだが、誰も引き受けません。星二つは指名依頼されないし、指名されてもお断りします。受けたら依頼主以外は損するから受けるわけがない。私も人に恨まれたくないし。普通に、土木ギルドに頼めばいいんじゃないかな。


 毎日顔を出す冒険者ギルド。アンヌさんが顔出さないと怖いから……いえ、冒険者としての当然の心構えですよ。


「ヴィーちゃん、今日は依頼受ける気あるの?」

「難しいところですね。星二つだとパーティー向けの依頼ばかりですし、今はこの街で仕事をしたいので、共同依頼も『眞守』以外とは組みたくありませんし」

「そうよねー、あてにされても困るものねー」


 噂の新人君がイメージよりずっと小柄で女の子のような「娘の男」であることが判明し、星二つのパーティーからの勧誘が鬱陶しいのだよ。フリー・ランチ狙いの臭いがプンプンするのですべて断っている。


 お金ならポーションの販売代金で楽に稼げるし、討伐の依頼なんて受けるだけ時間の無駄なのだ。緊急性があれば別だが、そんな緊急依頼は星二つのパーティーにはいかない。足手纏いなのだよ君たちは。


「あの二人に鍛えられてるんだから、星二つじゃ無理だよね」

「……ですか。アンヌさんと先生と師匠は昔、同じパーティーだったんですよね?」

「そうね。もう十五年くらい前だけれどね。あの二人は引退して自分の本来の仕事に戻った。私は戻る場所もなかったので、そのまま冒険者を続けてギルドの職員になって引退した。そんな感じ」


 それなりに有名であっただろう三人もやはり、冒険者として冒険を続けるのは大変だったのだろうと思う。何故やめたか気にならないかって?気になるに決まっているでしょ。でも、アンヌさん自身が口にするまではあえて聞かないのがマナーだと思う。


「錬金術ギルドから、ポーションの製作者に関する問い合わせが来るけど、どうする?」

「錬金術ギルドに関わって、コロニアに行くにあたって何かメリット有りますか?」


 錬金術のギルドは、派閥が細かく分かれており、かなり街々で閉鎖的な存在なのだという。故に、冒険者ギルドのように一枚岩ではないということから、この街に腰を落ち着けて活動するのでなければメリットはなく、私の年齢的な問題もあり、手足として利用しようと考えているのではないかとアンヌさんは言う。師匠に習ったことを自分なりに考えて研究するなら、街のギルドに入るメリットはない。ポーション作れないような錬金術師なんだし。


 そもそも、私が狩人しているのは、「より良い素材を手に入れるには、自分自身で採取するのが一番」という先生の方針に則っている。本人もそれが目的で冒険者を一時務めていたわけで、何の矛盾もない。


 人を当てにするくらいなら、自分で採取しろ下等錬金術師が! というのが街に住む錬金術師に対する先生の評価である。





 冒険者として討伐依頼を受けるのなら、魔力を感知したりする能力があると便利なのだが、残念ながら師匠も先生もそれを持っていなかった。そもそも、狩りの獲物は魔力の無い獣だし、錬金術にはさほど魔力感知は関係ないから持っていなかったのだ。


 身体強化系は何となく自然に使えているから力持ちなのだと思う事にし、この辺りの能力を磨かないと、先々困るかなと勝手に思っている。


 魔力を感知する能力は、なんとなく使用しているベテラン冒険者もいなくはないが、それは「嫌な感じがする」とか「殺気を感じる」というレベルであり、どの方向に距離何mで何匹どのような魔物がいるかとはっきりわかるわけではない。


 そこまで分かる冒険者は星四つ以上の「超一流」の冒険者レベルであり、残念ながらこの街に所属する冒険者にはいないのだ。帝国の中央の大都市にいる……らしい。凄腕冒険者は、様々な指名依頼を高額の依頼料を受けこなしているので、拠点を構えてはいるが、国内外を移動している時間が圧倒的に多いので、必ずしもその街にいるわけではないという。アンヌさん情報です。


 この街を出て、自分のルーツについての情報を掴みたいし、錬金術師としても冒険者としてもステップアップしたいのだよ私は。


 魔法の袋の中に入っていた私と一緒に村外れで発見された女性の持物の中にあった、いくつかの書状らしきもの。蝋封のされた書簡は開封するべき人を指定してあったので、中を確認してはいない。


 その蝋封は梟の姿を形どった紋章をしており、宛名は『オイレスブルク』と読める公爵か伯爵らしき君主の名前。帝国は伯爵も公爵も『君主』と称されることが多いので爵位より家名で判断すべきだろう。


 アンヌさんに聞いたところ、自分の知る範囲でその家名を名乗る貴族を帝国周辺では聞いたことが無いというので、読み間違いなのかもしれない。私の関心は、この家名の貴族を探す事も加わっているのだ。





 居心地のいい街であり、友人はともかく知人はそれなりに増えた。確かに、過去、友人と呼べるほど親しい人がいなかったのでどのレベルでなのかは正直自信がありません。とはいえ、教会のシスターたちとも仲良くして戴き、ギルドの職員さんやゲルト君を除く『眞守』の皆さんとは仲良くしてもらっている。


 代書屋さん経由で、商人さんとも顔が繋がり行商人の免状もとることができた。保証人はアンヌさん。冒険者ギルドのサブマスなら問題ないという事でお願いした。商業ギルドにおける行商人は別名『冒険商人』とも呼ばれる冒険者兼商人であり、自分の身は自分で守りつつ、普通の商人が出向けない僻遠の地にも足を運び、普通の商人では手に入れることのできない物を仕入れ、オークションなどで高値で販売することで一攫千金を狙うという個人的には冒険者7:商人3くらいの比率の職業だと思っている。


 そのうち、海に行って海水から魔術で塩を大量に取り出して、壺に入れて行商しながら、色々な僻地を訪問してみたいと考えている。塩は専売の商材であり、勝手に売り買いできない物なのだが、錬金術の素材として扱う分には課税されない。ほら、私、もぐりの錬金術師だから☆


 錬金術の素材のつもりで譲ったら、調味料に使っただけなんだよ。ね、未必の故意ってやつだから問題ないよね!


 流石に壺は自作せずに、お店で買うつもりだけどね。魔法の袋に入れて行けば重くもないし、嵩張りも劣化もしないから問題ない。


 こうして、私の頭の中で、塩の密売でビッグに成り上がる冒険商人ライフが幕を開けているのであった。




∬∬∬∬∬∬∬∬




 トラスブルでの生活も一年が過ぎ、私はそろそろ街を離れ、帝国の中を少し旅しようと考えていた。旅の資金は、ギルドでの依頼と主にポーションの販売で稼ぐことができた。もう、引退して余生を過ごせる程に。


 とは言え、私の存在も段々隠せなくなっており、稼いでいることも知られているので、何らかのアプローチを様々な存在からされそうになっているので、そろそろ潮時と言う奴なんだよ。


 街を離れるにあたり、教会のシスター・テレジアに暇乞いをすると、行き先を聞かれたので帝国内の街を廻って行商をするつもりだと答える。すると、幾つかの街の修道院の知り合いに紹介状を書いてくれるという。私は有難くその紹介状をいただく事にした。


「街を訪れたなら必ず教会で礼拝を欠かさないようにね」

「もちろんです、シスター・テレジア」


 とは言え、帝国は二つの宗派に別れて争っているので、改革派の街では教会には近寄らないつもりなのだが……この街も最近、改革派の貴族が増えているので少々空気が良く無く感じるのは、私が田舎者だからなのだろう。


 確かに、シスターや司祭様は抹香くさい事を言うけれど、文字も読めない道徳心も欠けた貧民を人の道へと導くために分かりやすい言葉で説明してくださっているのであって、教会も組織を守るために金だって集めなきゃならないんだよ。力無き正義なんてのは存在しないんだからさ。


 そもそも、教会を否定するのはポジショントークだからね。そんなことは庶民にはお見通しであって、所詮、教会と貴族の主導権争いの方便なのだから。目の前の貧乏人を助ける教会に一理あると私は思う。仕事もくれるし。





 そして、アンヌさんと別れの会食をした翌日、魔法の袋一つに全財産を詰め込んで……沢山入るんだけどね、行商人らしく背負子にそれらしい見せ筋商品を括りつけ、私はメインツに向かう商人の隊商護衛として街を離れることになる。


「ヴィーちゃん、行ってらっしゃい気を付けてね」

「ええ、アンヌさんもお元気で。この手紙、先生と師匠にお願いします」


 わざわざ見送りに来てくれたアンヌさんと別れの挨拶を済ませると、私の新しい人生のスタートを切ったトラスブルの街を離れるのだった。まずは、メイン川を河口まで行ってみるつもりなんだよ。海が見たいからね☆



Fin 




冒険商人そして自分のルーツを探す旅に出るオリヴィの戦いはまだ始まったばかりだ!!!


お付き合いいただきありがとうございました。続きが気になる方は、ブックマーク・評価をお願いします。


【作者からのお願い】


「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。


よろしくお願いいたします!



本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。

『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える : https://book1.adouzi.eu.org/n6905fx/

下部のリンクから移動する事も出来ます。


*sinoobi.com様:『小説家になろう』に投稿されている小説を、いろいろな視点で集計したランキングサイトにてセレクト週刊一位を戴き少々驚いております。控えめに言って嬉しいです。

http://sinoobi.com/novel/rank_sinoobiweek.html


 

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本作とリンクしているお話。王国側の50年後の時間軸です。 『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える

ヴィーの友人ビータとプルのお話です。後編!年末年始集中投稿中☆

『就活乙女の冒険譚』 私は仕事探しに街へ出る


― 新着の感想 ―
[一言] 「妖精騎士の物語」共に、楽しく読ませていただいています。いつも歴史ジャンルの作品ばかり読んでいたのですが、貴作品に出会えて、ジャンルに拘らないで色々な作品を見るきっかけになりました。また、初…
[一言] 面白かった。 何だか独白が、オッサンくさいヒロインにツボった。
[良い点] ロードムービー的なのは好きなのでそうなったら良いなぁと。 [一言] >未必の故意ってやつだから問題ないよね! いや、それだと有罪ッス。
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