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俺の賃貸1DKボロアパートの部屋が『石の中』に設定されてしまった件  作者: やすピこ
第二章 あっちの世界の人達と、俺の上司とお隣さん、あともふもふ

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第27話 俺は一体何を見せられてるんだ?

「はいはい、ストップ出雲課長。とにかく落ち着いて下さいよ」


「なぜ止める保くん! 君も白神一族の者なのか? 見損なったぞ。君は服装の趣味は悪いと思っていたが部下として信頼していたのに」


「服の趣味は関係無いでしょ!」


 この上司、俺の私服通勤の姿を見てそんな風に思っていたのかよ。

 ちょっとショックなんだが。

 くそっ、けどここで言い争いしても泥沼だ。


「取り敢えず落ち着いて下さい。ナニと勘違いしてるか知りませんが、あれは旅が趣味のおじさんから貰ったちょっと珍しいだけのただ石ですよ」

 

「え? いや、しかし……あれは二年前の大戦の……」


 俺の説明で少しだけ冷静になった上司だけど、まだ動揺を隠せないでいるようだ。

 石に目を向けて眉間に皺を浮かべている。

 二年前の大戦って俺の知らない内に一体この世界ではどんな戦いがあったってんだよ。

 記憶を辿っても至って普通の日常しかなかったぞ?

 まぁいいや、お隣さんの言葉を借りて説得しよう。

 確か石に瘴気とか言うものを感じないとか言っていたよな。


「信じられないなら、え~と瘴気? とかを感じてみて下さい。ほら、何も感じないでしょ?」


 俺の言葉に相変わらず眉間に皺を寄せて玉を見つめる上司。

 数秒後、深く息を吐いたかと思うと、強張っていた身体から力が抜けていくのが分かった。


「ほ、本当だ……あれだけ放っていた瘴気がこれっぽっちも感じられない……」


 やっと勘違いしているってことを理解してくれたようだ。

 表情から緊張が抜けて呆けた顔になっている。


「おじさんが言うには、結構昔に外国で入手したものみたいですよ」


 ガラパンさんがアレをいつ入手したのかは聞けてないけど、あの話しぶりからするとこの玉の正体を探るべく色々調べていたっぽいし、あれだけ鉱物に執着を持っている人が簡単に手放したってことは、十分興味を失うくらいの時間が経っていると思う。

 だから別の物のはずだよ……多分。


「そう……なのか? 本当に?」


「まぁそういうこった。まぁあたしもさっき今のあんたとおんなじように、ちょっと焦っちまったけどな」


 お隣さんが呆けた顔の上司に向かって笑いながら言った。

 その言葉に上司は「すまない」と言って胸ぐらを掴んでいた手を放した。


「いや~しかし、あんたがあたしのことをそんな風に思っているとはねぇ~?」


 お隣さんがからかうようにニヤけながら上司に絡みだす。

 おそらく半泣きになりながらお隣さんのことを根はいい奴とか言ったこと対してだろう。

 俺としても普段職場では能面のような無機質な表情か、眉間に皺を寄せてガミガミと怒鳴る顔しか見たこと無いので、あんな人間臭い感情を持ち合わせているとは思わなかったよ。


「なっ! ち、違う。あれは九…び…、い、いや、かの大妖(・・・・)を復活させるような外道と思わなかったと言う意味だ。それ以上の深い意味はない!」


 なんか途中聞きたくない単語を言い換えたような気がするけど、そこは華麗にスルーするとして、お隣さんのウザ絡みに上司は顔を真赤にしながらしどろもどろに言い訳をしている。

 最初の仇敵のごとく一触即発の雰囲気を醸し出していたのに、今目の前で繰り広げられている光景はなんだか女子同士が仲良くじゃれ合っているようにしか見えない。


 …………それより俺は一体何を見せられているんだ?


「あの~二人共? 気が済んだら帰ってもらえますか?」


「え?」「え?」


 じゃれ合っていた二人が俺の言葉に全く同じ反応で振り向いてきた。

 本当に仲が良いなこいつら。


「いや、白神さんはどっかに取材に行くって言ってたでしょ?」


「あっ、忘れてた。っと、もうこんな時間か。そろそろ準備しないと新幹線に乗り遅れちまう」


 そう言ってお隣さんは慌てて立ち上がった。

 それを座ったままボーとした顔で眺めている上司。


「ちょっと、なに他人事みたいに見てるんですか。出雲課長も帰って下さいって」


「い、いや、私はキミの落ち込み具合が気になってだね」


「ほら俺を見て下さい。もう落ち込んでるように見えないでしょ? 月曜にはちゃんと出社しますんで、ほら帰った帰った」


 そう言って玄関へと促すように手をひらひらと振って上司に囃し立てる。

 会社じゃ出来ない扱いだけど、ここは俺の家だからね。


「ちょっと、他にも話が……」


「それも月曜に聞きますから」


「ま、まて……こら、押すんじゃないよ」


 バタン。


 何故か俺の部屋に居座ろうとする上司を半ば強引に部屋から押し出して扉を締めた。

 外からお隣さんと話をしている声が聞こえる。

 なんかなぜお隣さんが俺の部屋に居たのかとか聞いているけど、お隣さんは変なこと言わないだろうな?


「野暮なこと言うなよ。大人の男と女が一緒の部屋にいるってことは……さ」


「な、な、な……ほ、本当なのか? そんな……」


 バンッ!


「白神さん変なこと言わないで下さい! 出雲課長も真に受けちゃだめですよ! ただの隣人以上の関係じゃないですから!!」


 バタン!!


 ったく、お隣さんには困ったもんだ。

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