4-5 オフラインミーティング
本日は複数話投稿をしています
「日曜日の買い物に付き合う約束なんだけどさ、1人連れて行きたい子が居るんだけど良いかな」
帝は直前に告げられた命の言葉にOKはしたものの少々気落ちしていた。
せっかく姉とのデートだったのに、と。
ゲームで週に何度か一緒に遊べる様になったとは言え、やはり直接会える日は特別なのだ。
などと考えていたら命が来た。後ろに小さな女の子が隠れているのがなんとなく分かる。
小さい。すっぽり隠れている。
なんだろう、大学の友達とかではなさそうだ。と言うか、中学生?
「お待たせ」
命が手を上げる。
「あ、うん」
気もそぞろで答える。
「あ、帝さんですか? こちらでは初めまして」
命の後ろから銀髪に灰色の瞳の洋ロリ美少女が現れた。
「………っ。り、リアルアナスもごもご」
「声がデカいよ」
命が口を押さえて止める。
パニックを起こしてジェスチャーで騒ぐ帝。
「ぜえぜえ…、あ、あの、照も呼んで良いかな?」
「良いんじゃないかな?」
一応アナスタシアにも確認するとうんうんと肯いている。
ーー 20分後 ーー
「………っ。り、リアルアナスもごもご」
「ごめん…」
「あ、その声はマテラさんですか?」
小声でアナスタシアが尋ねる。
耳元で囁かれた照がカチコチになっている。
往来でゲーム内での名前を呼ぶのもマナー違反だ。人によっては。
「は、はい。えと、貴方は…」
「うん、アナスタシアです。よろしくね」
「ほ、本名? その目立つ姿もそのままで、大丈夫なの?」
帝もそうだそうだと言う顔をしている。
「なんか、気がついたらそうなってたって言うか、なんて言うか」
てへへと笑うアナスタシア。ゲームのキャラクターを可愛くして取り出した様な姿に驚きを隠せない。
「てゆーか、その彼シャツみたいな格好はどうしたの? お姉ちゃんの服?」
「ああ、ゲームからあの格好で出て来たから私の服を貸した。あの格好じゃ外に出られないでしょ?」
「………」
「ん? どうした?」
「お姉ちゃんって、そう言う冗談言う人だっけ?」
「んー、まあ、そうなー」
冗談ではないんだけどな。
本当はアナスタシアのインベントリに取り込めばぴったりサイズにも出来るのだが、なんとなく面白いのでブカブカなまま着ている。認識疎外の魔法を使えば異界の服でもおかしく思われないし、なんなら裸でも大丈夫だ。しないが。
しないが。
「今日はせっかくだからアナスタシア様の服もなんとかしようと思って」
「で、お金はどうするの?」
「私も少しは持って来たけど…」
立花家はわりと裕福なので命はお金には困っていなかったが人の服まで大量に買うほどではない。
「えっと、アナスタシア様、お金とかは?」
アナスタシアが背伸びして命に内緒話しようとするので、ちょっと屈んで頭の位置を合わせる。
「こちらの世界は物を売るのが難しいと言う事で用意してもらったのがあります。物価が分からないのですが、えっと、1億円? くらいあるそうです」
「………」
背を伸ばして天を仰ぐ。
「とりあえず、一通り見て回ろうか。ははは」
「「「?」」」
「こ、これが伝え聞く女の子のお買い物」
アナスタシアはこの世界の本なども大量に読んでいた。
アニメや映画なども観た。
そもそも情報や知識を得るのが好きなのだ。
既に何軒もの洋服屋を回り、数十着の服を試着したりした。
カジュアルな服装、ちょっとしたイベントごとに対応できそうなワンピース、部屋着、なぜか水着まで買わされた。
「次は海とか行きましょうね」
最初は嫌そうな顔をしていた帝もなんだか楽しそうだ。
「今日は色々予定が変わっちゃったりしたし、何か買ってあげるよ」
命が帝に提案した。
「えー、お姉ちゃんの趣味で?」
「どう言う事?」
「冗談冗談。何買ってもらおうかなー」
物凄いエネルギーだ。アナスタシアが魔法に使用したら大陸の一つぐらいは海に没するだろう。
「ちょっと休憩しようか」
今度は帝と照が盛り上がっている様なので、命とアナスタシアはベンチに腰掛けた。
「あ、ありがとうございます」
命が手渡した飲み物をアナスタシアが受け取って一口飲み、眼を白黒させる。
「やっぱ、炭酸は初めて?」
「あ、はい。ちょっとびっくりしました」
「そんで、一つ気になったんだけど」
「なんでしょう」
「この世界に貴方が来ているって事は、この世界にもドラゴンが居るの?」
顔は周囲に向けたまま、アナスタシアの方に身体を傾けて小声で尋ねる。
「今はもう私だけでも行き来出来るんですが、居ますよ、ドラゴン」
「どっちに驚いたら良いのか迷うけど、居るの、ドラゴン…」
「この世界のドラゴンは寝ている間に身体の上に世界が出来てしまったとかで、寝返りも打てないって言ってますね」
「ヨルムンガンドかな? って、アレはデカいだけで別に何か載せてるわけではないか」
「…人間がなんて呼んでるかは知らないそうです」
今聞きました、と言うふうにアナスタシアが伝える。
「………」
その時、目の前に通りがかった金髪の美少女がアナスタシアの姿を目にして立ち止まった。
「………っ。り、リアルアナスタシア様だとおおおおお!!!」
ヨルムンガンドは竜ではなく蛇なのですが、ドラゴンの伝説自体色々あって、現在目にする様なドラゴンは後からできた物らしいので、とかなんとか言いたい所ですが、ぶっちゃけ他の名前が出てきませんでした。ふひひ




