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3-16 悪役令嬢の帰省

特に事件とかは起こらないです(

「良く帰ったな、アナスタシア」

見知らぬ貴族のおっさんが話しかけてきた。と言うのは嘘で、アナスタシアの父親だ。

6年ほど前にもあの広場で会っている。


と言うのは大袈裟で、時々会っていたし、学園に入る前にも会っている。


「ただいま帰りました」


ここは王都にある屋敷だ。学園も王都内と言えば王都内なのだが、馬車で少しかかる程度の距離はある。

アナスタシアが育った別邸はちょうど屋敷の裏にある林の中にある。


アナスタシアの父親であるバーンシュタイン卿はもともとアナスタシアを大事に思っており、林の中の別邸に隠したのもアナスタシアを誹謗中傷から守るためだった。普通の家族と比べれば一緒に居る時間が少なすぎるが、もともと仕事に領地との往復にと忙しい人なのでアナスタシアの事情がなくてもそれほど変わらなかったかもしれない。


不便をかけて申し訳ないと言う父に、アナスタシアも返って快適に過ごさせてもらっているとその度に言っていた。


とは言え、窮地にドラゴンがやって来て助けてくれると言う事態はさすがに理解の範囲を超えていたらしく、少々ギクシャクした関係になっている気はしなくもない。


母親と姉も迎えてくれている。

この2人は6年前の事件の詳細については知らされていない、と言うか、そもそもそんな事が有った事自体知らないようで、不憫な娘、妹としか思っていないようだ。母親は産んだ本人だし、姉とは歳が離れているので生まれた時からアナスタシアを知っており、髪の色が違う事についてはそう言うものなのだろうと思っているようだ。姉は既婚だが、ちょくちょくこの屋敷にも来ているらしく、今日もアナスタシアが帰ってくると言うので顔を出したらしい。


家族は他に成人済みの兄が2人いて、いまは領地で仕事をしている。


3人とは軽い挨拶と世間話をして、一旦別れた。




「アーニャさん、こちらは私たちがやっておきますので、お嬢様のそばに控えて下さいな」

本邸のメイドがアーニャに話しかける。

「え、ええ。もう行きます」

そう言いながら手を動かすアーニャ。


「メリー、アーニャはアナスタシアお嬢様の身の回りだけではなく全部やらないと気が済まない子だから…」

メイド長が説明するように話す。

「一時期は料理や洗濯まで自分で出来ないものか、とか言っていたのよね」

「ええ?! さすがにそれは…」

「それは15の頃の話で…」

メイド長とメイドのメリーの会話に笑ってごまかした。


別邸自体はそのままになっているが、アナスタシアの姿が公に晒されている現状では意味がないので本邸に部屋が用意されている。もともと別邸が本邸に合わせて作られていることもあり、ほぼ同じ広さ、作りになっていて、見たところ不便はなさそうだ。


設備的には。


部屋の確認を終えてアナスタシアの元に向かうと、すでに部屋に向けて歩いてくるところだった。


「遅くなってしまい申し訳ありません」

「大丈夫よ」


アーニャと共に部屋に行くとそこは住み慣れた部屋と同じだが微妙に違うため不思議な感覚に陥る。


「部屋の様子は?」

「………」

「何もない、と言う事はないわよね…」




本日のメインイベントは食事と言う形を取った報告会だ。

「王子殿下を殺害した生徒は逃亡中らしくて、私もよく存じませんの」

何しろ王子が死んだと言う事件にアナスタシアも事情聴取などは受けているが、親が全く無関心という訳にもいかず、報告に来たという訳だ。


「貴方に危険とかはなかったの?」

母親が心配してくれる。

「子供たちの冒険ごっこと言う体でしたが、騎士団の方達が護衛してくださっていたので、特には…」


家族はアナスタシアを巻き込まれた被害者だと信じていてくれているようだったので、当日のこと、普段の生活のことなどを話し、家族の近況を聞いたりして和やかに過ごした。


ハリスとの仲を聞かれたりもしたが、本人には別に本命が居るようだと言って誤魔化した。



「お食事はいかがでしたか?」

自室に戻るとアーニャが聞いて来た。

「悪くはなかったけど、デザートの味がちょっと変だったかもしれないわ。状態異常無効化の魔法を使っていたから何だったのかは分からないけれども」

「………」


「わざわざこの家で行動に移したことから考えても、部外者の線が濃厚ね」

「ご主人様を陥れるための罠、ですか」

「少なくとも私の様子を気にしている人間は居ないみたいだったから、この屋敷の人間の犯行ではないでしょうね」

話しながらアーニャは手早くアナスタシアを着替えさせたり、髪を梳かしたりしている。


「今夜はどちらでお休みになられますか?」

「そうね、あの館の寝室は使えそう?」

「支度はしておきました」

「じゃあ、行きましょうか」


本邸の寝室のドアを開けると、なぜかそこは別邸のアナスタシアの部屋に繋がっていた。

「本邸の部屋と寮の部屋、それにこの部屋に敵が侵入しようとした場合、ローウェン辺境伯領のダンジョン内に用意したダミーの部屋に送られるようにしたから、後で行方不明者を調べてくれるかしら。生きてダンジョンから出られたとしても2週間は王都に戻ってこれないと思うのよね」


「畏まりました…。ただ、敵味方の判定はどうなっているのでしょうか」

アーニャが不安げに尋ねる。


「………さあ?」



辺境伯領の名前はなんとなく付けた方が説得力あるかなとか思っただけなので前後に繋がりはねーです。ぶっちゃけ

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