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ある魔法使いの旅路 〜儚げな公爵令嬢だと思っていたら、ただのチート主人公でした〜  作者: 大貞ハル
異世界から召喚されし勇者アナスタシアちゃん14歳さん
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2-24 乗馬

馬回。

砦の厩舎には、冒険者達が連れてきてくれた馬34頭と、騎士達が自らも乗りつつ連れてきた馬22頭のうち、50頭ほどが納まっていた。残りは周辺の警戒などで表に出ている。常時馬具を付けたままと言うわけにも行かないが、何頭かはすぐに乗れるようにしておかなければならないからだ。


騎士達が戦場で使えるのもそうだが、それ以外にも馬が居れば移動や伝令などに非常に便利なわけだが、今は明らかに人員が足りていなかった。


「騎士もそうだが、馬の世話をする者や、食糧などを管理する人間も必要になってくるな」

「馬車も必要だろう」

「ここを拠点とするなら周辺の街などに使いを出すべきでは…」


騎士達が打ち合わせをしているそばでアナスタシアが馬に捕まっていた。


「襟を咥えたらダメですよー」

「随分と気に入られましたね」

シリアナが馬の注意を引いて助けてくれる。


「これは馬鹿にされていると言うのではないでしょうか。嫌われてはいないと思いますが…」

シリアナの後ろに隠れるようにしていると、隣の枠の馬が後ろからアナスタシアの頭をかじる。

「あ、頭、頭は止めてください、毛が細いのでハゲますー」

「………」


「乗ってみますか?」

シリアナが提案する。

「え? でも、大丈夫でしょうか」

周りを伺うアナスタシア。

「アナスタシア様でしたら誰も文句を言わないでしょうし、人より馬の方が多いようですから一頭借りたから何かできませんとはならないでしょう」

「そう言えばそうですね…」

少しずつ増えているとは言え、この砦に50人は居ないように見えた。

「ちょっと待ってくださいね」


アナスタシアを捕獲しようとしている馬を引き離してアナスタシアを外に出すと、再び1人で中に入り一頭の馬を連れて戻ってくる。すると今度は手慣れた感じで手綱を柵に結び、鞍を取り付けていく。


「シリアナは馬に乗れるの?」

「ええ、私は子供の頃から体格が良かったので、身体を使うことも一通り仕込まれました。剣術とかは才能がなくて身につきませんでしたが」


シリアナが手綱を持ち、馬から見て左側に立つ。


「馬は真後ろに立たれるのを嫌いますので、かならず前か脇に立ってください。どうしても馬から見えにくいところに立たないといけない時は、脅かさないように声をかけてあげてください」

「はい、先生」

「あの、先生は止めてください」

「うふふふ」


「まずは登って跨がるところからなのですが…」

「ど、どうやって登れば…」

アナスタシアが鞍を見上げている。

「私が持ち上げますので、この上の辺りを掴んでよじ登ってください。(あぶみ)には届かないでしょうし調整してないので足をかけないでください」

左手で手綱を持ったシリアナがアナスタシアの脇に腕を回すとそのまま持ち上げた。一見すごい力のように見えなくもないがアナスタシアが軽すぎるのだった。

「んーーーーーーーーーー、たーーーーーっ」

声を出している割にシリアナが持ち上げてくれたところで止まっている。

反対側に落っこちないように注意しつつ押し上げるとなんとか跨がることが出来た。


アナスタシアの黒いローブは中央が別になっていて、2つの合わせがスリットが2つ有るように見えるデザインになっているので、馬に跨ってもそれほどおかしな見た目にはならない。


「この子は賢い子なので、怖がらないで背筋を伸ばして、足でバランスを取ってみてください」

馬の顔を撫でながらシリアナが説明する。

「こ、この子はって事は、そうでもない子もいるの?」

「野生の馬はそもそも人を乗せません」

「…そうよね。そう言えば…」

「少し歩かせますね」

「え、ええ。よろしく」

「大丈夫ですよ。ちゃんと調教された馬はむしろ落ちないように気を使ってくれますから余程のことがない限り危険はありません」

厩舎の前の広場をゆっくりと歩き出す。


「指示の出し方は手綱を強く引いて止まれ、曲がって欲しい方に首が向くように手綱を引いて曲がれ、ですが、基本的に道が別れているとか、道をそれて道ではないところに入りたいとかでない限り、指示する必要はありません。進めは、かかとで腹を蹴ったり、鞭で叩いたりするのですが…」

「?」

「アナスタシア様ですと、馬が気づかない可能性が高いですね」

「え、そんなに強く叩かないとダメ?」

「普段は馬が気にしてると思うので大丈夫かと思われますが、緊急時には言葉で走れとか、掛け声をヤーとかかけて上げると良いかもしれません」


一応、アナスタシアはレベル補正のおかげで、常人にはあり得ない力を出すことが出来るが、基本的には見たままだ。おそらくその気になれば馬を操ることもちゃんと出来るのではないだろうか。


「後ろに失礼しますね」

シリアナがすっと後ろに乗るので、少し前につめた。

鐙がアナスタシアには低すぎて届かなかったのはこの為か。


砦の中をちょっと早いペースで回る。

シリアナが後ろから支えてくれているので危なげもなく何周か回った。


「やってみますか?」

「ぜひ」


手綱を持たせて貰い、さあ進むぞ、と馬の腹を蹴ってみたが、やはり通常のパワーでは全力でも気がついてもらえないアナスタシアだった。

馬のことはよく知らないのでファンタジーってことでヨロ(オマ

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