皇子神官長は溺愛中(ただしツンデレ。)1
セリカが疲れてるのがわかる。
あの男にまた追いかけ回されたのだろうか…。
エウリール神殿の神官長室の椅子から腰を上げた。
セリカの事が気になって仕方ない、様子を見に行こう。
扉を開けるといつものメンバーが待っていた。
まったく暇なれん中だ。
「セリカに会いに行くなら、私もいくよ。」
ティオラが剣をもてあそびながら言った。
神殿の修練場から直接来たらしく汗をかいている。
女どもが可愛いのに色っぽいくてワイルドといっていたな。
「入浴してからにせよ。」
私はそういって連中の脇を通り過ぎた。
まったく、廊下にでっかい男たちがたむろしてると鬱陶しい。
「逃げる気か?オレは勝手にでもついていくぞ。」
ケイアスが追いかけてきて言った。
「勝手にするがよい。」
本当は邪魔だが、追い払っても二つ名が追い狼のケイアスはついてくるだろう。
「オレも行きますよ、セリカにはストーカーがいるようですし。」
イリュゲスがメガネの位置を直しながら言った。
「ストーカーだと?ルークス・ハザラ・オヤルルのことか?」
私は廊下を進みながら言った。
「地方の下級貴族の次男だそうですね。」
イリュゲスがメガネのつるを持っていった。
エウリール神殿の頭脳だそうだがこいつも所詮戦士だ。
「貴族か…コネでオダーウエ聖騎士団に入ったのなら根性叩き直してあげないとね。」
嬉しそうにディオラがタオルで頭をふきながらセリカには見せない肉食な笑いを浮かべた。
こいつがけんかっぱやいからな。
帝都の下町で悪がきどもを率いて戦闘の神力を使ってたところを先代神官長に見いだされたのだったか?
まあ、いざとなれば私があの男を真っ先に抹殺する…あの男の気持ちもわかる、セリカとあの男がいた神殿の巫女は雲泥の差だからな…。
「ほっておけ、オダーウエ聖騎士団にコネはあり得ないのは知っているだろう?」
私は横目でディオラをみて牽制した。
まったくこいつらの方を先に抹殺したい。
セリカを独り占めできないのはこいつらのせいだ、この間だってこいつらがいなければ早々部屋に連れ込んで可愛がったのに…。
セリカの可愛いさは昔からだからな。
初めてあったのは…セリカがこの神殿に入って数日の時か。
小さい子どもが庭でボーッとしてたんでどうしたんだと思ったんだ。
『セリカ…お家に帰りちゃいの。』
小さい子どもは虚空を見つめて突然言った。
今考えるとエウリール神のお言葉をいただいていたのだと思う。
これが数日前から話題の真性の再生面の巫女かとまだ少年だった私は観察した。
『…かえれにゃいの。』
寂しそうに言って幼児は転びそうになったので支えた。
赤紫の瞳が私を見つめた。
『お兄ちゃん、だれにゃの?』
セリカが小首をかしげた。
『シュースルだ。』
私はこの小さい子どもの温かさにほっこりしていた。
『シューお兄ちゃん?セリカさびしいにょ。』
セリカは私にしがみついた。
『そうか。』
背中をなでるとセリカは泣き出した。
『おとうしゃんとおかあしゃんとファルお兄ちゃんに会いたいにょ~でもかみしゃまがダメっていうにょ~。』
しばらくなくセリカを抱き締めてそのまま泣きつかれたセリカを抱き上げて私は思った。
可愛い妹ができたと…なにも気を使わずにすむ…陰謀にも関係ない…とっても癒された。
丸々したお腹にぷっくらした顔の幼児は見事に私になついた。
いつでもあとからついてきた。
だからあのときからセリカは私のものと決まってる。
「神官長、セリカなら皇帝陛下に呼ばれたぞ。」
ジァイオスがセリカの部屋の前で腕組みして待っていた。
こいつは皇帝護衛神官戦士の一人だからな…こいつは巫女だが…神官位も持ってたはずだ。
ということはやつも来ているのか?
「ヤサゼシス神官お兄ちゃん、私、歩けるよ。」
セリカの部屋からしっかりヤサゼシスに抱き上げられて正装したセリカが出てきた。
やはり来ていたか…。
「急ぐから転びますよ。」
ヤサゼシスが甘い微笑み浮かべて言った。
ヤサゼシス神官戦士隊長は皇帝陛下直属の皇帝護衛神官隊の隊長だが…やはり例のかたの
ご要望で来たのだろうか?
セリカが疲れているのはあの大技を使った時からのような気がする…いざとなれば…かなわないだろうが…。
ヤサゼシスはあまっとろくセリカを見てる…不快だ。
私とヤサゼシスのどちらがセリカの夫になるか議会でもめたらしい。
「丸い熊みたいなお腹でかわいいよ、セリカ。」
ティオラが甘くいった。
セリカがショックな顔をしている。
ティオラは微妙なセンスだからな。
婚約者問題はひとまず、先先代皇帝の末息子ではなく先代皇帝の息子である私に決まったが…いまでも諦めてないようだ。
当代皇帝にはまだ小さい皇子しかいないからな皇弟の私かやつしか適当な歳の皇族がいなかったということだろうな…まあ、好都合だが。
その強さゆえに当代皇帝の護衛神官戦士隊長の重責を担っているのだが…。
「ヤサゼシス神官お兄ちゃん…歩けるよ、シューお兄ちゃんが冷たい目で見てるし。」
セリカが可愛く小首をかしげた。
「そうだ、歩かねば太るぞ肥巫女。」
ヤサゼシスを睨み付けながらつい憎まれ口をセリカにいう。
セリカが一瞬悲しそうな顔をした。
わかってるこの口が悪い。
「ヤサゼシス神官お兄ちゃん、私、降りるね。」
セリカがヤサゼシスを見つめて言った。
「シュースル皇子殿下なんか気にしなくてもいいですよ。」
ヤサゼシスがあえてシュースル皇子殿下と強調していった。
セリカがますます悲しそうな顔をした。
私が皇子殿下だから結婚を強要されてると勘違いしているからだ…ある意味そうだが、もし私以外の男が選ばれたらセリカをさらって逃げて監禁するような気がする。
「セリカ、皇帝陛下に呼ばれているなら待たせてはいけない、いくぞ。」
私はセリカをヤサゼシスの腕から奪い取っておろした。
本当はこのまま抱き上げてどこかにいきたい。
「シュースル皇子殿下、ファリシア巫女は僕がお連れします。」
ヤサゼシスが寝言をいったのを無視してセリカの柔らかい手を握る。
ああ、この瞬間が続けばいい。
このままどこかだれも知らないところにセリカと二人きりで行きたい。
エウリール神すら渡したくない。
私の愛しいセリカ、真性の再生面の巫女よ。
心のそこからお前に執着している。
愛しているでは足りない… 。
皇帝が呼んだ理由は聖剣ですけど、隠居中ですに出ております。
駄文を読んでいただきありがとうございます♪




