皇子神官長は溺愛中(ただしツンデレ。)2
婚約だと…本気か?
いっそ殺るか…。
オヤルルの砦に潜ませた斥候からの報告書を握りつぶした
「神官長…殺気を出さないでください。」
副神官長がニコニコ言った。
「そうか…それで、カササダの方の…アイルパーンの方はどうなんだ。」
ケイアスに問いかける。
「…なんとか、イアルダス令嬢を助け出したらしい、カササダ竜騎兵団は帰りつつある。」
ケイアスが腕組みした。
「オヤルル騎士はエウリール神の化身らしいで…だいたい、なんで腕輪交換しとかんかったんや。」
アイオスが頭を抱えた。
セリカと飽食仲間してるから遠くオヤルル領地のエウリール神殿に飛ばしたんだが…意外なところで役立ったな。
潜みアイオスはなまじでないようだ。
「腕輪…セリカが交換したのは…私の腕輪だ。」
オーラダー神殿から成人の印でもらうのを私がセリカのを直にもらったからな…成人の儀式と共に婚約だったから反対勢力を封じ込めるためにセリカには私の腕輪をきちんとセリカサイズに調整してさずけてもらった。
昔、幼い妻をもらった時は虫がつかないように成人を待たずもらったときいたが。
「…わー、それへこむわー。」
アイオスが頬をポリポリ意味もなくかいた。
「だが、不用意に腕輪を渡すなど…すぐに仕置きだ。」
セリカは私のものだとわからせてやる。
「うーん、それよりもあの巫女何とかした方がいいんとちゃう?」
アイオスがそういって例の巫女資料を出した。
「ライティーアはオヤルルを殺りにいくときに見極めてくる、セリカはもう二度と出さない予定だ、拘束符を使用する。」
私は符を準備しながらいった。
魂すら逃さないのは今研究中だ。
天竜を利用するために竜舎にいくと聖槍アミリアーナがすごい勢いでやって来た。
「オヤルル領にいくそうですね、私も行きます。」
アミリアーナが噛みつかんばかりに言った。
「…なぜお怒りなのですか?」
振るえる聖竜騎士が聞いた。
「オーラダーの最高位の巫女に苛められたのでセリカに癒されてきます。」
アミリアーナがカリカリしながらいった。
「聖槍アミリアーナ、あなたはあの男がエウリール神の化身と知っていたのか?」
私はあえて無表情を装ってきいた。
心のなかでは炎が渦巻いている。
「…エウリール神の化身はかつても会いました…ぜひ悲劇的終わりが来ないように望みます。」
アミリアーナはそういって竜に向き合った。
「悲劇的終わりとはなんですか?」
私はまだエウリール神の化身について調べていないのに気がついた。
「……化身とは体のいい神様の乗り移れる器です、巫女は一時的に降臨ですが、化身はその適合率故に恒久的にです、…人は神の意識に勝てない…よってその時点でと言うことになります…。」
アミリアーナが言いにくそうに視線を反らした。
つまり、神が宿った時点で終わりと言うことか?
「それで、その体質は継がせることは出来るのか?」
ライティーアの執着は尋常ではないと聞いたが?
「そんな厄介なものを継げるわけないでしょう?ただ、神妃ファーリシア様の生まれた所ではありますけどね、オヤルル領は。」
アミリアーナはまだなにか隠しているようだ。
とりあえず、おいおい聞いていくか。
「では、行こう。」
私は聖竜騎士に声をかけた。
オヤルル領の神殿は少しおかしいとアミリアーナが呟いた。
たしかに地方の神殿にしては規模が大きいが…。
「そういう意味じゃありません、空気がねっとりとしてるんです。」
アミリアーナが身体を自分で抱いた。
「そうか?」
聖槍でなければ、わからない感覚なのか?
とりあえず、帰りは訪問する自信がないから先にきたが…。
衣ずれの音がして華奢な女が現れた。
大昔の巫女のような衣装…ファーリシア様の壁画とにている。
「私にあいにまいるとは愁傷なことじゃ。」
甘い口調でその女は言った。
赤みがかった琥珀の目が色気をにじませる。
まあ、私には関係ないが。
セリカの笑顔の方が数倍よい。
「おかしい。」
隣のアミリアーナが呟いた。
「なにがです?」
私はアミリアーナを見た。
「私を神妃ファーリシアの生まれ変わりと認めたのじゃな、度々いっておろう。」
ライティーアが微笑んだ。
「………そうか…では。」
おかしい…何を言おうとしている?
「とりあえず、砦に行きます、あなたのことはそれから、シュースル行きますよ。」
唐突にアミリアーナが私のてを引っ張った。
そのまま廊下に引っ張り出す。
失礼な女じゃとライティーアが呟いたのが聞こえた。
アミリアーナは…無性だが…。
「ここは空気が悪いです、砦に移動しましょう。」
アミリアーナが廊下に控える聖竜騎士に言った。
「はい…それにしても綺麗な人でしたね。」
聖竜騎士が呟いた。
綺麗な人?セリカの方が数倍可愛いが。
神殿を出るとアミリアーナが深呼吸をした。
「あそこにはなにか術がかっています、気持ち悪い、行きましょう。」
アミリアーナがそういって歩き出した。
聖竜騎士が竜をふせさせた。
術だと…?
なんだ、いったい。
「あの麗しい方が最高位の巫女としておいでになってくださればエウリール神殿も安心ですね。」
聖竜騎士がうっとり言った。
最高位の巫女に決定のような口振りだが?
最高位の巫女はセリカ…ファリシアだが。
「やはり…おかしいですね、行きましょう。」
アミリアーナが天竜に乗り込んだのを追って乗り込む。
聖竜騎士が鞍にすわって空高く天竜が舞い上がった。
壮麗すぎるエウリール神殿を眼下にみながら思った。
ここで何が起こっている?
オヤルル騎士は殺るとして。
セリカの障害になるならば、ここも何とかせねばならない。
オヤルルの砦に視線を移す。
セリカ、まってろ、仕置きは少しあと回しだ。
神官長として神殿の治安は護らねばならない。
「アイオスがあの巫女なんとかとはこう言う意味か?そのわりに詳しくは言わなかったが…。」
やはりなにかがおかしいのかもしれないな。
仕方あるまい、オヤルル騎士を殺るのもあととするか。
「オヤルル領主の館へ先にいってくれ。」
私は聖竜騎士にいった。
アミリアーナがセリカに会うのが先です。と騒いだが聖竜騎士に行くように命じる。
天竜は方向変えた。
オヤルル領主の館へ向かって。
神官長としての地位がにくい。
セリカ…無事でいてくれ。
私の最愛の巫女よ。




