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真面目騎士の憂鬱2

アイルパーン竜騎兵国とチエアイス武国との国境地帯に面してる故郷は今日も見事な地方都市ぶりだ。

正確にはノコミゼハ中央宿国とも面しているのだが…あそこは中立国だしな。


「少し染みるかも知れませんよ。」

ファリシア看護師が手の傷を消毒しながらいった。

綿棒の親玉みたいなのに消毒薬がついているらしい。

幅広テープにガーゼがついたものに薬をチューブからつけて傷をおおった。

もうすぐ治ってしまうとこういうことも無くなる…寂しい…なにを考えてるんだ?

「ありがとうございます。」

オレはファリシア看護師の柔らかい手が離れるのを残念に思いながらいった。

「オヤルル騎士の故郷だそうですね。」

ファリシア看護師が物品を処置用のショルダーバッグにしまいながら物珍しそうに砦の見張り台から街を眺めながら言った。


見張り業務中にファリシア看護師が傷の処置来てくれたときは天使が舞い降りたかとおもった。

まさに癒しの瞬間だな。


あの婚約申し込みのあとヤセゼシス公から休ませるむねがあったとき嫌われたかとおもったが変わらないな。


帝都育ちのファリシア看護師にとって辺鄙な田舎町など見たことがないのだろうな…。


「ファリシア看護師、帝都育ちの貴女から見れば田舎でしょう?」

オレはファリシア看護師の柔らかい身体の感触を思い出しながらきいた。

「私も一応地方出身なんですよね……ハルシアル地方だそうです、親兄弟、親戚がまだ住んでるはずですけど…覚えてないんですよ、実家。」

寂しそうにファリシア看護師が微笑んだ。


そうか…幼い頃に力の発現をみてエウリール神殿に連れてこられてそのままか…かわいそうに…。


抱き締めたい…落ち着け、今は任務中だろ。


「今夜は非番なのですが、ファリシア看護師の仕事ですか?」

オレは抱き締めたい衝動を押さえるために両手を握った。

「私も非番です、夜勤業務じゃありません。」

ファリシア看護師がにっこりと笑った。


うっ…可愛すぎる、凄まじい威力だ。

オレの心臓はどうした、早すぎるぞ。


オレは胸を押さえた。


「気分が悪いのですか?」

ファリシア看護師がすぐ近くに来てオレの手首を持った。

「大丈夫です。」

落ち着け、このまま部屋につれこみたいだなんて思ったらいけない。

「脈が少し早いですね…ゼゼルハス医師にみてもらった方がいいですかね…。」

ファリシア看護師が思案顔をした。

「大丈夫ですよ、それより今夜一緒に食事でもいかがですか?」

婚約についてもう一度頼みたいしな。

砦での食堂では味気ないがな。

「良いですよ、私も話したいことがありますし。」

ファリシア看護師がもう一度笑った。


なんて可愛いんだ、あの唇に口づけたい、落ち着け、勤務中だ、オレ。


しばらく見つめあった。

はや歩きの足音が廊下で響いてるのが聞こえた。


「お前ら、なにのぞいてるんだ!」

背後から騎士団長の低い声がしてバタバタというもの音がした。


みるとオレの班の連中があつまってのぞいている。

おい、どういうことだ?


「騎士団長、やめてくださいよ、ルーがやっと青春してるのに!」

イルナルドが叫んだ。

「そうですよ、邪魔しないでください。」

フェエルがそういって騎士団長に詰め寄った。

「ルーさんがにやにやしてるところなんてそうそうみれませんもの。」

セスアイラがにっこりと笑った。

「堅物騎士に春がきたんですよ、騎士団長。」

アタンデッドがニヤリと笑った。

「オヤルル先輩、頑張ってください!」

ティエンが両手を握りしめて言った。

「ルークスにも幸せが来たんですよ。」

ウエルサがニコニコした。

「田舎者がどうに口説くのかみたくているんです、オレは。」

カーサガはプイと横を向いた。


「お、ま、え、ら、仕事はどうした!さっさと行け!」

騎士団長が怒鳴りとばした。


何人か残して蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「カササダ竜騎兵団は続々と国境地帯に集結しているとのことです。」

残された?イルナルドがきりっとした表情でいった。

「そうか、こちらに向かう様子はないか?」

騎士団長が静かに聞いた。

「半数をのこしてチエアイス武王国に向かいました。」

イルナルドが言った。

「アイルパーンの武人王子オズワルト殿下の通過を確認したそうです。」

同じく残された?アタンデッドが真面目そうな顔をして言った。

「そうか、引き続き監視しろ。」

騎士団長が言った。


「ウエルサ騎士、傷の調子はどうですか?」

ファリシア看護師が心配そうに退院したての親友に近づいた。

こいつはたぶん、残っただ。

まったく物見高い。

「少しひきつれてますけど動くのに支障はないですよ、ファリシア看護師。」

ウエルサが傷の部分に手をあてながら言った。

「そうですか…あとでゼゼルハス医師(センセイ)の診察受けてくださいね。」

ファリシア看護師が無意識にだろうか?ウエルサの手を握った。

「ええ、お気遣いありがとうございます。」

ウエルサが気持ち良さそうな手を握り返して言った。


羨ましすぎる…お前、彼女がいるだろうが。


「それにしてもふかふかですね。」

ウエルサがニヤリとオレの顔をみた。


こいつ、無理にやってるな。


「すみません、太ってますよね。」

悲しそうにファリシア看護師…セリカさんが言った。

「ええ、でもそれがいいやつがいるみたいですよ。」

ウエルサがオレをみてますますニヤニヤした。

「それのどこか悪い。」

オレは不機嫌さを隠さずに近づいてファリシア看護師の手をウエルサから奪い取った。


思った通り柔らかい。

まずい…不味すぎる。

赤紫の瞳が見上げる…綺麗だ…。


「…オヤルル、お前も仕事にもどれ。」

騎士団長がため息をついた。

「あ、すみません、私、邪魔ですよね。」

ファリシア看護師…セリカは手をオレの手からぬいて離れていった。

「今度からオヤルルの処置は貴女以外にするようにしてください…まったく。」

騎士団長がオレを眉をつり上げた。

「はい、すみません!」

セリカはペコペコしながら出ていってぶつかりそうになりながら去っていった。


「鬼だ…騎士団長は鬼だ。」

ウエルサが呟いて残った連中がうなづいた。

「お前ら、よっぽど体力が余ってるみたいだな!西砦まで走っていってこい!」

騎士団長が怒鳴りとばした。


「ひえー、普通、徒歩なんてあり…はい、いってきます!」

ウエルサがいいかけて騎士団長に睨み付けられ敬礼した。

「さっさと行け!」

騎士団長が一喝したところでオレたちは走り出した。


遥か15キロはある西砦にへ。


ちょうどいいかもしれないな…セリカの事を考えると…仕事にならないからな。


巻き込んだ連中には悪いが。


ライバルは多いらしいが…負けるつもりはない。

絶対にセリカを手にいれて見せる。

駄文を読んでいただきありがとうございます♪

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