再生巫女看護師は業務中4

おともつれての業務ってやりにくいよ。

後ろからオヤルル騎士がついてくる。

医療院の薬学課から受け取った薬箱を抱えてついてくる。

負傷者に持たせて良いのかな？

庭に敷かれた石畳は少し足場が悪い。

でも広い庭では道しるべにぴったりだよ。

「私が持ちますよ。」

振りかえって言った。

「大丈夫です、それより前をみないと危ないですよ。」

オヤルル騎士にいわれたとたんつまづいた。

「ファリシア看護師。」

負傷者に支えられた。

「すみません。」

すごいな…片手で私支えて片手で荷物もつなんて…。

「うっ。」

オヤルル騎士が苦痛の表情をした。

不味い重い?

「ごめんなさい、重いですよね。」

私はすぐに離れた。

「いや、そんなことは…。」

そういいながら利き手を眺めている。

「傷!見せてください!」

私はあわて手を持ってのぞきこんだ。

包帯には特に血は染み出てないみたいだけど。

「すまん…ファリシア看護師は優しいな。」

オヤルル騎士が笑った。

「優しいじゃありません、私なんか転ばしておけばいいんですよ。」

私はなんか恥ずかしくなって視線をそらした。

「そうはいかない、あなたは大切な人だ。」

オヤルル騎士に見つめられてますます恥ずかしくなって後ろ(進行方向)を向いた。

「い、いきますよ…。」

どうにかえしていいかわからない、もちろん誤解しちゃダメだよね。

「急ぐとまた、よろけますよ、なぜ、医療院付属病院は渡り廊下が皇宮につながってるのに医療院自体はつながってないんだろうな。」

オヤルル騎士が一人言のように言った。

たしかに医療院と皇宮はつながってない。

だからこうして庭園を通っていくんだけどね。

「研究の邪魔されたくないからって聞きましたよ。」

薬学教授がそうに言ってたの思い出した。

「そうですか…ところで、ファリシア看護師もあそこで学んだのですよね、……再生巫女として将来が約束されていたのになんでですか？」

オヤルル騎士が少しためらって聞いた。

「たしかに…エウリール神殿にいれば食いっぱぐれはないですけど…。」

でもそこでひきこもっても仕方ない気がする。

時々来る再生術の依頼だけして食っちゃ寝してたら…今より太るね、そして…シューお兄ちゃんにますます冷たい目で見られるんだぁー。

わー…嫌な想像しちゃったよ。

「普通は神殿で優雅に過ごして周りの人間をこきつかう…翻弄…いえともかく自分では動かないものではないのですか？」

オヤルル騎士が言いにくそうに言った。

は?優雅に過ごして翻弄?

筋肉まみれになって暑苦しい毎日が優雅?

そうか…それもあるから余計に外に出たのか、私。

「べつに優雅じゃないですよ、それにこの仕事してる方が大変だけどたのしいです。」

私はそういって少し振り替えって笑った。

「…やはりあなたは、オレの知ってる巫女とは違う。」

オヤルル騎士がため息をついていった。

また、そのフレーズかい?

いい加減、諦めてよ、個人差有るんだからさ。

オヤルル騎士が仕えていたエウリール神殿の巫女様はよっぽど美人で優雅な人で私みたいな巫女はショックらしい。

『お前は働き者すぎるからな…。』

エウリール様にしみじみ言われた。

働かざる者食うべからずですよ。

って私は食べ過ぎか。

『私の巫女…そんなに生活に困っているのか？かわいそうに…早く私の腕の中で安らぎを与えたい。』

エウリール様が甘く言った。

生活に困ってないから大丈夫ですよ。

「ファリシア看護師!ファリシア看護師!大丈夫か!?」

身体を揺すられて意識が現世に戻った。

目の前にオヤルル騎士の綺麗な青い目がある。

「大丈夫ですよ、巫女なのでどうしてもこういう瞬間があるんですよ。」

私は無理に微笑んだ。

下に置かれた薬の箱は慌てたのか少し薬が石畳にちらばっている。

ピルシートに入ってるのだから大丈夫か…。

「良かった、倒れるのではないかと思った。」

オヤルル騎士が私を力強く抱き締めた。

く、苦しい、今度は違う意味で意識が落ちそうだよ。

「お、オヤルル騎士…。」

私はやっと声を絞り出した。

「すまん。」

オヤルル騎士はそういって私を離して荷物をひろいだした。

私は息を大きくしてからしゃがみこんで荷物ひろいを手伝う。

割れ物じゃなくて良かったよ。

オヤルル騎士…お兄ちゃんたちと…シューお兄ちゃんと違う匂いがした…。

同じ筋肉男なのに、なんでこんなに顔が熱いんだろう？

か、風邪引く前兆だよね。

「オヤルル騎士、行きましょう。」

私はよろけながら立ち上がった。

「大丈夫か?」

オヤルル騎士が荷物を持ち上げながら言った。

「大丈夫です、荷物、やっぱり持ちますよ。」

私が腕を差し出すとオヤルル騎士は笑って小さい薬袋を箱から取り出して渡した。

「それだけもっていってください。」

オヤルル騎士はそういってさっさとあるきだした。

その颯爽とした姿勢にしばしば見とれてから慌てて私は追いかけた。

うん、なんかドキドキするけど動悸だよね。

貧血かな?…ま、まあ体調ととのえとこっと。

看護師の不養生は不味いもんね…ということでいいんだよね？