第97話:魔の国の悲願
―魔王への道、契約の囁き―
赤黒く燃える溶岩の池。
その周囲では、魔物たちが互いに牙を剥き、血と炎を撒き散らしながら戦っていた。
咆哮と悲鳴が交錯し、空気は硫黄の匂いで満ちている。
ザルグはその光景を見渡し、低く呟いた。
「……ここは……魔の国」
胸の奥、心臓から声が響く。
「そうだ……」
魔竜の声。契約によって彼の中に宿った存在が、静かに答えた。
ザルグは眉をひそめ、問いかける。
「お前の悲願ってのは……何だ?」
魔竜の声は重く、しかし揺るぎない響きを持っていた。
「……魔の国の統一」
ザルグは思わず苦笑する。
「……おいおい……何だって? 俺に魔王にでもなれってのか?」
魔竜の声は冷然と告げる。
「いかにも。約束は約束だからな。なに、我の力があれば魔王などたやすかろう」
ザルグの瞳が赤黒く輝き、溶岩の光を映す。
「……魔王、か。面白い……だが、俺のやり方でやらせてもらうぞ」
魔竜は静かに笑う。
「それでいい。悲願を果たすために、お前の力を借りるのだ」
溶岩の池の上、魔物たちの戦いを見下ろしながら、ザルグは新たな決意を胸に刻んだ。
魔の国の統一――それは彼に託された悲願であり、次なる戦いの幕開けだった。




