第95話:王都への帰還
―竜の背に揺られて―
ザルグが黒炎の翼を広げ、夜空へと飛び立っていく。
その姿が闇に溶けて消えるのを見届けたセレナは、力が抜けてその場にへたり込んだ。
「……終わったのね……」
ミーナが肩で息をしながら呟く。
「……これ以上は持たなかった」
リィナも膝を抱え、震える声で言う。
「……本当に限界」
セレナは仲間を見回し、声を絞り出す。
「カイルは大丈夫?」
カイルは血の滲む唇を拭いながら、かすれた声で答えた。
「……なんとか生きて……る」
フィンもを小さなからだを起こして立ち上がり、苦笑を浮かべる。
「私もだ……」
その時、ルゥの声がセレナの心に響いた。
〈僕の背中に乗って帰ろう。セレナ、僕の体を大きくして〉
セレナは頷き、微笑む。
「そうだね、ルゥ……分かった」
ミーナが驚いたように目を見開く。
「……セレナ、ルゥと会話してるの?」
セレナは静かに答えた。
「うん。さっきルゥと融合した時から、心の声で会話できるようになったの」
次の瞬間、ルゥの身体が光に包まれ、さらに巨大化していく。
その背は広く伸び、仲間全員を乗せられるほどになった。
セレナ、リィナ、ミーナ、カイル、フィン――五人は互いに支え合いながらルゥの背に乗り込む。
竜の翼が夜空を切り裂き、王都へ向けて飛び立った。




