第94話:崩壊の黒炎、若き姿
―終焉の咆哮、そして再誕―
轟音が大地を揺らし、最大共鳴雷を受けたザルグ=ネグロスの巨体が地面に叩きつけられた。
黒炎の鱗は砕け、空を覆っていた瘴気も消え去っていく。
戦場に静寂が訪れ、仲間たちは息を詰めてその光景を見守った。
「……終わったの……?」
ルゥの背中が淡い光を放ち、セレナの身体を外へと押し出した。
彼女はゆっくりと地面に降り立ち、仲間たちの前に姿を現す。
「セレナ!」
ミーナが駆け寄り、リィナが涙を浮かべる。
セレナは弱々しく微笑み、仲間たちにうなずいた。
「……大丈夫。ルゥが守ってくれた」
だが――その瞬間。
地面に横たわるザルグの身体が黒い塊へと変貌し、脈動を始めた。
まるで心臓のように鼓動し、亀裂が走る。
次の瞬間、黒炎の殻が砕け散り――
中から現れたのは、若返った美しい姿のザルグだった。
漆黒の髪が揺れ、鋭い瞳が赤黒く輝く。
その身体は裸のまま、傷一つなく再誕していた。
ザルグは静かに立ち上がり、セレナを見据える。
「竜の巫女よ……魔竜との約束ができた……さらばだ」
そう言い残すと、漆黒の翼が広がり、ザルグは空へ舞い上がった。
黒炎の残滓を纏いながら、彼の姿は次第に遠ざかり――やがて夜空に溶けるように消えていった。
仲間たちは息を呑み、セレナは剣を強く握りしめた。




