第51話:連鎖の罠、深層の策略
―深層魔導兵の会話、次なる標的―
死の淵への転移が完了した直後。
潜伏艦〈黒翼〉の作戦室では、深層魔導兵たちが静かに集まっていた。
魔導陣の残光が揺らめく中、ヴェルドは転移装置の魔力残量を確認していた。
その背後で、深層魔導兵Aが口を開く。
「ヴェルド様、この戦術完璧じゃないすか。
状態異常で動きを封じてから、死の淵に転移――あれ、誰も生き残れませんよ」
ヴェルドは無言で魔導盤を見つめていたが、やがて低く答えた。
「……俺もそう思ってた。カイルの反応速度は予想以上だったが、転移は成功した」
別の兵が前に出る。
「次はミーナとリィナですよね。
魔導砲と風精霊――厄介ですけど、いっぺんにやっちゃいません?」
部屋に沈黙が走る。
ヴェルドは視線を上げ、兵たちを見渡す。
「……やる?」
兵たちは一斉に頷いた。
「やりしょう」
ヴェルドは口元に冷笑を浮かべる。
「なら、準備を始めろ。
次は連鎖転移――同時に二人を落とす。
風も炎も、死の淵では意味をなさない」
魔導盤に新たな座標が刻まれ始める。
深層魔導兵たちは静かに動き出した。
次なる標的――ミーナとリィナ。
その名が、冷たい戦術の中に刻まれていく。




