第46話:深層の胎動、禁忌の咆哮
―レヴィアス残党、魔竜融合儀式―
船上。帝国残党の潜伏艦〈黒翼〉甲板。
夜の海を滑るように進む艦の上、黒衣の一団が静かに動いていた。
彼らは“深層魔導兵”――ザルグ直属の禁忌部隊。
その中心に、巨大な魔導ポッドが立てられる。
ヴェルドがポッドの前に立ち、低く呟いた。
「慎重に……魔力の流れを乱すな。これは、帝国最後の賭けだ」
ポッドの中には、ザルグ。
かつて帝国魔導将として恐れられた男。
今は下半身を失い、生命維持魔術でかろうじて生きていた。
ヴェルドが問いかける。
「本当に……よろしいのですね。これは、もはや人ではなくなる」
ポッドの中から、かすれた声が返る。
「ああ……やって……くれ……」
「空竜に奪われた帝国の空……今度は、我が咆哮で焼き尽くす……!」
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黒衣の魔導兵たちが魔方陣を展開。
甲板全体に広がる禁忌の紋章が、赤黒く輝き始める。
「魔竜召喚陣、展開完了!」
「魔力安定、深層核接続――!」
海底から、咆哮が響く。
水面が割れ、巨大な影が浮上する。
魔竜、顕現。
漆黒の鱗、六枚の翼、灼熱の瞳――
かつて封印された“災厄の竜”が、禁忌の術式によって呼び出された。
ヴェルドが叫ぶ。
「融合開始!人魔融合、発動!」
魔方陣が激しく輝き、ザルグの身体が魔竜の胸部へと吸い込まれていく。
肉体が溶け、魔力が混ざり、魂が融合する。
「ぐああああああああああああッ!!!」
ザルグの絶叫が空を裂く。
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融合は完了した。
ポッドは崩れ、甲板には新たな存在が立っていた。
魔竜ザルグ――人魔融合体。
かつての帝国将、今は災厄そのもの。
「セレナ……空竜……貴様らの空など、焼き尽くしてやる……!」
魔竜ザルグが咆哮を上げる。
その声は、空を震わせ、海を沸騰させた。
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