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第16話「深界への道」



灰の峠を越えた一行は、霧と影に包まれた谷へと足を踏み入れた。

そこは“影の谷”――深界の門が眠る場所。

空間は歪み、魔力の流れは乱れ、風すら意思を持つかのように吹き抜けていた。


「ここが……深界の門」

セレナは巨大な石の門を見上げる。竜の骨を模したその造形は、まるで世界の奥底へと続く裂け目のようだった。


大きな台座がありその周りを囲うように 4 つの台座がある。


リィナが静かに言った。

「門を開くには、異なる3つの属性者、竜、そして竜の巫女が必要なの」


「そういうことだったの」


「ルゥはその大きな 台座、セレナは正面、みんな 周りに」


カイルは剣を構え、ミーナは氷の結界を展開し、リィナは風の精霊を呼び出す。

ルゥが竜の力を解放し、セレナは巫女として核へと手を伸ばした。

セレナの指輪が輝き始めた。


五つの力が魔法陣に注がれ、空気が震え、門がゆっくりと開き始める。

その奥には、青白く輝く空間――深界の中心が広がっていた。


「結界の核が……見える」

ミーナの声は、どこか緊張を含んでいた。


セレナが核に触れると、光が爆ぜ、魔力が流れ込む。

黒いひびが走っていた核は、五人の力によって修復されていく。

空間が安定し、深界の揺らぎが静まっていく。


「……やったのか?」

カイルが息を吐く。


リィナは頷きながらも、目を閉じて言った。

「一旦はね。結界は繋ぎ直された。これで、世界の魔力は持ち直すはず」


ミーナは核を見つめながら、低く呟く。

「でも、これは応急処置。根本的な歪みは……まだ奥にある」


セレナは空を見上げた。

深界の空は静かに輝いていたが、その奥に何かが潜んでいる気配があった。


「異なる力がそろった。これならいける……そう思ってたけど」

彼女は拳を握りしめる。

「まだ終わってない。これは、始まりにすぎない」


その瞬間、空間が震えた。

核の奥から黒い魔力が噴き出し、空気が凍りつく。


「違う……何かが来る!」

リィナが叫ぶ。


黒い霧が渦を巻き、そこから一人の男が現れた。

漆黒の衣を纏い、瞳は深界そのもののように冷たい。


「誰だ、お前は!」

カイルが剣を構える。


男はゆっくりと歩み出て、口元に冷たい笑みを浮かべる。

「我が名はヴァルゼイン。貴様らは“魔王”と呼ぶがな」


その名が告げられた瞬間、空気が軋み、魔力が暴走を始める。


「巫女に竜、風、氷、炎……揃いすぎだな。だが、無駄だ」

ヴァルゼインが手を上げると、空間全体が黒く染まり始めた。


「来る……っ!」

ミーナが結界を張ろうとするが、魔力が乱れて術が崩れる。


セレナが叫ぶ。

「リィナ!」


リィナは風の精霊を呼び、両手を広げて立ちはだかった。

「風よ、守りの壁となれ――《疾風障壁》!」


風が唸りを上げ、魔王の魔力を受け止める。

空間が軋み、リィナの足元が崩れかける。


だが、彼女は踏みとどまった。

風が渦を巻き、仲間たちを包み込むように守る。


魔王の攻撃は、風の障壁にぶつかり、空間を震わせながらも押し返された。


リィナは膝をつきながらも、振り返って言った。

「今よ……次は、私たちの番!」


──そして、夜が裂ける。


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