第28話:次元廻廊の裁き
戦場。
永劫光環によって再生を繰り返すレオニードは、ついに筋骨隆々とした異形へと変貌した。
その巨体は山のようにそびえ立ち、触手は鋼鉄の鎖のように硬化し、振り下ろされるたびに地面を砕いた。
兵士たちは恐怖に震え、誰もが後退し、戦場は絶望の空気に包まれる。
アーサーは剣を構え、必死にその攻撃を受け止めながら叫んだ。
「クソ! これ以上は持たない!」
クラリッサは荒い息を吐き、膝をつきながらも瞳に決意を宿す。
「……いくよ」
彼女は両手を広げ、術式を展開した。
「――次元廻廊!! 座標は……あのジジイ!!」
巨大な魔法陣が戦場に広がり、レオニードの巨体を包み込む。
空間が歪み、雷鳴のような轟音が響き渡る。
兵士たちはその異様な光景に息を呑み、誰もが立ち尽くした。
――その頃、ノルディア城内。
グレゴールは浮遊しながら地下への階段を下ろそうとしていた。
「……この下が臭いな…」
にやりと冷笑を浮かべるグレゴール
その瞬間、空間が揺らぎ始めた。
「……これは……?」
時空が歪み、目の前に巨大な影が現れる。
レオニードの筋骨隆々とした顔が、城のフロアに突如として出現したのだ。
「まさか!!」
次の瞬間、レオニードの巨体が城の内部に広がり、凄まじい爆発を引き起こした。
轟音と共に石壁が砕け、炎と氷が入り混じる衝撃波が城全体を飲み込む。
グレゴールは絶叫しながらレオニードと共に爆ぜ、ノルディア城は崩壊した。
――戦場。
クラリッサは魔力を使い果たし、地面に倒れ込む。
アーサーは慌てて駆け寄り、彼女を抱き起こした。
「クラリッサ! 大丈夫か!」
クラリッサはかすれた声で答える。
「……もう限界……倒せたか分からない……早く逃げよ……」
アーサーは妹を抱え、崩壊する城を背に走り出した。
戦場は炎と氷と瓦礫に覆われ、誰もが次の瞬間を予測できない混沌へと変わっていた。
だがその混沌の中で、兄妹の決意だけが確かに輝いていた。




