第25話:氷天極光
半分砕かれ、瀕死のはずだったレオニード。
しかしその巨体の上空に突如、金色の環が広がり始めた。
環はゆっくりと降下し、レオニードの頭上に重なる。
「グオォォォォォ!」
環が落ちると同時に、レオニードの肉体が蠢き始めた。
砕けた骨が再生し、黒い瘴気がさらに濃くなる。
異形の姿へと形態を変え、より凶暴な魔物へと進化していく。
クラリッサは舌打ちし、雷牙刀を握りしめた。
「チッ! しつこいな!」
アーサーは剣を構えながら叫ぶ。
「どうする!」
クラリッサは深く息を吐き、決意を込めて答える。
「……もうMP切れ! アレをする! 私の回収をお願い!」
アーサーは一瞬ためらったが、すぐに頷いた。
「……わかった! お前は俺が回収する! やれ!」
クラリッサは目を閉じ、両手を広げる。
「――マナブースト解放!!」
その瞬間、クラリッサの体が青白い光に包まれた。
光は脈動し、彼女の周囲に魔力の奔流が渦巻く。
雷と氷の気配が融合し、空気が震え、兵士たちは思わず後退する。
天空に巨大な魔法陣が展開された。
複雑な紋様が幾重にも重なり、氷の結晶と極光が降り注ぐ。
夜空は蒼白に染まり、戦場全体が凍りつくような冷気に包まれた。
クラリッサの声が響き渡る。
「――超高位魔法! 氷天極光!!」
その瞬間、天から降り注ぐ極光が氷の嵐となり、雷鳴を伴ってレオニードを直撃した。
氷の刃が無数に突き刺さり、雷が内部を貫いて爆ぜる。
レオニードの咆哮は戦場を震わせ、巨体は氷と雷に縛られながらのたうち回る。
「グオォォォォォォ!」
兵士たちはその光景に息を呑み、誰もが言葉を失った。
アーサーは妹の背を見つめ、剣を構え直す。
「クラリッサ……すげえ……!」
夜の戦場は、氷と光の神話に包まれ、決戦の幕が切って落とされた。




