第22話:二つの力
エルダーン領主館の武道場。
そこに現れたのは、領主カイルの妻であり、エルミナ国筆頭魔導士のミーナ・エルダーンだった。
彼女は鋭い眼差しで夫を見据える。
「クラリッサが雷牙を出した?……カイル、ボケたの?」
カイルは慌てて手を振る。
「いやホントなんだって! クラリッサ、やってみてくれ」
クラリッサはもじもじしながら木剣を握り、深呼吸をする。
「……えい!」
次の瞬間、雷光が迸り、武道場の空気を震わせた。
ミーナは目を見開き、思わず呟く。
「……まじかいや……」
カイルは得意げに笑う。
「だろ? しかも……」
ミーナは目を細め、空気を感じ取る。
「……うん、冷気を感じた……これは天賦の才かも」
カイルは首を傾げる。
「……てん……?」
ミーナはクラリッサに向き直り、真剣な声で命じた。
「……左だな。クラリッサ、左手を出して」
「こう?」クラリッサは小さな手を差し出す。
「手のひらに雪とか氷をイメージして……」
「こうかな……?」
その瞬間、クラリッサの手のひらに青白い氷が発生し、淡い光を放った。
武道場の空気が一気に冷え込み、白い霧が漂う。
ミーナは驚愕の表情を浮かべ、低く呟いた。
「……右手に雷牙、左手に冷気……とんでもないね……」
アーサーは目をキラキラさせ、妹を指差す。
「クラリッサ、すごいだろ!」
ミーナは微笑み、静かに頷いた。
「ああ……お前の妹はすごいよ。間違いなく、未来を変える力を持っている」
武道場に漂う雷と氷の気配は、クラリッサの運命が大きく動き出す予兆だった。




