第22話:触手の再生
化け物と化したレオニードは前脚を失い、地面をのたうち回っていた。
その巨体が地を揺らし、血と魔力が混じり合った瘴気が広がる。
その時――頭上に暗雲が立ち込め、稲光のような影が走る。
闇の中から、グレゴールが姿を現した。
「……まだ終わりじゃない」
彼が手をかざすと、レオニードの切断された前脚から黒い触手が伸び始める。
肉が蠢き、異形の再生が進んでいく。
「グオォォォォ!」
レオニードは咆哮し、さらに凶暴さを増していった。
アーサーは即座に声を張り上げる。
「侍女を背にしてる者はそのまま逃げろ! 残りは陣形を整えろ!」
そして振り返り、ロトに向かって叫んだ。
「ロト! お前も逃げろ! 王女を頼んだ!」
ロトは一瞬ためらったが、すぐに頷き、アメリアを守るため馬を走らせる。
その背後で、クラリッサが雷牙刀を握りしめ、アーサーに叫んだ。
「アーサー! 20秒稼いで!」
アーサーは頷き、剣を構えて前へ躍り出る。
「任せろ!」
クラリッサは馬上で目を閉じ、詠唱を始めた。
雷と氷の気が彼女の周囲に集まり、空気が震え始める。
その声は静かだが、確かな力を秘めていた。
夜の戦場は、決戦の幕開けを告げるように轟音と魔力で満ちていった。




