第18話:雷牙閃轟陣
クラリッサが振り返り、声を張り上げた。
「見て!」
振り返ったアーサーの目に、巨大な影が映る。
「なんだあれは!」
クラリッサは歯を食いしばりながら答える。
「あの化け物が……レオニードよ!」
赤黒い魔力を纏ったレオニードが、よだれを垂らしながら四つ足で地を蹴り、騎馬隊を追ってくる。
その巨体は逃げ惑う人や馬を容易く蹴散らし、咆哮が夜空を震わせた。
「このままじゃ追いつかれる……どうする!」
アーサーが焦りを滲ませる。
その横で、アメリアはロトの背中に身を預け、疲労で眠り込んでいた。
クラリッサは決意を込めて叫ぶ。
「私達で殺るしかない!」
アーサーは頷き、馬を減速させて騎馬隊の最後尾へ移動する。
クラリッサは馬上で後ろ向きになり、腰に差していた雷牙刀を抜いた。
刃が雷光を帯び、空気が震える。
「――雷牙閃轟陣!」
轟音とともに雷撃が奔り、レオニードの前足を切り裂いた。
巨体が大きく揺らぎ、血と火花が飛び散る。
「グオォォォォォ!」
レオニードの咆哮が夜を震わせ、地面を揺らす。
クラリッサは汗を滲ませながら刀を構え直す。
「……まだ終わってない!」
アーサーは剣を抜き、騎馬隊の盾となるべく構えた。
夜の逃走劇は、ついに反撃の戦場へと変わろうとしていた。




