第17話:疾走の果てに
アメリアはクラリッサを抱え、神域の力で高速移動していた。
「ヤバい……もうそろそろ限界……重い……」
クラリッサが即座に反論する。
「はぁ? 私は重く無い!」
アメリアは息を切らしながら叫ぶ。
「ちょっとは痩せなさいよ! 男だってもっと軽いわ!」
クラリッサは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「王女だからって調子に乗ってんなよゴラァ!……あ! 見えてきた!」
前方には、アーサー率いる騎馬隊二十頭が侍女たちを載せて疾走していた。
アメリアは声を張り上げる。
「アーサー! 受け取って!」
そのままクラリッサを投げ飛ばす。
「ギャァァァ!」
アーサーは馬上で身をひねり、見事にクラリッサをキャッチした。
「……っ、危なっ!」
クラリッサは怒り心頭で叫ぶ。
「殺す気かてめぇ!」
アメリアはすぐさま副団長ロトの馬に飛び乗った。
ロトは驚きながらも安堵の声を上げる。
「姫様! ご無事で!」
アメリアは肩で息をしながら答える。
「大丈夫よロト……でも体力が限界……」
その背後で、地鳴りのような音が響いた。
巨大化したレオニードが四つ足で地を蹴り、人々を蹴散らしながら猛然と追いかけてくる。
赤黒い魔力を纏ったその姿は、まるで魔獣そのものだった。
夜の王城を抜ける逃走劇は、さらに苛烈さを増していった。




