第14話:伝心の決断
クラリッサは静かに目を閉じ、魔法を発動した。
〈サイレンスリンク〉――他人には聞こえない思念を直接届ける秘術。
〈アメリア、聞こえる?〉
〈うん、聞こえる〉
アメリアがクラリッサを見ると、彼女の顔は真っ青になっていた。
〈……インサイトアイであのジジイを見た。とんでもない数値…5500…しかも魔族反応……〉
〈……え……〉
〈……戦ったら確実に死ぬ。あんたでも無理〉
アメリアは唇を噛みしめる。
〈でも、このままじゃ……〉
クラリッサは必死に思念を飛ばす。
〈今、同時にアーサーとも伝心してる。逃げるしかない。私はあんたを――王女を、そして親友を守るのが仕事……逃げ切れるかわからないけど、あんただけは死なせるわけにはいかない〉
その時、グレゴールが床すれすれで浮遊しながら進み出る。
隣には、解放されたレオニードが不気味に笑いながら並び立った。
アメリアは心の中で呟く。
〈……私がイキって変な正義感を出して暴れたら、あんたやアーサーまで危険な目にさらすのね……〉
クラリッサの返答は鋭く、しかし悲痛だった。
〈……その通り。選択肢は逃げるしかない。ノルディアには気の毒だけど……ここ最近のモンスターの異常も関係してると思う〉
アメリアは息を呑む。
〈……明日は……エルミナかもしれない……〉
闇の中で、二人の心だけが繋がり、決断の重さが胸にのしかかっていた。




