第12話:裏切りの刃
パッ……!
消えていた照明が再び灯る。
その瞬間、場内の視線は凍りついた。
レオニードは王の正面に立ち、ナイフを突き出そうとしていた。
だが、その腕と肩はアメリアにがっちりと掴まれている。
王女の剛力により、レオニードは一歩も動けなかった。
王「……これは……」
ユリウスが一歩前に出て、冷静に言葉を放つ。
「……レオニードは暗闇に紛れて王……あなたを刺し殺し、アメリアのせいにしたかったんじゃないかな」
レオニードは歯を食いしばり、怒声を上げる。
「……くそ……離せ……馬鹿力女! お前なんか婚約破棄だ!」
王の声は震えていた。
「……レオニード……なぜ……」
レオニードの瞳には狂気が宿る。
「お前もアメリアも邪魔なんだよ!」
アメリアは冷たい瞳でレオニードを見据え、低く呟いた。
「……王を害そうとするなんて、最低ね。婚約破棄? こっちから願い下げよ」
彼女はナイフを取り上げると、体をひねり――
後ろ回し蹴り!
「この馬鹿王子!!」
レオニードの体は宙を舞い、床に叩きつけられた。
「……ぐぁぁぁ!」
クラリッサが即座に詠唱する。
「――エアバインド!」
透明な風の鎖がレオニードの体を絡め取り、完全に拘束した。
場内の貴族たちは息を呑み、誰も声を発せられない。
その時――。
天窓が開き、黒いフードを被った男が浮遊しながら降りてきた。
その姿に王の顔が蒼白になる。
王「……魔導団長グレゴール……」
闇の幕は、ついに本当の黒幕を呼び寄せていた。




