第6話:雪に潜む影
戦闘の余韻が残る雪原。
アーサーは剣を収めると、護衛たちへ鋭く指示を飛ばした。
「馬車を調べろ。何か仕掛けられているかもしれない」
護衛たちが雪を払い、車体を確認していく。
やがて――馬車の裏側に、札が貼り付けられているのが見つかった。
「……これは」
クラリッサが目を細める。
アーサーが札を手に取り、冷たい声で告げる。
「魔獣誘符だ。濡れていない……走行中に付けられたものだな」
つまり、何者かが雪に潜み、馬車が通った瞬間に札を貼り付けたのだ。
馬に踏まれる可能性すらある危険な状況で――それでも狙いを外さず、確実に仕掛けてきた。
アメリアは息を呑み、拳を握りしめる。
「……じゃあ、私を狙って魔物を呼び寄せたってこと?」
アーサーは頷き、険しい眼差しを向ける。
「そうだ。王女殿下、あなたは何者かに狙われている」
クラリッサは屋根から飛び降り、アメリアの傍に立つ。
「アメリア、今は私たちを信じて。必ず守るから」
アメリアは唇を噛み、悔しげに呟いた。
「……守られるだけじゃ嫌。私だって戦いたいのに」
雪原に漂う緊張は、戦闘の終わりではなく、さらなる陰謀の始まりを告げていた。




