表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された令嬢、辺境でドラゴンを育てる  作者: 木挽
アメリア・エルミナール
103/130

第5話:雪原の襲撃



白銀の雪原を進む王家の馬車。

吐息が白く舞い、車輪の軋む音だけが静寂を破っていた。


しかし――突如、雪原の影から十数体の白熊型モンスターが姿を現す。

その巨体と咆哮に、護衛たちは一瞬息を呑んだ。


「全員、隊形を整えろ!」

鋭い声が響く。指揮を執るのは――

アーサー・エルダーン。

若き天才指揮官。祖父は剣聖カイル・エルダーン、祖母は魔導士ミーナ・エルダーン。セレナと並ぶ英雄の血を継ぐ者。


クラリッサは即座に馬車の屋根へと跳び上がり、周囲を警戒する。


「アメリア、馬車から出ないで!」


だが馬車の中でアメリアは拳を握りしめ、唇を噛んでいた。

「……私だって戦えるのに。どうしていつも守られてばかりなのよ」

その瞳には、祖母セレナの血を継ぐ者としての誇りと焦りが宿っていた。


アーサーは剣を抜き、雷を纏わせる。

「――雷牙!」

雷光が走り、白熊型モンスターの群れを一閃する。


さらに彼は剣を振り上げ、陣を展開する。

「轟閃陣!」

雷刃が三重に広がり、雪原を轟音と共に切り裂いた。

十数体のモンスターは瞬く間に倒れ、雪に沈む。


しかし――上空から影が覆いかぶさる。

「キングワイバーン……!」

巨大な翼を広げ、咆哮と共に急降下してくる。


クラリッサは屋根の上で両手を掲げ、氷の魔力を解き放つ。

「――氷獄葬華!」


氷の花が咲き乱れ、瞬時に巨大な結界を形成。

氷の華が鋭い刃となり、キングワイバーンの翼を切り裂き、空中でその動きを封じる。

氷の嵐が吹き荒れ、王国の馬車を守るように輝いた。


雪原に静寂が戻る。

アーサーは剣を収め、クラリッサに視線を送る。

「見事だ、クラリッサ」


クラリッサは肩で息をしながらも、淡く微笑んだ。

「兄上こそ、おじいちゃん譲りの雷牙だったわ」


馬車の中でアメリアは悔しげに拳を握りしめる。

「私も……戦いたかったのに」

その呟きは誰にも届かず、雪原の静寂に溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ