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ひよっこ錬金術師はくじけないっ! ~ニーナのドタバタ奮闘記~  作者: ニシノヤショーゴ
6章 目指せ入賞! 青空マーケット
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発明品を売り込めっ!

 わらわらと集まってきた男の子三人組。やんちゃそうな男の子たちが注目しているのは<つむじ風の卵>に添えられたカラフルな紹介カードだ。


<タマゴをわると、あら不思議! ふわっと、足元から風が吹いてくる!? 可愛いあの娘のスカートをめくってみたい、イタズラ好きな男の子にオススメです!> 


「うわ、スゲー! これでスカートめくりができるんだって!」


「えー、ホントかよー」


「いや、ほら、ここに書いてあるもん。なぁ、ねーちゃん!?」


 スケベな男子たちの目が一斉に向けられる。

 ニーナはにっこりと笑って、本当ですよと答えた。


「ほらな。ねーちゃんもそう言ってるし、試しに買ってみよっかな」


 小遣いを握りしめる男の子がそういうと、俺も、俺も、と二人がはしゃぐ。先に取られて売り切れてしまうと思ったのだろう。


「まだかばんの中にあるから、みんな慌てなくていいですよ!」


 少しでも年上らしく見られたくて、いつもより余裕そうな表情を作ってみる。イメージは、ダンやテッドと接するときの姉の仕草。

 けれどやんちゃな彼らからすれば、ニーナはスカートを履いた女の子でしかない。


「それなら一個ねーちゃんの真下で割ってみてもいい?」


「だーめ」


「けちっ!」


 そう言いつつもきっちりとお金を払っていってくれる男の子たち。投げ捨てられたお金代わりのフクロウコインも、ツンデレかと思えば可愛いもんだ。


「みんなー、もし怒られてもお姉ちゃんのせいにしちゃダメだよー! 自己責任でお願いねぇー!」


 とたとたと、駆けてゆく後ろ姿を見送りながら、なんとなく微笑ましい気持ちになる。みんな元気だなぁ、なんて思ってみたり。

 などと思っていたのだが、するとなぜか三人組が走って戻ってきた。そして、どうしたのと問う間もなく、シャンテの足元目掛けて卵を投げつけたのである。


「あっ……!」


 ──パシッ!


 ニーナは思わず片目をぎゅっとつむるけれども。

 しかし卵が地面に落ちることはなかった。なんと落ちる寸前にキャッチしてしまったのである。

 シャンテはにこやかに笑って、はい、と卵を返しながら一言。


「次、同じことしたら怒るわよ?」


 逆らってはいけない相手に手を出してしまったと理解したのだろう。少年たちはこくこくと、とても素直に頷いた。そして回れ右をして、逃げるように立ち去った。さすがはシャンテちゃん。終始生意気な態度をとられていた自分とは大違いである。


「で、いつのまに兄さんはアタシの前に?」


 ほんとだ。気付かなかった。

 テーブルの上でちょこんと大人しくしていたはずのマスコットブタは、いつのまにかシャンテの目の前を陣取っていた。


「いやー、ここがベストなポジションかと思って、つい」


 ──どごぉ!


 どうやらロブはスカートがふわりと浮かぶことを期待して、よく見える位置まで移動していたようである。これはどごぉされても文句は言えないな、とニーナは苦笑した。でもその執念だけは認めてあげたい。


 たんこぶを作ったロブは、ふらふらと、まるで行き倒れるかのように人々が行きかう大通りへと入り込む。小さなミニブタは、それだけで知らずのうちに踏まれてしまいそうで、さすがに心配になったけれども。


 ぽてん、とロブが道半ばで横たわる。それも美人さんの目の前で、どうぞ拾って下さいとばかりに。

 するとその女性はロブの狙い通り、ロブのことを優しく抱きかかえた。若くて、艶やかで、そして豊満な胸をお持ちの、大人の女性である。


「あら、こんなところでどうしたのミニブタさん?」


「店主に商品が売れなくて八つ当たりされたんです。おろおろ」


「この子、人の言葉を話せるのね。泣きまねも可愛らしいわ。それで、あなたのお店はどこ?」


 女性に訊ねられたロブは前足でニーナたちがいる場所を指し示す。


「そっか。それじゃああなたがこれ以上怒られないように、私が買い物していってあげる」


 騙されてますよ、お姉さん。

 と、言いかけた言葉をぐっと呑み込む。あれはあれで、ロブなりの接客なんだと良いように考えることにしよう。


 ──だからシャンテちゃんも、どうかその苛立ちを抑えてね。


「いらっしゃいませ!」


 雑念をすべて頭から放り出して元気よく挨拶をすると、女性は素敵な笑みで返してくれた。腕の中に抱かれたロブもニコニコしている。きっと普段味わえない柔らかさに包まれて、さぞ幸せなのだろう。


「なにがおすすめかしら?」


「そうですねぇ」


 ポーションにはまったく興味を示していないことから、きっと女性は冒険者ではないのだろう。それに同性であるニーナから見ても美しい人だから<大人顔負けグラマラスチョコレート>も必要なさそうだ。


「でしたら、こちらの<ヤギミルクたっぷりヌルテカ泡ぶろ入浴剤>はいかがですか? お姉さんの綺麗な肌をたっぷりの泡とほんのり甘い香りが包み込んでくれますよ! しかも、お肌もツルツルになるんです!」


「たしかにみんなお肌につやがあって羨ましいわ」


 そういって女性はロブのほっぺたを指先で撫でた。エロブタはとっても嬉しそう。


 ──たしかに私とシャンテちゃんとで泡ぶろを試したあと、ロブさんも浴槽に突っ込んだけどさ……


 気持ちは複雑だったが、ニーナはなにも言わずに笑みを浮かべておくことにした。


「ここにあるのはどれも同じ?」


 女性がバスケットに盛られた入浴剤を指さしたので、そうです、とニーナは頷いた。すると女性は、お手頃な価格だし、それじゃあ試しに一つ頂こうかしら、と言ってくれる。


「ありがとうございます!」


 グッジョブだよ、ロブさん!

 ニーナはすぐさまかばんから綺麗な<ヤギミルクたっぷりヌルテカ泡ぶろ入浴剤>を取り出すと、女性の目の前でひよっこ印の紙袋に入れて、それを手渡した。代わりに代金として青いフクロウコインを二枚、計200ベリルぶん頂戴する。


「これでもう怖い店主さんに怒られなくて済むわね」


 女性は冗談っぽく笑って、ロブをニーナのもとへと返す。ロブはまだどこか夢見心地で、極上の谷間から離れることを名残惜しそうにじたばたしているが、もうお別れの時間なので諦めて欲しい。


 もちろん女性を見送ったあともニーナたちの奮闘は続く。客が客を呼ぶように、次から次へと人が立ち寄ってくれたのだ。最初のお客さんがなかなか来てくれなかったのが嘘のよう。みんながみんな商品を買ってくれたわけではないけれど、それでもお客さんがいるというだけで繁盛店に見えるようなので、どんなお客さんでもウェルカムだった。


 ロブは意外にも人気者だった。通りすがりの人に声をかけては足を止めさせて、店へ次々と呼び込んでくれる。女性ばかりに声をかけていたが、店で売られている商品は女性向けの発明品も多く、売れ行きも好調である。特に<ヤギミルクたっぷりヌルテカ泡ぶろ入浴剤>は予想以上の反応で、頑張って作った甲斐があったなぁと、ニーナは心から思った。


 ──これは明日に向けて追加で錬成しなくちゃいけないなぁ。


 もちろんこれは嬉しい悲鳴である。


 そうして時間は過ぎていき、時刻は正午一時を迎える。イベント開始からちょうど三時間。中間発表が行われる時間だ。いまごろイベントステージで各部門の上位三店舗が発表されているはずだが、わざわざステージまで見に行かなくとも、フクロウ型の貯金箱が現在の順位を声で教えてくれる仕組みとなっていた。


「ちゅーかんはっぴょぉーう!!」


「うひゃあっ!?」


 ちょうどお客さんを見送ったところで、いままで一言も声を発しなかったフクロウが突然叫び出したので驚いてしまった。存分に羽を広げて、ここが自分の見せ場だと言わんばかりに声高に叫んでいる。


「店舗名<ひよっこ印のニーナのアトリエ>がこれまでに稼ぎ出した金額は……じゃかじゃん! 4万1200ベリルぅー!!」


「おぉー! よくわからないけど、これって結構すごいんじゃない!?」


 だって、まだ三時間しか経ってないのに4万ベリルも稼げたのだ。このペースで売りまくれば一日で12万ベリル。二日で24万ベリルも売り上げることができる。そうなれば利益だって上げられる。ニーナは顔をほころばせた。


 次はいよいよ順位の発表だ。調合品部門は一番エントリーが多くて、店舗数は九十を超えるという。もちろんどれだけライバルがいようと、目標は三位以内であることに変わりはない。入賞を果たすためにも、せめて一桁には食い込みたいところ。ニーナは祈るように両手を合わせた。


「そしてそしてぇ! <ひよっこ印のニーナのアトリエ>の現在の順位は……じゃかじゃん! 四十七位ぃー!!」


 ──あれ? あれれ??


 手ごたえはあった。

 お客さんも多く来店してくれた。

 それなのに、どうして四十七位?


 目標の三位以内は遥か遠く。ニーナは全身から力が抜け落ちるような感覚に襲われた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 遂に大繁盛! 入浴剤も売れまくりだ! [一言] 大体中間位の順位に居るんですね これからの順位に期待ww
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