かくれんぼと魔法の道具①
滞在三日目の朝、ついに準決勝が始まった。お題はかくれんぼ。昔懐かしの遊びだけれど、この規模でやるとなると、不謹慎ながらも楽しくなってくる。それに魔法のアイテムを使った本気のかくれんぼだなんて、ワクワクしないほうがおかしいじゃないか。
とにもかくにも弾む心のままに。
ニーナたちは食堂を飛び出して、そのままホテルのロビーまで。
「ふう。なんかよくわかんないまま走りだしちゃったね」
「他の参加者たちが走り出すからそれに釣られたけど、まあいいんじゃない?」
「だな。でもこっからは知恵を絞って探さねーと、あてずっぽじゃキツイだろ」
「魔法の道具を三つ使って隠れるって言ってましたよね」
「そうそう。まずはそれがなんなのかの検討から始めるべきだろうな」
珍しくロブがやる気である。美女を助けるため、というシチュエーションがそうさせているのだろうか。何はともあれ頼もしい限りだ。
「でもヒントがないと検討すらつかないよね」
「そうかしら。かくれんぼで役立つ魔法の道具ってなったら、結構絞られるように思うけど」
たしかにシャンテの言う通りかもしれない。自分が隠れる立場になったならどこに身を潜めるだろうか。
「私だったら……まず匂いを辿られないように<匂い消しの指輪>は装備するかも」
「ありえるわね」
「そうか? だって俺たちを決勝に──」
──どごぉ!
涙目のロブをシャンテはじろりと睨む。迂闊なことを言うんじゃない、とその目は無言の圧力をかけていた。
恐らくロブは、自分たちを決勝に進ませるためにあえて匂いを辿れるようにしてあるのではと、そう主張したかったのだろう。けれどそんなことを大きな声で話していたら、魔女のたくらみを知っていることがバレてしまう。
──たしかにロブさんは迂闊だったけど、私も注意しなくちゃ。
「お遊戯会では動物の力を借りてもいいことになっているから、音や匂いの対策はしてあると思うんだよね。特に匂いは、居場所を特定される原因になりえるし」
「ミスティもマルを連れているし、一回戦で敗退したチームの中にも、鷹を使ってウサギを追い詰めていたチームを見かけたわ。動物対策は当然してあると考えるべきね」
とりあえず<消臭の指輪>は確定と考えてよさそうだ。となると、残りは二つ。他にどんなアイテムが考えられるだろうか。
「ねえ、このホテルってたしか屋上はなかったよね?」
「ええ。その代わり煙突がたくさん生えてたように思うけど」
「それじゃあさ、屋根の上ってことは無いかな。魔法の道具でそこまで登って、屋根の上から参加者たちの様子を見降ろしているの。ルチルさんの性格を考えたら、意外と見晴らしのいい場所に隠れてるんじゃないかって思うんだ」
「なるほど、性格からも候補地を絞るっていうのはいい考えかもね。屋根の上ってのはさすがに安直な気もするけど、<ハネウマブーツ>なら簡単に登れるし、確かめてみる価値はありそう」
「案外煙突のなかに隠れようとして、途中で引っかかってお尻振ってるかもなー。いつかの誰かさんみたいに」
「ちょ、ろ、ロブさん!」
あれはちょうど<ハネウマブーツ>の調合に成功して、一人で試してみたときのこと。じゃじゃ馬のごとく扱いの難しい発明品に振り回されて、あろうことか頭から煙突に突き刺さり、自分の力だけでは抜け出せなくなったことが過去にあった。いま思い返しただけでも恥ずかしい失敗談なので忘れて欲しいのだけれど、もっと強めに<どごぉ!>したら記憶から飛んでくれないだろうか。
「それじゃあお尻を振ってるかもしれないお嬢様を助けるためにも、屋根の上を確認してくるわ」
うぅ、シャンテちゃんまで言わないでぇ……!
兄妹二人にからかわれながら、ニーナたちはロビーの正面玄関から外へと出た。
しかしちょうどそのとき、悲鳴にも似た叫び声がどこからともなく聞こえてくる。
「うわあぁぁっ!!」
え、いまの声って、レオナルドさん!?




