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ひよっこ錬金術師はくじけないっ! ~ニーナのドタバタ奮闘記~  作者: ニシノヤショーゴ
13章 マボロシキノコ争奪戦
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この勝負もらったぁ!①

 二回戦を終えたその日の朝、ニーナはいつもよりも三時間遅れで目を覚ました。結構寝たはずだがいまいち寝覚めが悪く、体もだるい。ただこれ以上眠ってしまうと余計に体調を悪くしそうなので、代わりに<レモン香るピリ辛フルーツポーション>を飲んでおく。


 シャンテとロブは既に起きていた。昨夜の件もあってあまり眠れなかったのかもしれない。本来、こういうときに活躍するのが<絶対快眠アイマスク>なのだけれど、もしも誰かが部屋に侵入したときに対応できないと困るという理由から身につけなかった。


「おはよう。二人とも早いね」


「まあね。それよりこのあとどうする? 食堂に行って何か食べる?」


「うーん、そんなにお腹減ってないんだけど……」


 ロブがじっとこちらを見つめている。


「でもなにも食べないのも体に悪いよね。行ったらなにか食べたくなるかもだし、とりあえず行ってみよっか」


 ニーナがそう言うと、ロブは満面の笑みで頷いた。

 きっとホテルの朝食を楽しみにしていたに違いない。自然と目が覚めるまで待ってもらっていたのだろうと思うと、ここで断るのはなんだか申し訳なかった。


 そんなこんなで三人は食堂へと足を運ぶ。昨日とは違って人の姿はまばらで、恐らくほかのチームも朝の時間をゆったりと過ごしているのだろう。生活のリズムが乱れると動きが緩慢になってしまう気持ちはニーナにもよくわかる。というより、いまがまさにそうだった。ニーナは込み上げてきたあくびを噛み殺す。


「あ、おねーさんたち!」


 声をかけてきたのはあの子供たち三人組だった。

 昨日の今日でいったいどういう神経をしているんだろうか。


「なあなあ、ゲームはクリアできた?」


 もちろんニーナたちはそれを無視した。答える義理はないし、そもそもあのとき近くにいたのだから知らないはずがない。それなのに知らないふりをして、なんで教えてくれないんだよ、としつこく絡んでくる。


「そういうアンタたちはどうなのよ」


「そりゃあもちろんクリアしたぜ。迷路っつっても簡単だったし、ビビらなきゃあんなの余裕だって。まあノーラがきゃあきゃあうるさかったぐらいか」


「うわ、イヴァン君ひどい! そういうの言っちゃう? 言っとくけど私はビビッてなんかないから!」


「ノーラがランプ持ってたら間違いなく割ってただろうから危なかったぜ。なあ、モーゼス。お前もそう思うだろう?」


 モーゼスと呼ばれた少年は、食事用のナイフをくるくるといじりながら静かに頷いた。

 彼の癖を見ても、やっぱり昨日襲ってきたオバケは彼らで間違いないと思うけれども、まるでそんなこと知らないとでも言うかのように会話が進んでいく。ニーナは彼らを無視して離れた位置に席を取った。


 昨夜と違って、朝食はメニュー表を見ながら注文するスタイルだった。ニーナはパンと紅茶とヨーグルトを係りの人にお願いする。対応してくれたのは黒髪のメイドさんだった。小柄で丸顔。さらさらとした黒髪は肩ほどで切り揃えられており、顔の輪郭よりも大きな黒縁メガネがよく似合っている。年齢は同じくらいに見えるが、それなのに服の上からでも胸のふくらみがちゃんと感じられて、正直ちょっとうらやましい。


 そんなメイドさんのことをロブは朝からナンパして、そしてシャンテに叱られた。けれどロブはめげずにポテトにハンバーグなどこってりしたメニューを注文する。ニーナやシャンテが作る料理はどちらかというと野菜多めなので、ここぞとばかりに肉を食べたいようである。


 朝食のあとはまた部屋に戻って思い思いの時間を過ごした。途中からはフラウたちと合流して、二回戦について話し合ったりもした。やはりというか、フラウたちは謎のオバケ三人組に襲われることもなく、危ない目に合うこともなかったそうだ。


 ちなみにフラウたちも二回戦は合格。とにかくランプを手にしたフラウが何をされても平常心で、ゾンビの群れが襲ってきても、トマトが飛んで来ても、それらをすべてひらりひらりと躱してしまったらしい。その一方で盾役のオドは亡者の波にのまれてしまい途中でリタイア。ミスティもフラウとはぐれてしまって、真っ暗闇のなかでデタラメに剣を振り回していたそうだ。


「それじゃあ結局のところ一人でクリアしちゃったんだ」


「そういうことになりますねー。いやあ、置いていった二人には申し訳ないことをしました」


「いえ、私なんてずっと怖がってばっかりで、勇者としてなんの役にも立てませんでしたから」


 話によるとミスティはかなりの怖がりだったそう。彼女の驚く声に驚かされたとオドは言う。恐怖から足がすくんで歩くペースも遅かったらしいので、そういう意味では二人を置いていく判断をしたフラウの選択は正しかったのかもしれない。


「三回戦は食堂に集まってルール説明を受けるみたいだけど、どんなゲームなのかな?」


「どうでしょうねー。噂では結構な数のチームが二回戦で脱落したって話ですけど」


「そうなんだ。ちなみにその噂はどこから?」


「ホテルをぶらぶらしてた時に小耳に挟んだのですよ。そうそう、ロブさんがプールでナンパしてた三人組も残ってるらしいですよ。良かったですね」


「おー、あのねーちゃんたち意外とやるんだな。そんじゃあもし三回戦で戦うことにでもなったら、この俺様が先陣を切ってタックルでもかましてやると……おぶっ!」


 邪な考えをただす正義の鉄槌がロブの頭上に落とされた。今日も痛そうである。


 他にもニーナたちが知っている範囲ではレオナルドのチームと、一回戦で出会ったあの爽やかなマッチョたちもクリアしたらしい。あとはVIPルーム組もそのまま三回戦へと進出してくるはず。しかも噂によればそのチームは金等級の冒険者たちの集まりらしい。ギルドから金等級の称号が与えられたということは、つまり過去に世界樹を攻略したことがあるということだから、かなりの強敵であることは間違いないだろう。


 もう一組、ニーナとしては仮面の人たちがどうだったのか気になるところだが、彼らについての噂は耳にしなかったそうだ。


 それからはまた自分たちの部屋に戻って三回戦までのときを過ごした。その間ニーナはというと新しいレシピについて考えていた。できる限り平常心でいようと思ったら、自然と錬金術のことを考えている自分がいた。おかげで一つ試してみたいレシピが思い浮かんだので、家に帰ったら取り組んでみたいと思う。


 そして時計は進み、ニーナたちは次の決戦の舞台へと赴くのであった。

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