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ひよっこ錬金術師はくじけないっ! ~ニーナのドタバタ奮闘記~  作者: ニシノヤショーゴ
13章 マボロシキノコ争奪戦
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決戦の地、モノリス島へ!

 やたら大掛かりな設備に、目を丸くするほど術式が書き込まれた特別な<風紋>──通称<大陸間トランスポートシステム>──を通じて空間を超え、ニーナたち六人と一匹は別の大陸へと転移する。といっても大部屋から大部屋へと、非常によく似た部屋を行き来しただけで、転移直後は本当に空間を跳び越えることができたのかと疑問に思っていた。


 しかし係りの者に案内されて屋外へと出たとき、ニーナは本当に別世界にやって来たのだと確信した。


 ──うっ、暑い!


 眩しい直射日光に、ニーナは思わず手のひらを掲げて太陽を遮る。

 クノッフェンはいま、冬真っただ中。温暖な気候ということもあり雪が降ることは無いが、それでも外を出歩くときはコートが手放せない。だからギルド会館まで歩く際にも厚着をして、そのまま転移が終わったいまもそのままだったのだが、これはいけない。ニーナたちはすぐにコートを脱いだものの、久々の夏を思わせる陽気に、それでも暑いと感じてしまう。


「本当にこっちは夏なんだね」


 ですねぇー、とフラウがいつもの気の抜けた感じで返事をする。暑いのは苦手なのか、早くも手でうちわを作って仰いでいた。


「慣れない気候だと大変ですよね。くれぐれも体調には気を付けてくださいね」


 そう言って係りの女性は、施設前に待たせてあった馬車にニーナたちを案内する。きっと自分たちのような別の大陸から来た相手に慣れているのだろうな、とニーナは女性の対応を見ながら思う。


 それから馬車に揺られること三十分ほど。ニーナたちは荷台で揺られながら簡単に着替えを済ませた。事前にこちらは夏の気候だと訊いていたため、服装についても重ね着したものを脱ぐだけで対応できるように準備はしていた。そのぶん荷物は増えるが、フラウがいてくれるので手荷物がかさばることは無い。


 そのフラウはというと、魔女らしい黒い服装から真っ白なワンピース姿へと、見るからに涼しげな服装へと衣替えしている。帽子もつばの広い麦わら帽子だ。


「ちょっとぐらいおへそがチラリしてくれるのを期待してたんだけどなー、みんなノリが悪いぜ」


「うっさいわよ、兄さん」


 そんな感じで和やかに談笑していると、馬車はひとまずの目的地に辿り着く。目の前にはエストレア家が所持する大型船。白くて、大きな帆が立派で、流線型のフォルムがカッコいい。


 船着き場にて係員に招待状を見せて乗船する。ここから丸一日かけて船はモノリス島への航海へ乗り出すこととなる。夜通しということで、それぞれチーム単位で部屋が割り振られていたり、食堂が完備されているなど、まるで宿泊施設にいるかのようだ。


「人多いね。みんな参加者なのかな?」


 なんだかみんな強そう、と早くも緊張気味のミスティが言う。

 ちなみに愛犬のマルは今日もミスティの腕の中。招待状には動物を連れてきてもいい、争奪戦では必要に応じて動物パートナーの力を借りてもいいらしいのだ。


 そんなわけでフラウ、ミスティ、マルと、シャンテが三馬鹿と呼ぶ舎弟のなかから選ばれたオドがチームを組んで協力してくれることになっている。オドは冒険者崩れで、一応銅等級の資格を有する実力者ではあるため、なにかと役に立ってくれるはずだ。後の二人、バッカスとジェイコブはそれぞれ、見た目によらず料理と錬金術に心得があるため、もしもの時はニーナの代わりに<レモン香るピリ辛フルーツポーション>を納品してくれることになっている。オドだけが錬金術に対して役立たずなのでこちらに来てもらったのだ。


 この六人の中だと一人だけ年齢も背丈も飛びぬけているので、なんだか保護者のようだなとニーナは思う。オド自身も若い女の子に囲まれることに慣れていないからか、先ほどからずっと居心地が悪そうに無精ひげをさすっている。


 なお、ロブはパートナー枠ではなくて、ちゃんと人間として登録してある。ブタであると偽ればもう一人登録できて有利となるものの、もしも変身したあと正体がバレれば、それだけで失格は免れないだろう。使い魔が化けただけ、という嘘も通じないかもしれない。<おしゃべりリップシール>のようなアイテムを使われたらそれまでだからだ。


 部屋に荷物を置いて、それからまたみんなで集まって甲板に出る。動き出した船が大海原を進んでいく。天気は良好。風は少し強いが、追い風なので船旅にとってはプラスに働いてくれると思う。ここまでは順調そのものだ。


 とはいえ、まだ本番はなにも始まっていない。メイリィから受け取ったチラシの募集要項には、百近くのグループに参加してもらうとあった。つまりそれだけ多くのライバルがこの船に乗っていることになる。しかもみんな選考を通じて選ばれた存在のはず。ミスティではないが、みんなすごそうに見えてしまって仕方がない。


 ──まあ、私たちも含めてどんな基準で選んでもらえたのか、そもそも島でなにを競い合うのか、さっぱりわからないんだけどね。


 船端に立ってぼんやりと海を眺めながら思う。

 と、不意に視線を感じたニーナは肩越しに後ろを振り返った。


「どうしたの?」


 そう訊ねたシャンテに、うん、ちょっと視線を感じて、とニーナは答えた。仮面で顔を隠した人物がこちらをじっと見ていたような気がしたのである。その人はこの暑いなか、フード付きのローブを身につけており、顔も隠されていることから性別もうかがえなかった。


 あの人も参加者なんだろうか。

 リムステラの件もあり、ニーナはその人物が怪しく思えてしまう。


 しかしそんな不安を余所に、船は何事もなく順調に進んでいった。

 そして翌日の正午過ぎ、ニーナたちは戦いの舞台であるモノリス島へ足を踏み入れるのであった。

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