本日はピクニック日和②
一気に開けた視界。
生い茂る木々の向こう側に突如現れた絶景を前にして、隣でミスティが思わずといった様子で感嘆の声を漏らす。
「すごいです。森の中にこんな名所が存在するなんて……」
「ですよね! 私も初めて見たときはすごく驚きました。でも近くで見るともっとすごいんです。滝の音とか、迫力が全然違うんですよ」
さあ行きましょう、とニーナは先頭に立って歩を進める。
まぶしい日差しと、しぶきを上げる滝と、切り立った岩場にかかる蔦のカーテンと。
自然が織りなす光景は、初めて目の当たりにしたときと同様にニーナの好奇心をくすぐってくる。
「……うん、あの辺りが良いかな」
滝つぼ近くの、ごつごつとした石が転がる川沿いから少し離れたところに、草花が生い茂っているのが見えた。ピクニックシートを広げるなら、あの辺りがいいだろう。やわらかい土の上ならお尻が痛くなる心配もない。
荷物を降ろして、シートを広げて。風でシートが飛んでしまわないように、降ろしたばかりの荷物をその上に置いて。
近くに木陰が無いために日差しが眩しく感じるけれど、風が冷たく感じるこの季節では、降り注ぐ陽気はとてもありがたく感じた。
「おー、そんじゃまあ、お待ちかねのお弁当タイムといこうじゃないか」
「もう、ロブさんったら。お昼ご飯にはまだ早いですよ」
それに今日の一番の目的はピクニックではないのである。
ニーナはシャンテとミスティにスケッチブックと色鉛筆を配る。
「それじゃあここからは自由行動ということで、思い思いにスケッチしよう。あっ、ロブさんもやります?」
「俺も? この姿でか?」
「ロブさんなら案外前足で器用に描けちゃうかもって思ったんですけど」
「いやー、さすがに無理」
「ですよね。それじゃあ荷物番よろしくです」
「あっ、そういう流れね。はいはい、りょーかーい」
軽い感じで引き受けてくれたロブに、勝手にお弁当食べてちゃダメよ、とシャンテが釘を刺す。
「さすがにそんなことしないって。それよかみんな自由に行動するのはいいけども、ちゃんと目の届く範囲にいてくれよ? 開けた場所とはいえ、ここは危険が身近に潜むマヒュルテの森だからな」
「わかってるわよ。兄さんこそ居眠りしないでよね」
そうしてロブに荷物を任せて題材探しを始める。シャンテは首を振って辺りをさっと見渡した。
「自由に選んでいいって言われても、それはそれで困るわね」
「難しく考えなくても、心にグッと来たものを描きたいように描けばいいんだよ。あっ、でもミスティさんはきちんと模写することを心掛けてくださいね。題材はなんでもいいんですけど、自分流にアレンジするんじゃなくて、見たものを正確に描き写すようにしてください。正確に形を捉える練習なんで、細部にこだわってみて欲しいです」
「はい」
「よしっ、それじゃあ一時間ほど自由にスケッチして、それからみんなで見せ合いっこしよう。集合場所はロブさんが待つあの場所ってことで」
「りょーかい。ニーナはもうなにを描くのか決めてるの?」
「うん、私はウルドの滝を描くつもり。昨日から決めてたんだよね」
さてさて、どの角度から描いてみようか。
ニーナはふらりと歩き始めた。




