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ひよっこ錬金術師はくじけないっ! ~ニーナのドタバタ奮闘記~  作者: ニシノヤショーゴ
11章 ガラクタ発明家を訪ねて
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失敗しないニーナなんてニーナじゃない

 試作会で新たな着想を得たニーナはその勢いに任せて調合に取り組み、その夜のうちに試作品第二号を完成させる。<レモンミント>と<スピラーミント>を両方とも使用した二層構造の飴玉で、表面を<レモンミント>を用いた辛さ控えめの層で覆い、噛み砕くと<スピラーミント>特有の刺激が口のなかいっぱいに広がるようにした。相変わらず噛み砕いた際に髪の毛が逆立ってしまうが、それを含めてお客さんに楽しんでもらえたらとニーナは願う。


「なるほど、二通りの使い方ができるように、飴玉も二層構造に変えたわけだ」


「さすがはテッド。よくわかったね」


「単純だけど理に適った改良だと思うよ。これで完成かな?」


「そうだね。ひとまずこれを持ってメイリィさんと契約交渉してみるよ。ただそのまえに、これをどうやって売るか決めておかないと」


 どうやってって、とダンが疑問を口にする。


「どんな形でお店に並べてもらうか、ってことだよ。一つ一つ包み紙で包んで販売するのか、瓶や缶に詰めてまとめて販売するのか。その場合、どれぐらいの大きさの容器で販売するのか。あとは価格も交渉前に決めておかないとね」


「包み紙で包むにしろ、容器に入れるにしろ、<ココ・カラー>でデザインしてもらわないといけないんじゃない?」


「うん、シャンテちゃんの言う通りだね。ただそれは一度メイリィさんと話したあと、どんな形態で販売するか決めたあとにするよ。あっ、でもデザイン案ぐらいは決めておいた方が交渉しやすいよね。どんなデザインにしようかな?」


「またあのひよこを描くの?」


「うん、<青空マーケット>のときに<ひよっこ印のニーナのアトリエ>で覚えてくれた人もいるだろうし、これからも登場させたいな。でもそうなると包み紙に描くのは小さすぎて難しいかな?」


「そこは<ココ・カラー>が上手いことしてくれるでしょ。ただ一個一個販売するより、まとめて売ったほうが売り上げに繋がるんじゃない? あと、せっかく綺麗な色した飴玉なんだし、容器に詰めるなら中身が見える瓶のほうがいいんじゃないかしら」


「だねっ! よしっ、そうと決まれば瓶に貼るラベルをデザインしよう!」


 ニーナとシャンテはあれやこれやと意見を出し合い、これからのことを決定していく。

 そんな二人の様子を、ダンとテッドはぽかんとしながら眺めていた。錬成を成功させただけでもじゅうぶん驚きなのに、交渉に向けて価格や販売方法を次々と決めていくニーナの姿は、村にいたときからは考えられないものだった。


「……なんかスゲーな」


「えっ、なにが? この絵のこと?」


 ラベルのデザインに取り掛かっていたニーナが首を傾げる。


「いやいや、全部だよ。というか全然失敗しないじゃん。いつもなら黒い煙ばっか上げてたのに、なんで?」


「ふふん、私だって質のいい素材が手元にあればこれぐらいできるんです!」


 褒められて気をよくしたニーナは立ち上がって胸を張る。成長した姿を見せられたことがなにより嬉しかったのだ。


 といっても今回の調合は新作ながら、使用した素材の多くはこれまでに使ったことのあるものばかり。<マーレレモン>は<レモン香るピリ辛フルーツポーション>に、<乾燥した魔イワシ>は<魔イワシ入り植物栄養剤>に、<マジカルシュガー>は<大人顔負けグラマラスチョコレート>の素材である。それらの特性をよく知っているからこそ、今回は失敗することなく調合を成功させることができたのだった。


 ──まっ、そんな細かいこと、いちいち言わなくてもいいよね。


 かっこよく思われたいからこそ、ここは実力ということで。二人には新作を見事に完成させた姿だけを覚えて帰ってもらおう。

 と、ニーナは思ったのだが。


「よく言うわ。これまで散々失敗してきたってのに。<大人顔負けグラマラスチョコレート>だって初めは依頼人を巨大化させちゃって大変だったじゃない」


「ちょっとシャンテちゃん!?」


「そういや<魔イワシ入り植物栄養剤>も大変だったよな。<スロジョアトマト>に使ってみたら家の周りがジャングルになっちまってよ」


「ロ、ロブさんまでっ!」


「<ハネウマブーツ>のときも大見え切って調合に取り掛かったくせに高級素材を全部黒焦げにしたあげく、失敗しちゃった、って泣きべそかいてたわよね。珍しくすんごい落ち込んじゃってさ」


「うぅ、それは言わないでぇ……」


 ニーナは顔から火がでるんじゃないかというほど恥ずかしかった。せっかく二人の前でかっこよく調合を成功させたというのに、秘密にしておきたかった過去をバラされて、いまやニーナの顔は耳まで真っ赤だ。


 そんなニーナとは対照的に、ダンは笑顔になる。


「ははっ、なんだ、今日の成功はたまたまだったのか」


「たまたまって言うな! たしかに今日の私は普段よりも冴えていた気がするけれど、でも最近は村にいたときよりずっといろんなものを失敗することなく作れるようになったんだから!」


「はいはい。……まあ、たしかにちょっと見ただけでも、村にいたときより成長してるなって思うよ」


「……ほんとに?」


 ニーナは訝しむ様な視線をダンに向けた。

 するとダンは二っと笑って、また髪の毛をわしゃわしゃとしてきた。


「もうっ、なにするのよ!」


「なんかその反抗的な目を見てると、つい、な。でもさ、そっちのほうがニーナらしいぜ。失敗しないニーナなんてニーナじゃねーし」


「なにそれ、意味わかんないよ」

 

 ニーナはぷくーっと頬を膨らませたものの、けれど悪い気はしなかった。それはなぜかというと、以前シャンテに教えてもらったときのやり取りを思い出していたからだ。


 大事なのは失敗しないことじゃない。失敗を恐れず、失敗から学び、失敗してもくじけずに挑戦を続けること。そのことを、ニーナは<ハネウマブーツ>の失敗から学んだ。村にいたときからそうした考え方は持っていたものの、実際に大きな失敗を経て、心からそう思えるようになった。


 そうした気持ちの変化からだろうか。失敗を繰り返す姿が<らしい>と言われても、ニーナはそれがなんだか悪いことではないように思えたのだ。


「ようし、ニーナの発明品も完成したことだし、それじゃあ明日こそマヒュルテの森を探索だな」


「ちょっと、勝手に決めないでよ」


「なんだ、ダメなのか?」


 ニーナはちらりとシャンテのほうを見る。


「アタシは別に構わないわよ。ただ、せっかくなら二人がいてくれるあいだに行きたいところがあるんだけど、手伝ってくれる?」

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