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ひよっこ錬金術師はくじけないっ! ~ニーナのドタバタ奮闘記~  作者: ニシノヤショーゴ
9章 海と無人島の大冒険
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海で遊ぶといえば?①

 あれからも繰り返し何度か海へと潜ったものの、結局ニーナが手に入れた海の幸はアワビだけだった。潜るたびになにかしら戦利品を手にするシャンテとは大違い。けれどたった一つでも自分の力で採ることができて、ニーナはとても満足していた。


 手にしたアワビを大事そうに抱えてテントを設営した場所まで戻ると、すでにフラウとロブがバーベキューの準備を始めていた。手ごろな石を組んで囲いを作り、その上に網を乗せ、炭に火をつけて火起こしをする真っ最中だった。


「あら、先に始めてたんだ」


「おう、俺の指導の下、よく働いてくれてるぜ」


「指示に従って魔法でちょいちょいしただけですけどねー」


「ううん、助かったわ。野菜のほうは……まだのようね。それじゃあぱぱっと切っちゃうから、そっちはそっちで肉でも採ってきた貝でも、好きなの焼いて食べ始めといていいわよ」


 シャンテは、早くも涎を垂らして待ちきれない様子の兄を見ながら言う。

 その兄はというと、なにかに気付いたのか、シャンテのことをじーっと見つめる。


「どうしたの?」


「いやあ、水に濡れて透ける白Tシャツと水着の組み合わせって、すごくエッチなんだなって新たな発見を」


 ──どごぉ!

 言い終わらぬうちに、強烈なげんこつがロブの頭上に降り注いだ。


「あはは……私もなにか準備を手伝うよ」


「それじゃあ野菜はニーナに任せようかしら。適当に薄く一口サイズにカットしてくれればいいから。そのあいだにアタシは魚をさばくわ」


 そうしてニーナとシャンテは手分けして準備に取り掛かることにした。


 ちなみにこれらの食材は前日のうちに用意しておいた。その一方でバーベキュー用の網や炭、それからテント用品などは今日の朝に借りた。早朝、ニーナたちが暮らす家で待ち合わせをしたあと、フラウと合流してから貸し出しを行っている店まで行って、そこでキャンプ道具一式を借りたのである。クノッフェンは自然に囲まれた土地だから、レンタル業で生計を立てることもできるのだろう。


 にんじん、玉ねぎ、なすび、ピーマン、かぼちゃ。

 それらを、シャンテに言われた通り一口大に薄くカットする。隣ではシャンテが魚を捌き、内臓などを取り除くなどしている。こうして下処理をしておかないと生臭くて美味しくないのである。それから魚を三枚おろしにして、塩をたっぷりとまぶしておけば準備完了だ。


 そうして下ごしらえが完了したころには、肉の焼ける美味しそうな匂いが風に乗って漂ってきた。フラウが程よく焼けたお肉をロブの皿に盛り付けている。


「私が採ってきたアワビも焼いていいかな?」


「もちろんいいわよ」


 貝やエビを網の上に、野菜を小さな鉄板の上にそれぞれ並べる。うねうねと踊るアワビの身。じゅーっ、となんとも食欲をそそる音に耳を傾ける。初体験を前にして、ニーナはくりりとした目を輝かながら、身を乗り出すようにしてそれが焼けるのを待ち続けた。


「ねえ、もうそろそろいいかな?」


 かれこれ三度目となる同じ質問をシャンテに訊ねる。ニーナはアワビが焼けるまでのあいだ、他のものには一切手をつけなかった。それほど夢中になって待っていたのである。


「うん……そろそろいいんじゃないかしら」


「やったぁ!」


 熱々のアワビをお皿の上にのせて、身を取り出してみる。そして貝殻から身を取り外して、ふぅーふぅーと息で冷まして、そして小さな口でそれにかぶりついた。


「あふっ……はふっ、うぅ、おいひいぃ……!」


 口いっぱいに広がる幸福感。こりこりとした食感がたまらない。アワビってこんなにも美味しいものだったのか。自分で採ってきたこともあり、喜びもひとしおだった。


 それからはお肉にも魚にも手を伸ばし、なすびやかぼちゃもいただく。フラウはかなりの少食のようだが、食べること自体は好きなようで、美味しいですと言いながらバーベキューを楽しんでくれていた。そしてロブの食欲はいつも以上に止まらなかった。


 一通り海の幸を堪能したあとは、休憩がてらに浜辺を散歩することにした。もうこの頃には水着で過ごすことにもずいぶんと慣れて、恥じらいというのも感じなくなっていた。


 下を見ながら歩くと綺麗な貝殻が目に付く。ニーナはそれらを拾い上げては瓶に詰めていく。サンゴの欠片や綺麗な石も採取して、謎に大きくて立派な骨も落ちていたので、それもついでに拾った。そんなものなにに使うつもりなのよ、とシャンテは問いかけてきたが、もちろん答えは決まっていた。


 ──お腹も一杯になったことだし、そろそろ旅の目的を果たすとしますか!


 崩さずに残しておいた石の囲いの上に錬金釜を乗せて、その下に<ヴルカンの炎>を灯す。そして釜に<マナ溶液>を流し込み、手近な場所に素材を並べていく。


 そう、ニーナはこれからこの青空の下で調合に取り掛かろうとしていた。フラウが来てくれることになって荷物の制限がなくなったことで、ニーナはずっとこの大自然のなかで調合がしたいと思っていたのだ。それもできればこの島で拾ったものを素材として、そのときに閃いたものを作ろうと心に決めていた。


 まず使用する素材は先ほど拾ったばかりの<テクタイト(隕石衝突によってできたガラス)><サンゴ礁の欠片>と、家から持ってきていた<三つ目ネコのヒゲ><プリズムリーフ>の四つ。これらを使ってニーナが作り出すものとは……?

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