表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/33

戦い終わってノーサイドいやノーメモリー

「あったぁぁあぁあぁぁぁぁ!」

 そんな大きな声でタカトは目を覚ました。

 ――ああ……よく寝た……

 大きく伸びをして肩をぐりぐり。

 やけに肩がこっているような気がするのは気のせいだろうか?

 いや、気のせいではない。

 タカトの足元は硬い岩肌。

 こんなところで寝ていたらそりゃぁ肩もこって当然というもの。

 ――というか、なんで俺……こんなところで寝てるんだ?

 あたりを見回すと大きな洞窟のようである。

 目の前には祭壇。

 そして、なぜか目の前にはビン子が目をつぶって横たわっているのだ。

 ――はて? この状況?

 タカトは記憶をたどってみた。

 ――確か……今日はじっちゃんにいじめられて忌野清志子(イマワノキヨシコ)抜きで荷物を運ばされたんだった……で、それが終わって帰る途中、蘭華と蘭菊のメスガキどもの襲われて、配達で得たお金を根こそぎ持っていかれたんだよな……

 確かにここまではあっている。

 ――で……なぜか……どこぞの禿げ頭が俺に食べ物を恵んでくれたわけだが、男から施しを受けるなど俺のプライドが許すわけもないわけで……ということで、その食べ物については、あのメスガキどもに恵んでやろうというわけで病院に来た……そう!!屋上でミーニャたんのエロ本を見せてもらったんだ!

 だが、ココは屋上ではない。

 ――どこなんだ? ここ? まあいいや……でもって……そういえば! あの時!NHKが乗り込んできて、エロ本を没収、そして、俺は立花のジジイに売られたんだ!

 タカトはあたりを見回してみるが、立花の姿は見えない。

 それどころか、あの禿げ頭の坊主が横になって転がっているだけだった。

 ――で、そのNHKから逃げるために地下へと逃げたんだ! でも、どうやら逃げ切れたようだなwwww

 うん? なんか記憶があいまいになっているような気もするが……というか、逃げ切れた? お菊が確かいたような気がしたのだが?

 そう、今この場にはお菊の姿はなくなっていたのだ。

 ――で、なんで……俺はここで寝てたんだ?

 タカトの記憶からは、お菊がタカトのために戦ってくれたという事実がなくなっていた。

 それどころか、ココに大空洞に来た理由すら分からないようなのである。

 どうやら、死体安置室に入ったあたりからの記憶が完全に欠落しているようである。


「うー--ん……タカト?」

 そうこうしているうちに、目の前で横たわっていたビン子も目を覚ました。

 ビン子もまた多く伸びをする。

 だが、ビン子の服は胸から下の部分が避けるように破れていた。

 それに気づいたビン子は。

 ビシっ!

「タカト! 私が寝ている間に襲おうとしたわね!」

 と、ハリセンで思いっきりシバいていた。


 後頭部をこするタカト。

 タカトの袖もまたビリビリに破けている。

 しかも、背中に背負っている「筋肉超人あっ♡修マラ♡ん♡」もボロボロ。アームが全て砕け散っていた。

 何が起こったのか、全く見当がつかないタカト。

 だが、ビン子を襲うという事実だけは断固としてあり得ない!という事で、

「誰が、お前みたいな貧乳なんか襲うかよ!」

 と、言い返す。

 だが……それがいらぬ一言……

「なんですてぇ! 誰が貧乳なのよ! 言ってみなさいよ!」

 ビシっ! ビシっ! ビシっ! ビシっ! ビシっ! ビシっ! ビシっ!

 と、連打に次ぐ連打!

 タカトの顔面がアンパンマンのように腫れあがっていたのは言うまでもない。

「ご……ごべん……なちゃぃ……」


 夫婦漫才が一通り終わったタカトとビン子は、先ほど大きな声がした奥の部屋を覗き込んだ。

 そこは4畳ほどの小さな部屋。

 机と書棚があるだけだった。

 そして、今姿が見えない蘭菊が隠れ潜んでいた部屋である。

 うん? 蘭菊?

 ああwww蘭菊ねwww


 部屋から出てきた蘭菊はひどく落ち込んだ。

 母の入院代を貸してくれているタカトに対して自分はなんとひどいことをしたのだろうか。

 少しだけ、ノラガミの生気を吸い取るだけと思っていた……

 それがどうだ……ビン子がこんなにひどい状態になるとは思っていなかったのだ。

 このまま、エウアたちが先に起きれば、再びビン子の生気を吸いだそうとするかもしれない。

 だが、それだけは何とか阻止したい。

 それが、今できる蘭菊の償いだったのだ。

 そこで、蘭菊はタカト達が目覚める前にエウアやミーニャを叩き起こしたのである。

 ってwwwなんでやねんwww


「エウア様! 早くお逃げください!」

 蘭菊の声に目を覚ますエウア。

 顔じゅうに広がる痛みにすぐさま悲鳴を上げた。

「いたい! 痛い! いたいのじゃぁあぁぁぁ!」

 というのも、彼女の顔や腕といった皮膚は水膨れのように腫れあがっていたのである。だが、どうして自分がこんな状態になったのか、さっぱり分からない。

 痛む顔をこするとつぶれた水泡から血の混じった体液がべっとりと手のひらに垂れてきた。

「ああ! 私の顔がぁぁぁぁぁ! なんでよぉぉぉぉ! どうしてなのよぉぉお!」

 半狂乱で騒ぐエウア。

 そんなエウアを、ミーニャたちが必死に抑え込む。

 だが、ミーニャたちも状況がよく分からない。

 ――確か……エウア様に生気を送るために……

 そう、そこにいる蘭菊が、今日もまた生気を吸いだすための貢物を持ってきたのだ。

 ――だが、その貢物が誰だったのか……思いだせない……

 そこからの記憶があいまい、いや、すっぽりと抜け落ちているのである。

 ――なんか嫌な感じがする……

 ミーニャはエウアを押さえつけながら周囲を伺った。

 すると、自分たち以外にも見慣れぬ者たちが倒れているではないか。

 しかも、あの男は!

 ――天塚タカト!

 忘れもしない10年前の道具コンテスト!

 自分に大量のウ○コをぶちかけた最低最悪の男である!

 そんな男が目の前でぶっ倒れているのだ。

 ――今こそあの時の恨みを!

 だが、ミーニャはこれでもツョッカーの悪の首領!

 頭がキレる。

 ――というか……なんで奴がここにいるんだ?

 そう、この大空洞は貢物としてささげられた生き物から生気を抜き出すための場所。

 そんな場所にエウア教以外の者が入り込んでいるのだ。

 すぐさま、状況を整理する。

 ――もしかしたら、記憶の欠落はコイツらのせい?

 とっさにミーニャはエウアの手を取った。

「エウア様! この場所は放棄します! 今すぐ新たな隠れ場所に移動いたしましょう!」

 ミーニャはタカトへの復讐よりもエウアの安全を優先した。

 そう、自分の目的を果たすためにはどうしてもエウア、いや、イブの復活が重要だったのである。

 そこで、ミーニャはエウアや蘭菊と共にタカト達が起きる前に洞窟の秘密の出口から外へと逃げ出していたのである。


 で、エウア教の面々がいなくなったその後、ルリ子が目を覚ました。

 あたりを見回すと見覚えのない所。

 大きな大空洞である。

 ――ここはどこだ?

 かすむ記憶を呼び覚ますかのように頭を押さえる。

 ――確か、地下の安置室に……

 だが、安置室に行った理由がよく思いだせない。

 何か、切迫した理由があったような気がするのだが、どうにも……

 しかし、自分が地下の死体安置室に行く理由で思い浮かぶのは一つだけ。

 そう、父、ヒロシの頭を探すためである。

 という事は、大方、死体安置室には、その頭を探しにでもいったのだろう。

 だが、いつもだと、何もない安置室に落胆して、看護師の仕事へと戻るのだ。

 それがどうだ……今回に限って言えば、今、自分は大空洞にいるのだ。

 死体安置室に向かったおぼろげな記憶と、この大空洞。

 記憶が欠落していたとしても、おそらく自分は死体安置室で秘密の出入り口を見つけたのかもしれない。

 ――なら、ここにお父さんの頭が!

 と、ルリ子は飛び起きると大空洞の中を探し始めた。

 そんな奥に小さなドア。

 明らかに怪しい……

 ルリ子はそっとそのドアから中を覗き込んだ。

 そこは4畳ほどの机と書棚があるだけの小さな部屋。

 ルリ子はすぐにピンときた。

 ――おそらくここはデスラー元副院長の研究部屋!

 書棚には融合加工の専門書が並んでいた。

 だが、これだけではデスラーの部屋とはいいがたい。

 しかし、机の前の壁に貼られていたポスターが決定的な証拠になった。

 それはお登勢の巨大写真。

 まっ正面から見るその貫禄ある姿は、まるで双発プロペラ機のように垂れた乳をぶん回していた。


 そして、ルリ子は見つけたのだ。

「あったぁぁあぁあぁぁぁぁ!」

 棚の一番上にのせられたホルマリンのビンを。

 その中には忘れもしない父の顔。

 そう、ついにヒロシの頭を見つけたのである。


 だが、ヒロシの頭を見つけただけでは足りないのだ。

 というのも、ヒロシの頭と体を引っ付けるための素材が必要なのである。

 もしかして、それは融合加工の素材か何かであろうか?

 確かにサンド・イィィッ!チコウ爵の頭と体は、魔物 食パンマン子さんから採取された蝦夷アワビではなく食パンで引っ付けられていた。

 だが、それはセロハンテープのような役割。

 デスラーの融合加工の腕が悪いから、体と頭が外れそうになるのを無理やり引っ付けているだけだったのである。

 というか、そんなセロハンテープごときで頭と体の神経が繋がるわけがない。

 ホルマリン漬けになっている頭が動き出すわけはないのである。

 ならばいったい何が必要なのか?

 サンド・イィィッ!チコウ爵によると、かつてデスラーは「カエルの目玉」を使って死んだ体と頭を動かしていたそうなのだ。

 カエルの目玉?

 それは何かの隠語なのであろうか?

 いや、本当にカエルの目玉なのだ。

 どこぞのネクロマンサーから手に入れた代物らしく、それを死体に取り込ませるとマジで動き出すそうなのだ。

 ルリ子はサンド・イィィッ!チコウ爵の話をにわかに信じられなかった。

 だが、現に死体であるサンド・イィィッ!チコウ爵は動いているのだ。

 ならば、あながちその話も嘘ではないのかもしれない……

 と、ルリ子は、その「カエルの目玉」がないかと研究室の中を四つん這いになって探し回っていたのだ。

 そんな時である。

 タカトとビン子が研究室の中を覗き込んだのは。


 瞬時にタカトは目の前で四つん這いなっているルリ子のお尻に顔を近づけようとしていた。

 抜き足……さし足……忍び足……

 だが、タカトは忘れていたのかもしれない。

 そう!今はビン子が覚醒していることを!


「なにやってんのよ!」

 ビシっ!

 当然のようにビン子のハリセンがタカトの後頭部を思いっきりシバいた!

 

 しかし、タカトもアホではない!

 ビン子が起きていることなど先刻承知!

 そして、この状況でビン子のハリセンが落ちてくることなど想定内だったのだ。

「あ~~~~~~れぇ~~~~~~」

 目をハートにしたタカトの頭が、わざとらしく落ちていく。

 その先にはルリ子のお尻。

 そう!タカトはビン子のハリセンの軌道を計算し、自分の頭というコロニーをルリ子の恥丘、いや地球へと落下させようとしたのである。


「させるかぁぁぁぁぁ!」

 ビン子が再びハリセンを振り上げる。

 だが、すでに大気圏へと突入したコロニーには、この距離からでは届かない!

 万事休す!

 ――ああ……コロニーが恥丘に落ちる……


 だがしかし!

 世の中そんなに甘くない!

 タカトに関してはラッキースケベなどあり得ないのだwwww


 バキっ!

 不穏な空気を感じ取ったルリ子の足がタカトのアゴを蹴り上げた!

「何しやがる! このクソ野郎が!」

 あれほどまで恥丘、いや地球の重力にひかれていたタカトの頭がパンと跳ね上がったのである。

 その様子はまるでマスドライバーによって打ち出されたスペースシャトル!

 まっすぐに上る軌道はすぐに大気圏外まで到達した。

「ここが宇宙なのね……」

 タカトの脳内から外を見る搭乗者たち(リリーナ・ピースクラフトでも想像してくださいなwww)はきっとそう思い、スピードを落としていくシャトルに安堵したことだろう。

 だが、そんな時、決まって緊急警報が鳴るのだ!

 ビー!ビー!ビー!

「敵襲?」

 その瞬間、 赤く染まる船内!いやタカトの脳内を激しい衝撃が襲った!

「きゃぁぁぁぁ!」


 ビシっ!


清浄寂滅扇しょうじょうじゃくめつせん!」

 それは、遅れてきたビン子のハリセン!

 大リーガーの大谷が下から吹き上がってきたボールをフルスイングで打ち抜くかのようにタカトの頭を勢いよくシバき上げたのだ!

 その腰の回転を伴ったハリセンの一撃!

 寸分の狂いもなくタカトの頭をジャストミート!

 タカトの頭の軌道を90度に変えると、その体ごと部屋の壁へと勢いよく吹き飛ばした。


 ガシャーン!

 タカトの体が壁際に置かれた古い机にぶつかると、その躯体をバラバラに打ち砕いた。

 それはかつてデスラーが使っていた机。

 おそらく、ココで研究成果をまとめていたのだろう。

 そのため砕けちった引き出しからは、中に納まっていたモノが次々と飛びだしていく。

 そんな光景が床に転がるタカトの目に映る……

 舞いおちる書類たち……って、これ……お登勢の写真ばかりじゃん……

 勢いよく回転する筆記用具たち……って、これ……どれもこれもTENGA製のものばかりじゃん……

 砕け散るビン……って、これ……中に入っていたのはバイアグラのような丸い錠剤ばかりじゃん……

 ――って、これ……デスラーの奴!ここで一体、何してたねん!

 ――研究か?

 ――本当に研究か?

 などと、タカトは突っ込んだ。そして、おのずと一つの結論に行きついたのだ。

 ――この状況、どう見ても、お登勢の写真をみながらTENGA使って自家発電の研究しとったやろ!

 どうやら、同種の臭いを感じ取ったタカトは確信していた。

 床に転がるTENGAや錠剤の数々……きっと自分にも使えるはずだと!

 (え?お登勢の写真? あれは……うん……いらねwwww)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ