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聖女は夫を呪いたい  作者: 頼爾@11/29「軍人王女の武器商人」発売
第五章 あなたに会うために生まれてきた

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いつもお読みいただきありがとうございます!

 イザークは公爵夫人と喋って疲れを感じながら自室に戻る。

 スタイナー公爵家は腰抜けじゃない、むしろ公爵も公爵夫人もレックスも全員狂っている。腰抜けの方がまだマシだ。


 とりあえず、あの男爵令嬢に関しては公爵夫人が金の流れを見て阻止してくれる。イザークもしばらくレックスの動きを注視する必要があるが、領地に行っている間はさすがのレックスもおとなしくしているだろう。公爵もいるのに領民に手を出すとは考えにくいし、レックスのこれまでを考えれば相手は確実に貴族令嬢だ。思い込みは良くないが、レックスは平民に手を出すタイプではない。

 平民だとうっかり本気になられたら困るからか? ただ、貴族令嬢が弁えているとも限らない。


 補佐に護衛にスパイもどきに。なんでも屋のようになってきたなとイザークは自身の状況を笑った。


 昼間の出来事を思い出す。「アイザック」という夢の中での自身の名前をミュリエルに呼ばれて動揺してしまった。


 馬車の扉を慌てて閉めたが動揺が収まった後、胸に広がったのは歓喜だ。

 彼女がやっとあの名前を呼んでくれた。

 思い出しただけで自分の手が震えている。彼女に「アイザック」と呼ばれて、細胞が震えた。


 夢の中でミュリエルとはずっと一緒だった。容姿が変わっていても彼女だと分かる。

 ある時は砂漠を歩き、手を取り合って戦火を逃れ、またある時は彼女の腕の中で自分は死んでいった。


 ミュリエルを大事にしない、自分が愛されたいだけで愛人を作ろうとしている男のことなど捨てて一緒に逃げてほしいと彼女に言ったらどうなるだろうか。


 どうして彼女はレックスと結婚しているのだろう。

 いますぐ彼女に確かめたい。間違えて結婚したんじゃないか。本当の相手は自分なのではないか。

 でも、聖女ペトラの言うように今は以前よりもタイミングが悪い。流産したばかりのミュリエルに変な噂が立ったり、自分と逃げたりしたら。ミュリエルはずっと悪く言われてしまうのだ。外見どころではない『黒い聖女』として語り継がれてしまう。


 じゃあ、良いタイミングはいつなんだ?

 彼女も同じ夢を見ているのか? 彼女が完全に思い出してからか?

 タイミングをうかがい続けてそのタイミングは来ないんじゃないか。イザークが考え続けても答えは出なかった。


***


 公爵邸では使用人たちがミュリエルにとても良くしてくれる。

 侍女は以前にもまして甲斐甲斐しくミュリエルの世話をするし、料理人はミュリエルの好きなものを作ろうと躍起になっているようで毎回食卓にさまざまな料理が並ぶ。

 やはり大きな事故などがあると、聖女への感謝が増す。流産の件もあるが、使用人たちの態度もその一環だろう。


 イザークはミュリエルが任された仕事をさっさと持って行ってこなしてしまう。

 義母は神殿で話をしてからミュリエルに突っかかって嫌味を言ってくることもない。茶会に出ろとも次期公爵夫人として~とも言われない。義母が何もしないので、義母付きの侍女も特に何もしてこない。平和である。


 感謝ならそうと分かるのだが、腫れもの扱いも含まれているのは正直落ち着かない。

 公爵邸にいると仕事もなく、気が滅入りそうだ。さすがに茶会に参加する元気はないが、公爵邸にずっといるのも疲れる。思い返せば、義母の嫌味は刺激だった。聖女に対して嫌味を面と向かって言ってくる人なんてほぼいない。ノンナと義母くらいだ。


 ミュリエルの元気のなさが伝わったのか仕事は譲ってくれないイザークが「神殿に出かけて馬車で少し遠回りして帰ってきますか? 神殿に行くならば止められないでしょう」と提案してくれた。少しでも気が紛れるならと出かけることにした。

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