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いつもお読みいただきありがとうございます!
今日は二話投稿します。
「今日はありがとうございました。いろいろ整理したいんで……部屋に戻ります」
「ここに泊ればいいじゃない。雑魚寝部屋でしょう? そのパンパンに腫れた顔じゃあ詮索されるわよ」
「でも……これまであんな態度で図々しい真似できないです」
「二重が一重になるくらい泣いているんだし、別にこれまでのことは気にしてないわ。お菓子も一人では食べきれないもの」
ノンナは泣き止むと退室しようとしたが、なんとか引き留めた。
「じゃあ、女子会にしちゃいましょう」
「なんでこんなことに……」
ノンナはしばらく戸惑っていたが、結局ミュリエルの雰囲気に引き摺られるようにお菓子を食べ始める。
「はぁ……あんなに好きだったのに……今じゃあ殺したい……うぅ、帰ってから親に言うのやだなぁ」
「他の女性を妊娠させるのは……ちょっと、ねぇ」
「セージョ様は浮気されて平気なんですか?」
ノンナは遠慮がちに上目遣いで聞いてきた。
「最初は平気じゃなかったわよ。怒ったし泣いたし……でも今は私が愛してるからいいと思ってるの」
「私みたいなことになっても……相手を許せますか?」
「まず、私は女性を許さないわね。でもレックスはどうだろう……聖女は子供ができにくいから……子供だけ養子にするか……」
「あぁ……そんな話もありますね」
イザークはサンドイッチなどの軽食も買ってきてくれていたので二人で食べる。
外で待機していたイザークにもノンナが泊まることを話してお菓子や軽食を渡そうとしたが、仕事終わりの神殿の騎士たちと外で食べてくるらしい。
「レックスが今日の彼みたいなことをしたら……そうね、殺すよりも呪ってしまうかもしれないわ」
「呪う?」
「毎日少しずつ毒を盛るかのように、呪いをかけて。一息で殺すなんてしたくないの。もちろん、私を同じくらい愛してほしいけど。レックスができないなら……愛し方は人それぞれだから仕方ないわ。だから、私のことを少しでも刻むために、レックスを少しでも傷つけたい。そうしたら私のこと、いつまでも覚えていてくれるでしょう?」
「さすがに、それはマズイんじゃあ……」
「殺すのも十分マズイと思うわ」
「殺すっていうか……私と同じぐらい傷ついてほしいんです。だって、あいつだけノーダメージじゃないですかぁ。浮気相手と幸せになるんでしょうよぉ」
うるっときたのかまたノンナが泣きそうになる。
「あら、ノンナが言っていることは私と同じに聞こえるわ」
「セージョ様ほどやばくないですぅ」
「だって自分が傷ついたから、相手にも同じだけ傷ついて欲しいんでしょう?」
「でも、呪うのはちょっと……返ってきたらやですし……でも……」
「慰謝料で分捕る?」
「そうします!」
「やっぱり同じだわ」
「絶対違いますよぅ!」
「聖女の治癒って呪いにも効くから大丈夫よ」
「えぇぇ、じゃあいいかなぁ」
ノンナはクッションを抱いてジタバタする。ミュリエルは紅茶のお代わりを淹れた。
「愛ってもっと崇高なものだと考えてたの」
ノンナに紅茶のカップを差し出しながら喋る。
「でも、レックスのことを好きになって愛を誓ってみて……すごくみっともないの。私だけを愛してほしいし、見てほしい。私のことだけ考えてほしい。義母や他のことから守ってほしい……他の女性と出かけてなんかほしくない」
「はい……」
ノンナは思うところがあったのか、神妙に頷く。
「愛したら自分が最も嫌ってる醜い感情ばっかり出てくる気がするの。自分が汚れた真っ黒な存在みたい。愛してなかったらこんな感情、出てこなかった。婚約した最初の頃は会えるだけで幸せだったもの。あの頃はまだ愛してなかったのかもしれない。だからね、私の中では愛は呪いなの。愛したら呪いが出てきたの」
本当に愛は呪いだ。
愛は高尚でとても素晴らしくて、この世で一番尊いんじゃないかと思ってた。
でも、全然違った。私のこの感情は愛じゃないのかもしれない。




