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遠い世界の君から  作者: 凍った雫
白き王と黒き剣士
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いざお出かけへ!!

 王城に住んでから1週間が経った。


 毎日見えた風景を探しに出掛けていたおかげか、地図がなくともあらかたどの部屋がどの位置にあるのかを覚えることもできた。


 豪勢な食事は交流会の時だけでなく常に備えられており、毎日お腹がいっぱいになるまでその料理を存分に食べることができ、もしラノア達に手紙を送るとすればきっとこう書いていることだろう。


 ”王城での暮らしははっきりと言って最高です。“と。


 部屋から部屋への距離が遠いことは少し難儀だが、それを加味してもこの王城には人を満足させるための娯楽のようなものが十二分に揃っていた。


 そして、


「本日も参りました。掃除等はお済みでしょうか?」


 この前の宣言の通り、メロウとタルナローテは毎日ニア達の部屋を訪れるようになった。


 それが国王からの命令なのか、はたまたメロウ達自身にメイドとしてのプライドのようなものがあるからなのか。それは定かではない。だが、


「なら今日は部屋の掃除を頼みます。そのあとは一緒にご飯でもどうですか?」


「カラリナ様。何度も申し上げますが、私たちはあくまでメイドという身分。そのような贅沢は許されていません」


 初めて会った時と同じく、メロウは落ち着いた態度でオーゼンからの提案へそう返し、だが一貫してNOを貫き通すメロウに、オーゼンがわずかに悲しそうな反応を見せると、


「…が、それがカラリナ様からの命令と言うのであれば、仕方がありません」


 瞬間、落ち込んでいたオーゼンはその落ち込みすらが幻かと思うほどに満面の笑みを浮かべ、ぐっとその拳を握りしめて見せる。


 それが計画のうちだったのか、或いはただ悲しかっただけなのか。歓喜するオーゼンを横目にメロウは仕方がないと言うようにため息をつき、続けて部屋の中へと入っていく。


 虫の一件以来、部屋はこれまで以上に整理整頓されていた。


 もし次に侵入されるのすれば、犯人は前回よりも巧妙にその虫のありかを隠すだろう。だからこそ、それに対抗するようにニア達もまたすぐに虫を見つけられるようにと部屋の整理整頓を心がけているのだ。


 だが、いくら見栄えが綺麗と言っても目に見えない汚れまでは落とせはしない。


 正直な話、ニアの手にかかればチリ一つ残さずに部屋を綺麗にすることも可能だった。


 だがそれはメロウ達の仕事を奪うことに他ならず、何よりもメロウ達との話の起点を作りたいとオーゼンに頼み込まれたことにより、ニアは致し方なくその行為を中断していた。


 虫の一件。犯人とメロウ達が繋がっていると言う線はあり得ないわけではない。


 事実犯人はニア達がいない時間をピンポイントで把握しており、それ故に起こった事象だったからだ。


 だが今その可能性を突き詰めたところで知らぬ存ぜぬと返されて仕舞えばそれ以上の追求は意味をなさない。


 だからこそオーゼンの頼みの他に、ニアはメロウ達が虫使いと繋がっているのかを見極めるためにその関わりを続けることを選んだのだ。


 そしてメロウ達へ部屋の掃除を任せてから数分後、


「ただいま終了致しました。部屋が清潔に保たれていたおかげか、あまり汚れがなかったのが少し残念です。まぁ早くことが済んで私達も助かりましたが」


 埃と塵取りを持ち、2人は部屋から出てきた。


 だがメロウは、自身の仕事が思ったよりも早く終わったこと、だがあまりにも仕事というには量が少なかったことに対してわずかな愚痴を漏らしていた。


 おそらく本来であれば数十分は作業に要する予定だったのだろう。だがニアがいた為か、その行為はメロウ達ですら予想していなかったほどに迅速に終了した。


 そして自身の掃除の技術が認められたと感じたのか、何処か誇らしげに胸を張るニアを置き、2人の仕事の終了を確認したオーゼンは一歩前へと足を踏み出し、


「では約束通り!!」


「…仕方ありません。約束は約束です。メイドとして、お供しましょう」


 断るつもりだったのか、だが詰め寄ったオーゼンの屈託のない笑顔を前にメロウは折れたように小さく息を吐き、そして続けて苦笑いしながらそう言葉を返して見せる。


 対するタルナローテは初めからついていく気満々だったのか、メロウが折れたことを確認するや否やわずかにその瞳を輝かせ、そして人知れずぐっとその手を握りしめていた。

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