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遠い世界の君から  作者: 凍った雫
白き王と黒き剣士
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辿り着いた部屋の中で

「着きました。今日より、お二人にはこの部屋に住んでいただきます。好きにお寛ぎいただき構いませんが、もし何か不明瞭な点などがありましたら、是非私にお声がけください」


「はい、ありがとうございます!」


 案内された部屋はライラットの口ぶりからして人2人用の部屋なのか、だが優に3人以上は住めそうな部屋であった。


 王と謁見した部屋のような目の痛くなるほどの装飾もないレトロな雰囲気を漂わせる部屋であり、天井に吊るされたシャンデリアだけがその部屋にわずかな違和感を生じさせていた。


 そうして部屋への案内を終えたライラットは何かあれば呼んでくれとの言葉を残してその場を去り、そうして部屋に2人だけが残された時、ニアはふと一息つくと、


「…紆余曲折ありすぎじゃないか?」


 短期間に起きたあまりの色々を思い返しながら、ニアはそんなことを口にしていた。


 その口調は部屋に2人だけだからかレヴィーナではなくニアの口調へと戻っており、だがオーゼンもまたニアへと言いたいことはあった。だからこそ、


「一応言うけど、その紆余辺りをやらかしたのはニア、お前だからな。誰が開幕でいきなり王様に喧嘩ふっかけると思うんだよ」


「まぁそれは…確かに、すまなかった」


 ニアに釣られるようにこちらもまたカラリナではなくオーゼンの口調へと戻り、何よりも先にやらかしたのはニアであることを伝えてみせる。


 その言葉はぐうの音も出ないほどの事実であり、おそらく今まで今回のように王へと反旗を翻したものがいなかったからこそ、ニアの失言に対し王はあれ程までに怒っていたのだろう。


 だからこそニアは素直に謝罪の言葉を口にし、同時に遅れてやってきた紆余曲折を乗り越えたという疲労に深いため息をこぼしてみせる。


 そうしてしばらくの沈黙ののち、ニアは改めてその部屋の中へと視線を移すと、


「部屋…なんだかあまりにも実感が湧かないな。本当に俺たち王家に迎え入れられたのか?」


「同感。でも王謁は終わったし、判定的には王家に迎え入れられてるんだろうな」


 流れるままというべきか、あまりにも今までの迎え入れられた者達ならしなかった行動をしてここまできたためか、ニア達の中には未だ迎え入れられたという実感の一つも湧いてきていなかった。


 だが今自身達がいるこの部屋が迎え入れられたという何よりの証明であり、だからこそ言葉にできない違和感にオーゼンはひどくそわそわとしていた。だからこそ、


「これって自由に外とか出歩いていいのかな」


「どうだろうな。まぁどっちにしろ今日はもう厄介ごとを起こしすぎたし、出歩くとすればまた明日だな」


 興味の赴くままに出かけようとするオーゼンを静止し、ニアは近くに備えられた大きなベットに倒れ込むと静かにその思考を巡らせていく。


 それは時間がなかったがために今日という日まで思考することをやめていたいくつもの疑問。


「夢のかけら…カラクみたいな怪物を作れる存在の遺したものと言われれば願いを叶えられるというその力も信じられるが、何故そんなものがここに…?それに、『白き王』の呪い…何故カラクリアの人たちにだけ記憶がある…?もしそれが呪いとして、記憶する者を限定的にする理由はなんだ…?それと、やっぱりここでも先生の話は聞こえて来なかった。本当にここにいるのか…?地図に記されてるのは間違い無くここ、ならなんで誰も先生の話を…」


 長考するその思考は考えれば考えるほど果てのない疑問としてその脳内を埋め尽くしていき、だがその疑問は更なる深みへと落ちることなくその場にて霧散する。


 何故ならその視界の端には先ほどからぴょんぴょんと跳ねる影がちらついていたからだ。そして、


「何してるんだ?」


「このベットふかふかなんだ!俺たちが泊まった宿のベットもは柔らかかったが、これは段違いだな!」


 オーゼンは落ち着きなくベットの上で跳ねながらそう答え、見慣れないものが多いからか視線を一箇所に止めることなくあちらこちらへと移していた。


 だがニアは前日大して寝ていなかったことも相まってか、柔らかいベットに吸い込まれるようにその意識は段々と朦朧としていき、そして、


『—い、彼を…彼だけはここにいては———』


 瞬間、ニアは目を覚ました。

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